「選挙中、候補者の事務所に電話をすると当落がわかるポイントがある」自称“選挙ジャンキーライター”が語る選挙のおもしろがり方【映画『NO選挙,NO LIFE』が話題に】

選挙取材の続行は宝くじにかかっている?


前田 そういえば宝くじを買ったと話されていましたよね。選挙取材をつづけるかどうかを占うんだって。

畠山 宮崎県知事選挙のあった、2022年の年末ですね。宮崎でいちばん当たりが出るという所に並んで。手持ちの3万円をぜんぶ突っ込むか、ギリギリまで迷って、買ったのはバラの6千円でした(笑)。




映画『NO選挙,NO LIFE』(未公開パート)より


前田 映画の宣伝ポスターに「コスパ、タイパ無視」とコピーを付けたんですが、畠山さん自身、その自覚はありますか?

畠山 コスパはそうですね。ただ、「タイパ」の意味がわからなくて。調べて、その通りだと思いました。子供にも聞いたんです。「君たちは、タイパという言葉を使うか?」と聞いたら使うというから、「へえー、タイパを考えてやっているの?」と言ったら、「そらあ、そうでしょう。考えない人は、いないよ」って。

前田 話は変わりますが、畠山さんのことを、いい育ちだったんだろうねぇという人は多いですよね。

畠山 えっ、そうですか?

前田 多いです。

畠山 そうだとすると母親の影響が大きいかもしれませんねぇ。母親がクリスチャンで、僕は幼児洗礼を受けているんです。ただ、中学校のときに大喧嘩して「ぜったいクリスチャンとは名乗らないぞ」と宣言して、教会には行かなくなったんですけど。

母には、『黙殺』で開高健ノンフィクション賞をもらったときにも「あなたの賞じゃない。みなさんが取らせてくれた賞なんだよ」と言われました。妻からも同じようなことを言われています。「なんなら、私が書いたようなものなんだから」とまで言われちゃった。冗談でですけど(笑)。まあ、妻が書かせてくれたようなものなのは確かなので。

前田 なるほど。

畠山 選挙取材は本当に勉強になります。ある候補の方と出会って初めて「ノブレス・オブリージュ」という言葉を知ったんです。何だろうと調べると、開高健も同じことを言っていて。

社会的地位の高いものは、それに応じて果たさなければいけない責任と義務があるという意味らしいです。欧米社会に浸透している道徳観で、「かっこいいなぁ。いつかは自分も」と思いました。でも、自分は一向に金持ちにならない(笑)。

前田 なりそうには思えないですね。

畠山 それでも、頑張っている人のクラウドファウンディングを見て、お金を入れたりもしているんですよね。家族もそれをやめろとは言わないし、妻も「〇〇に寄付していいですか」と聞いてくる人なので、そこはよかったと思っています。神様がいるなら、そろそろ宝くじを当ててくれてもよさそうじゃないですか。だけど、なんで当たらないんだろうとは思いますよねえ。

構成/朝山実


『NO選挙,NO LIFE』(前田亜紀監督)は、東京・ポレポレ東中野ほか全国ロードショー公開中





#1 「取材をすればするほど赤字になる」泡沫候補者を取材しつづけ25年。自称“選挙ジャンキーライター”が廃業宣言⁉ <映画『NO選挙,NO LIFE』秘話>


(広告の後にも続きます)

コロナ時代の選挙漫遊記

畠山 理仁


2021年10月5日発売

1,760円(税込)

四六判/304ページ

ISBN: 978-4-08-788067-0

選挙取材歴20年以上! 『黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い』で第15回開高健ノンフィクション賞を受賞した著者による”楽しくてタメになる”選挙エッセイ。

2020年3月の熊本県知事選挙から2021年8月の横浜市長選挙まで、新型コロナウイルス禍に行われた全国15の選挙を、著者ならではの信念と視点をもって丹念に取材した現地ルポ。「NHKが出口調査をしない」「エア・ハイタッチ」「幻の選挙カー」など、コロナ禍だから生まれた選挙ワードから、「選挙モンスター河村たかし」「スーパークレイジー君」「ふたりの田中けん」など、多彩すぎる候補者たちも多数登場!

<掲載される選挙一覧>
熊本県知事選挙/衆議院静岡4区補欠選挙/東京都知事選挙/鹿児島県知事選挙/富山県知事選挙/大阪市住民投票/古河市長選挙/戸田市議会議員選挙/千葉県知事選挙/名古屋市長選挙/参議院広島県選出議員再選挙/静岡県知事選挙/東京都議会議員選挙/兵庫県知事選挙/横浜市長選挙