「22年間、全否定されていた…」義母とマザコン夫から逃れるための「間違いない方法」

娘の部屋で

家を出た成美が向かったのは、里香のマンションだった。

大きな荷物を持った成美を里香は笑顔で迎えてくれる。

「ごめんね、しばらくの間、お世話になります」

「いいよ。お母さん、むしろよくやったよ」

荷物を置いて、小さなソファに腰を下ろす。

「なるべく早くに出て行けるように頑張るからね」

「全然気にしないで。そのデザイン事務所ってここからも通えるんでしょ?」

「そうね。でもいつまでも厄介になるわけにはいかないから」

その夜は里香とささやかな乾杯だけをして、早くに就寝をした。とても疲れていたからか、久しぶりに熟睡をすることができた。

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就職祝い

それから間もなく成美は無事にデザイン事務所に採用された。

最初はアルバイトだが、働き次第によっては正社員として登用してくれるとのことだった。ずいぶん昔に諦めていた人生がようやく始まると思うと、期待に胸が躍った。

成美の就職を里香がお祝いをしてくれるというので、2人で歩きながら店まで向かった。

「ほんとに一人暮らしするの? 一緒に住めばいいじゃん」

「ちょっとね、お母さんも久々の独身を楽しみたいのよ」

「ふーん。でもお金は?」

「慰謝料をたんまりもらうから。それにこれからはちゃんと働くしね」

「いつぐらいに正式に離婚できるの?」

「うん、ちゃんと弁護士の先生から話を聞いてるから。でもまだ離婚したくないってグズってるみたいだけど」

「みっともない……」

里香は嫌悪感たっぷりの言い方に、思わず成美は笑ってしまう。

「パパとおばあちゃんってさ、これからどうなるんだろうね」

「さあね。興味ないわ」

目の前に交差点が近づいていた。右が左か、真っすぐか。

どこに行くのも成美は自由だった。

※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。