■表現解説

 “Those who”は、「~する人びと」という意味だ。”Those”は「それらの人びと」という意味であり、続く関係代名詞”who”が、「それらの人びと」の説明となって、「~する人びと」という意味になる。このセリフでは、”those who”以下が”live(生きる)”や”die(死ぬ)”の主語となっている。

 ”Cling to”は、文字通りには「くっつく」という意味だが、「~にしがみつく」「~にすがりつく」「~に固執する」「~にこだわる」という意味になる。

 物理的な接触だけでなく、感情的、精神的な依存やこだわりを表すことが可能だ。例えば「会社は伝統的な価値観にこだわった」という場合、”The company clung to its traditional values”となる。

 ”Those who”は書き言葉でよく使われる表現であり、口語で使用してもよいが、よりフォーマルな印象を与える。今回のセリフでも、話し言葉だが格言のような重みが生まれる。

 上杉謙信の名言、「死なんと戦えば生き、生きんと戦えば必ず死するものなり」は、「運は天にあり」で始まる言葉の一部だ。永禄9年(1566年)、謙信37歳のとき春日山城内の壁に書いたと伝えられており、大正6年(1917年)刊行の布施秀治著『上杉謙信伝』でも紹介されている。ちなみに春秋戦国時代の兵法書『呉子』に同じような言葉がある。

 スタエルスキ監督やキアヌ・リーブスは、千葉真一、三船敏郎、黒澤明といった日本のアクション映画の影響を強く受けている。上杉謙信の名言を知る機会もあったことだろう。英語では新約聖書、『マタイによる福音書』にも似た表現が存在するが、意味の上では上杉謙信の言葉が最も近いのではないだろうか。

 いずれにせよ、スタエルスキ監督が「意図的に曖昧で、解釈の余地があるようにした」と語っている結末も考えると、意味深なセリフであることにかわりはない。