■重力子そのものではないものの注目される発見

名前に “重力子” がつくために勘違いされるかもしれませんが、カイラル重力子モードは重力子そのものではありません。あくまでも、物質の中に現れた部分的に重力子と一致するような振る舞いをする粒子の集団を指す言葉であり、重力子そのものが発見されたわけではありませんし、重力子の実在性にも影響を与えません。

ただし、カイラル重力子モードはスピンが2であるなど、一部の性質が重力子と共通しています。このため、あくまで部分的にではあるものの、重力子に関する研究において、カイラル重力子モードを重力子の代わりとして実験室で扱える可能性があります。本物の重力子ではない以上、本当に重力子の代わりとして実験に使えるかどうかは分かりませんが、カイラル重力子モードには相対性理論と量子力学の橋渡し役を担う可能性もあるでしょう。

 

Source

Jiehui Liang, et al. “Evidence for chiral graviton modes in fractional quantum Hall liquids”. (Nature)
Ellen Neff. “Researchers Find First Experimental Evidence for a Graviton-like Particle in a Quantum Material”. (Columbia Quantum Initiative)

文/彩恵りり 編集/sorae編集部