世界的なウイスキーブームをけん引する、スコッチのシングルモルト。スモーキーな銘柄が多いアイラ島や、華やかな香味の名酒が揃う”スペイサイド”(ハイランド北東部のスペイ川流域)など、魅力的な6大産地のなかから、今回紹介するのは”アイランズ”の至宝「タリスカー」です。


↑1830年、日本では幕末を迎えた時代に誕生した「タリスカー」。定番がこの「タリスカー10年」で、参考小売価格は5850円(税別)

 

この記事では、同ブランドの限定商品発売に伴うテイスティングセミナーの様子とともに、ブランドの特徴や味わいなどをレポートしていきます。

 

アイランズのスカイ島が生んだ“酒の王者”「タリスカー」

スコッチ6大産地のひとつであるアイランズ(Islands)は、アイラ(Islay)島を除くスコットランドの北岸から西岸にかけて点在する6つの島々の総称。各島で環境が異なるため酒質の個性も様々で、アイランズモルトの全体的な特徴を語るのは難しいのですが、この多彩さこそがアイランズらしさだといえるでしょう。

 

そのなかでもミストアイランド(霧の島)と呼ばれ、荒天時には風も海も激しさを増す海洋性気候の島がスカイ島。このスカイはSky(空)ではなくSkyeと書き、ゲール語で「翼の(形をした)島」、あるいはヴァイキングが使っていた古ノルド語の「雲の島」が由来という説もあります。


↑絶えず海からの潮風に吹かれ続けるスカイ島。実にファンタジックでかっこいい名前ですよね

 

そんな同島において最も歴史が長いウイスキーの聖地が、タリスカー蒸溜所。ロッホ・ハーポートと呼ばれる入り江にあり、「TALISKER」と書かれた白亜の壁面と紺碧の屋根のコントラストが特徴です。


↑タリスカー蒸溜所。なお「Talisker(タリスカー)」とは、古ノルド語で「傾いた大岩」を意味する「Thalas Gair」が由来だといわれています

 

荒々しい海と共存し、雄大な自然と対話し続けてきた「タリスカー」のコンセプトは「MADE BY THE SEA」。表現されるテイストも海を感じさせる世界観で、ほんのりただよう潮の香り、ふくよかな甘みと力強いスモーキーさ、そして黒胡椒を思わせるスパイシーな余韻が特徴と評されます。


↑蒸溜所では形状の異なるポットスチルを計5基使用。ラインパイプの形や蒸気の冷却法などに独自の機構が採用されているのも特徴です

 

こうした味わいの魅力は、『宝島』や『ジキル博士とハイド氏』で知られる英国の文豪・スティーブンソンが”KING OF DRINKS(酒の王者)“と称賛したほど。筆者もあらためて、定番の10年からテイスティングさせてもらいました。

 

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味わえばわかる、独自の個性と説得力のあるおいしさ

香りは、甘くエレガントなタッチのあとにビターオレンジのような柑橘感、そしてたくましい燻香と潮風のようにブルージーなニュアンスが印象的。口に含むとモルトの力強い味わいとスモーキーな風味が押し寄せ、かすかにスパイシーなフレーバーも。ワイルドな個性がはっきりしていながらもマニアックにはならない、説得力のあるおいしさです。


↑アルコール度数は45.8%と比較的高め。少量の水を加えると、フルーティーな香味が開いていっそう優雅に

 

この独特なエレガンスをより感じるなら、仕上げに粗挽きの黒胡椒をあしらうスパイシーハイボールがオススメ。ピリッとしたキャラクターがくっきりと立ち、甘香ばしい個性を存分に楽しめます。


↑スパイシーハイボールも美味。ペアリングは海の幸なら燻製のカキやサーモン、肉料理なら炭焼きのラムやビーフなどを塩味でいただくとバッチリ合うと思います

 

今回のセミナーの主役は、2023年8月23日から数量限定で発売されている「タリスカー 11年」。こちらは、ただの11年ものというわけではありません。極少量の希少な原酒を採用し、さらにカスクストレングス(加水をせず、樽出しそのままのアルコール度数)でボトリングされているため、アルコール度数55.1%と力強い厚みに仕上がっています。


↑「タリスカー 11年」。1万5000円(税別)で、ボトルにはかつて蒸溜所近くの海が激しく荒れたとき、深海から現れ魅惑的な光で暗闇を照らしたとされる伝説の巨大クラゲが描かれています。じつは、伝説をテーマとした企画は今回が第2弾で、2022年の第1弾では海の聖獣・リヴァイアサンをモチーフにした「タリスカー 8年」が発売されました

 

また、ファーストフィル(初のスコッチ熟成に使う。セカンドフィルやサードフィルよりも樽の影響が強い)のアメリカンオーク樽を主に熟成させた、ボリューミーな香りも特徴となっています。こちらも味わってみました。

 

「タリスカー 11年」はカスクストレングスらしいボディの重厚感があり、それでいてトゲはなくスムース。ドライアップルのような上品な甘みと、心地よいスモーキーフレーバーが調和し、潮や黒胡椒のタッチも感じます。モルティでリッチなニュアンスも長く続き、実に贅沢な気分に。海が見えるロケーションで飲んだら最高ではないでしょうか。