【助成金の解説】業務改善助成金/岡 佳伸

最低賃金の引き上げに対応、設備投資等を行って効率化

 業務改善助成金とは、中小企業・小規模事業者が生産性向上に資する設備投資等を行うとともに、事業場内で最も低い賃金(事業場内最低賃金)を一定額以上引き上げた場合、その設備投資などにかかった費用の一部を助成する制度です。

 助成の対象となる事業者は、以下の要件を満たす必要があります。

・中小企業・小規模事業者であること

・事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が30円以内であること

・解雇、賃金引き下げなどの不交付事由がないこと

 助成の対象となる経費は、「生産性向上・労働能率の増進に資する設備投資等」です。具体的には、機械設備、コンサルティング導入や人材育成・教育訓練などが挙げられます。

 助成される金額は、生産性向上に資する設備投資等にかかった費用に一定の助成率をかけた金額と助成上限額とを比較し、いずれか安い方の金額となります。助成率や助成上限額は、申請を行う事業場の引き上げ前の事業場内最低賃金や引き上げる最低賃金額及び引き上げる労働者の人数によって異なります。

 また、特例的な拡充が受けられる事業者もあります。例えば、新型コロナウイルス感染症の影響や原材料費の高騰などで利益が減少した事業者は、助成上限額や助成率が高くなったり、関連する経費も助成対象となったりします。今年度の申請期限は令和6年1月31日、事業完了期限は原則令和6年2月28日になります。

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受給のポイント

① 幅広い経費が対象になりますが、代理人(提出代行者、事務代理者を含む)に支払う経費は対象になりません。

② 特例事業者に該当すると生産性向上に資する設備投資等のうち、

・定員7人以上または車両本体価格200万円以下の乗用自動車や貨物自動車

・PC、スマホ、タブレット等の端末と周辺機器の新規導入が対象になります。

③ 特例事業者に該当すると関連する経費として、広告宣伝費(チラシの制作費)、改築費(事務室等の拡大)、汎用事務機器(複合機等)や什器備品(机・椅子等)の購入なども経費対象になります。ただし、生産性向上に資する経費を上回らない額までが対象です。

④ 助成経費の対象が増える特例事業者に該当するためには生産量要件(売上高や生産量などの事業活動を示す指標の直近3カ月間の月平均値が前年前々年または3年前の同じ月に比べて15%以上減少している事業者)または物価高騰要件(原材料費の高騰など社会的・経済的環境の変化等の外的要因により、申請前3カ月間のうち任意の1カ月の利益率が前年同月に比べ3%ポイント以上低下している事業者)を満たす必要があります。

⑤ 交付申請提出後に賃金を引き上げた場合が対象になります。また、最低賃金の引上げ前に最低賃金の引上げを見越して賃金の上昇を計画しても問題がありません。しかし、その場合は最低賃金の引上げ時までに事業内賃金引上げ対象労働者実際に引き上げられた賃金で働いている必要があります。例えば、時給や日給制の人で9月30日に引上げを予定しているのに9月30日に働いていない人を対象にすることは出来ません。

⑥ 交付申請書提出後に事業内最低賃金の引き上げが出来ますが、設備投資等の経費支出は交付決定後になります。

⑦ 前年度に業務改善助成金を活用した事業主も対象になります。

⑧ キャリアアップ助成金賃金賃金規程改定コースとは併給調整がかかります。同じ人を対象労働者に選定することは出来ません。