パーパス経営の成功事例5選

ここからはパーパス経営の成功事例を5つご紹介します。

ソニーグループ

ソニーグループは、2019年に「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」というパーパスを掲げました。このパーパスは、「ソニーグループが何のために存在するのか」を明確にし、約11万人のグループ社員が同じベクトルで価値創出に取り組むために定められました。

同社はパーパス浸透のため、各事業のマネジメント層に、自分の事業戦略を語るときは必ずパーパスと関連付けて話すことと、各事業で決めるビジョンもパーパスに基づいて作るようにお願いし、浸透を図りました。また、社内のWEBサイトで「My Purpose」という特集を掲載し、パーパスををあなた自身に置き換えるとどうなるのか、日々の業務の中でどう実践しているのか、を様々なグループ社員にインタビューした記事を掲載することで、パーパスを自分ごと化しやすくする取り組みも行っています。

参照:Sony’s Purpose & Values
参照:ソニーグループのPurpose経営

味の素グループ

味の素グループは2023年、「志」(パーパス)を従来の「アミノ酸のはたらきで食と健康の課題解決」から、「アミノサイエンスで、人・社会・地球のWell-beingに貢献する」に進化させました。パーパス実現に向けた具体的なアウトカムとして、2030年までに「環境負荷の50%削減」「10億人の健康寿命を延伸」という目標も掲げています。

また、事業を通じて社会価値と経済価値を共創する取り組みを「Ajinomoto Group Creating Shared Value(ASV)」称し、パーパスを実現するための基本的な考え方として従業員に浸透しています。同社が運営するWebマガジン「ストーリー」でも、従業員が日々の業務のなかで取り組むASVについて語るインタビュー企画「私が語るASV」を掲載しています。

毎年実施する「エンゲージメントサーベイ」で、「ASVの自分ごと化」やASVの成果創出に向けた進度を可視化し、結果から抽出した課題を翌年の計画へ反映させています。

参照:味の素株式会社「トップメッセージ」
参照:ASVとは?味の素グループが推進する未来への取り組み

東京海上ホールディングス

東京海上ホールディングスはパーパスを「お客様や地域社会の“いざ”をお守りする」と定めています。これは1879年の創業以来変わることのないパーパスです。

同社が2021年度からスタートしている中期経営計画では、パーパスの実現のための具体的な取り組みについて記載されています。

  • DX(デジタル・トランスフォーメーション)による価値創造
  • 多様性と働きがいの向上
  • 挑戦を支える企業風土や企業文化への変革

例えば「多様性と働きがいの向上」では、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の推進によるイノベーション創出を目指し、多様な社員が適材適所で個性や専門性を発揮できるような取り組みをしています。具体的な取り組みの例として、ジェンダーギャップの解消のため、2030年度までに女性管理職比率30%を目指しています。

また、パーパスの浸透については、「エンゲージメントサーベイ」や「カルチャー&バリューサーベイ」によって浸透度を測っています。

参照:東京海上グループの価値創造アプローチ
参照:東京海上ホールディングスに学ぶ、パーパス経営を実現させるD&I推進の取り組みと戦略

花王株式会社

花王株式会社のパーパスは「豊かな共生世界の実現」です。このパーパスは、2010年から毎年実施している「花王国際こども環境絵画コンテスト」で耳を傾けてきた、約10万人を超える子どもたちの未来への想いに応えたいという決意が込められています。

同社の各ブランドは、パーパスに関連したブランド・パーパスを掲げて活動しています。例えば、住居用のクリーナー「マジックリン」では、「生活空間の衛生不安を取り除き、誰もが、おうちで安心して、大切な人と過ごせる社会にする。」というブランド・パーパスを掲げ、家事をラクに済ませたい⽅はもちろん、⾼齢者や⾝体的な不具合を抱えた⽅にもやさしく使える商品の開発に取り組んでいます。

参照:花王のパーパスと価値創造
参照:パーパスドリブンなブランドの活動事例

富士通グループ

富士通グループのパーパスは、「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていくこと」です。

同社は、パーパスを自分ごととして捉えることを重要視し、パーパス・カーヴィング (Purpose Carving) という取り組みを行っています。これは、社員一人ひとりが歩んできた道のりや大切にしている価値観を振り返り、未来に向けて想いを馳せながら、個人のパーパスを彫り出していくプログラムです。この取り組みは、日本の人事部「HRアワード2022」企業人事部門優秀賞も受賞しています。

参照:Fujitsu Wayについて
参照:富士通の「Purpose Carving」が、日本の人事部「HRアワード2022」企業人事部門優秀賞を受賞

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パーパス経営を成功させるポイント

パーパス経営を成功させるためには、以下のポイントが重要です。

わかりやすい言葉でパーパスを策定する

パーパスは理解しやすく、共感を呼ぶ言葉で表現することが重要です。抽象的な言葉やビジョンだけでなく、具体的なアクションや目標を示すことで、社員が共感しやすくなります。

例えば、あるお店のパーパスが「人々に幸せな食事を提供する」だとしましょう。これはわかりやすい言葉で表現されています。誰でも「幸せな食事」は何かを理解できますし、お店のスタッフもこの目標に向かって行動しやすくなります。

自社ならではのパーパスを策定する

パーパスは企業の特性や業界に合わせてカスタマイズされるべきです。自社の強みや競争力を考慮して、独自のパーパスを策定しましょう。

企業や組織は、それぞれ異なる歴史や強みを持っています。このポイントは、その独自性を活かして、他のどんな企業とも違う特別なパーパスを見つけることを強調しています。

実現可能なパーパスを策定する

理想的なパーパスを設定することも重要ですが、実現可能な目標を持つことが成功の鍵です。現実的な目標を設定し、段階的に実現していく計画を立てましょう。

パーパスは組織の方向性や目標を示すものであり、大きな夢や理想を追求するものでもあります。しかし、その夢や理想が現実的でない場合、達成が難しくなります。

経営層と社員がコミュニケーションを取る

パーパスを組織全体に浸透させるためには、経営層と社員が積極的にコミュニケーションを取る必要があります。パーパスの意義や目標を共有し、社員のフィードバックを受け入れることが重要です。

経営層と社員がコミュニケーションを取ることによって、経営層が自分たちの考えや目標を社員に伝え、社員がそれを理解し、共感することができます。これにより、組織全体がパーパスに向かって一致団結しやすくなります。