『ノーサイド・ゲーム』池井戸潤氏インタビュー「劣勢にあるときこそ、真の力が試される」

ワールドカップ2019は、最後のチャンスかもしれない

 とにもかくにも、作品は世に出た。大泉洋さんが君嶋隼人に扮したドラマ版『ノーサイド・ゲーム』も放映が始まり、妻役に松たか子さん、君嶋の敵となる上司役に上川隆也さんという豪華なキャストの熱演が評判に。また人気ミュージシャン・米津玄師さんが手がけた主題歌『馬と鹿』が初回にサプライズ発表され、話題を呼んだ。

 「僕が楽しみなのは、やはり試合のシーン。そこばかりは小説では描ききれないところですから。元日本代表の廣瀬俊朗さんも参加するラガーマンのキャストも、はじめて聞いたときは相当に驚きました」と池井戸氏。監督を務めるのは、『半沢直樹』『ルーズヴェルト・ゲーム』『下町ロケット』『陸王』を手がけたTBSドラマ制作部の名将・福澤克雄氏。数々の池井戸作品に熱い血を行き渡らせた手腕、そして自身、学生時代に名ラガーマンとして活躍した監督による迫真の試合映像には否が応でも期待が高まる。

 「実は福澤さんと僕は、同じ大学に同年代に在籍していました。ドラマ『半沢直樹』で出会った後に知ったんですが、当時、彼の試合を見ていたんです。体の大きなロック(ラグビーのポジション名)だった。まさか数十年後にこういうことになるとは(笑)」

 ワールドカップに先がけ、ラグビー界にとってもますます暑く、熱くなりそうな令和元年の夏。『ノーサイド・ゲーム』は、その火蓋を切る作品となるだろう。最後に日本ラグビー界への期待を尋ねると、君嶋ばりに辛辣な、しかし愛情の熱がこもった回答が返ってきた。

 「ワールドカップで1勝か2勝すれば、何とかなるかもしれない。逆に、ここで勝てなかったら本当に子どもたちはやりたがらなくなりますよ。だから、最後のチャンスだと思って、底力の頑張りを見せてほしいですね

未来につながる、パスがある。

大手自動車メーカー・トキワ自動車のエリート社員だった君嶋隼人は、とある大型買収案件に異を唱えた結果、横浜工場の総務部長に左遷させられ、同社ラグビー部アストロズのゼネラルマネージャーを兼務することに。

かつて強豪として鳴らしたアストロズも、いまは成績不振に喘ぎ、鳴かず飛ばず。巨額の赤字を垂れ流していた。

アストロズを再生せよ――――。

ラグビーに関して何の知識も経験もない、ズブの素人である君嶋が、お荷物社会人ラグビーチームの再建に挑む。

『ノーサイド・ゲーム』

池井戸潤

ダイヤモンド社 刊

定 価:本体1600円+税 

発売日:2019年6月13日