NFTを活用したメタバースといえば、香港のブロックチェーン企業Animoca Brands(アニモカブランズ)傘下の「The Sandbox」やVRプラットフォーム「Decentraland(ディセントラランド)」が有名だが、リアルな土地と連動するユニークなメタバース「Upland」も注目されている。3Dではなく、2Dのメタバースというのが特徴だ。

地図上にある土地を売買したり自分の土地に建物を建てたりするほか、NFTの売買もでき、取引は活況を呈している。

■ 実在の土地とひもづいた「バーチャルな土地」を売買

Uplandは、2020年1月に公開されたメタバース系のNFTゲーム。パソコンのブラウザのほか、スマホアプリでも楽しむことができる。米国のシリコンバレーに拠点を置くUplandMe社が運営している。

Uplandでは、現実の世界と同じ地図が使われ、実在する土地とひもづいた「バーチャルな土地」が売買できる。購入した土地には、家などを建てることもできる。

22年10月時点で販売されている土地は、米ニューヨークやサンフランシスコなどの複数の都市と、ブラジルやポルトガルの都市。月に1カ所のペースで拡大している。

1つの土地は1000円以下で購入可能で、手軽に入手しやすい価格設定になっている。ドルなどの法定通貨のほか、Upland独自の暗号資産「UPX」でも購入できる。

土地を持っていると、その量や大きさに応じてUPXをもらうこともできる。実際に現地に住む人から「土地を譲ってほしい」という連絡が来るのも、Uplandならではの楽しみかもしれない。

メタバースの土地暴落の中でも、安定

米メディア「The Information」が8月上旬に投稿したツイートが示すように、ほとんどのメタバースの土地はピーク時よりも価格が大きく下落している。土地の有効な使いみちがなかったり、ユーザーが少なかったりすることが原因だと考えられる。

一方で、Upland内の取引量はこの半年間、ときどき大きく上下はするものの、おおむね安定しているといえる状態にある。

自分の知識を生かして稼ぐ

Uplandでは、さまざまな方法や知識を使って収益を得ている人がいる。現実で培った知識をメタバース内で生かせるのも、リアルに結びついたUplandこその楽しみ方だ。

その方法をいくつか紹介する。

1. Upland内の宝探し

Uplandには「トレジャーハント」という、メタバース内を移動し宝を探すミニゲームコンテンツがある。それを利用して収益を得るのは、ゲームが得意な人におすすめの手段だ。

2. 値上がりしそうな土地の転売

2つ目は土地の転売。値上がりする土地は初期の販売で売り切れることが多く、毎回多数の参加者がいる。

有名な土地や、映画などのロケ地、著名な建物などがある土地の価格は上がりやすい。旅行好きなど観光地や実際の場所に詳しい人は、楽しみながら価格が上昇しやすい土地を判断できるだろう。


Bronxにある映画【JOKER】のロケ地

3. 土地のセールに参加

土地のセールはUpland内の一大イベント。セールの仕組み上、すべての人に購入のチャンスがある。

7月下旬に実施されたリオデジャネイロの販売では、土地が完売。その後の価格も上がっている。セールに参加した人の中には、購入価格の5〜6倍で値段で土地が売れた人もいるようだ。

4. Sparkを貸す

UplandにはUPXとは別に、建物や自動車などのゲーム内にある無機物を作成する「Spark」というトークンがある。

このSparkを他の人に貸しても、収益を得ることができる。Sparkはトレジャーハントやセールでも集めることができる。他ユーザーに貸すだけなので所有する資産がなくなるわけではなく、継続して収益を得続けられるのもうれしいところだ。


1人だと130日かかる建物も複数人が協力すれば短期間で建てることが可能

5. ツールやサイトを開発

Uplandでは、ゲーム外でも稼ぐことが可能だ。外部のツールを作成すれば、そこで収益を得ることができる。

土地を大きさ順にしぼり込めるツールやNFTがいくら作成されたか判断するもの、トレジャーハントの補助用など、さまざまな外部ツールがプレーヤーの手で開発されている。

実際に遊んでいるのはどんな人?

著者は1年ほど前にUplandを始めた。ゲーム自体には合計で2000ドル(約26万5000円)ほど課金している。

セールでの転売やSparkの貸し出し、土地の収入によって稼ぎ、今は9000ドル(約120万円)前後まで増えている。持っている土地の数は170を超えるので、放置していても月に140ドル(約2万円)分のトークンはもらえるが、すべてを再投資に回している。

ほかには、こんなユーザーたちがいる。

  • 土地転売+トレジャーハントで原資を回収し、7000ドル(約93万円)ほど増やしている人
  • トレジャーハントで稼いだSparkを貸して、月に340ドル分(約5万円)のUPXを得ている人

今のところ、UPXをドルに換金している人はほとんどおらず、再投資にまわして長期間プレーしているユーザーが多いという印象だ。それだけプロジェクトに期待している人が多いのだろう。

■ 日本の土地はまだ販売されていない

Uplandでは日本の土地は、残念ながらまだ販売されていない。だが、日本人のプレーヤーもいる。日本のメンバーでグループを組んで、特定の街の土地を集中的に買い、海外に「日本人街」を作るという動きもある。

シカゴの土地の一部を買い集めて建物を建てているあるグループは、その建物の多さから海外ユーザーからも注目されている。

7月のブラジル・リオデジャネイロの土地の新たな販売では、完売までの早さから、ブラジルのユーザー人口の増加がうかがえた。従来はアメリカユーザーの多さが目立ったが、リオデジャネイロのようにアメリカ以外の国の土地が販売されるタイミングで、その国のユーザーが増えることは想像に難くない。

もし日本の土地の販売が実現されたら、日本人ユーザーからのUplandへの注目も大きくなり、ユーザー数も増えるだろう。今のうちから楽しみつつゲームの仕組みにも慣れておき、日本の土地販売の際の有利なスタートダッシュへ備えておくのもいいかもしれない。

■ Uplandで学び、直接稼ぎに生かす楽しさ

一般的に、ゲームで学んだことを現実の生活に直接生かすことは難しい。しかし、Uplandで学んだことはリアルでも役立つことが多い。

著者はUplandを通して、アメリカやブラジルの土地の場所と特産品、有名な建物や米プロフットボールNFLの選手などについての知識を得た。学んだことが直接稼ぎにつながる点が、学習意欲を高めていると感じている。

Uplandの遊び方

Uplandの基本的な遊び方は、土地を購入してそれを販売し、所持金を増やしていくというものだ。Upland内での移動方法や土地の購入方法などの基本的な内容を解説する。

・アプリでアカウント作成

Upland はパソコンだけでなくスマートフォンでも遊ぶことができる。アプリをダウンロードしてメールアドレスと名前を登録し、アカウントを作成する。

Upland公式サイト

最初に、移動する都市を選択。初めての場合は、表示されている一番上の都市を選択が無難だ。最初にもらえるトークンで、土地を購入できる。オススメの土地がでてくるので、そのまま購入でもよい。

・移動方法

Upland内の自分のアバターは、都市内をランダムに動く。そのため欲しい土地に移動するには、そこへアバターを「send」 しなければいけない。

移動には紙飛行機1つと、send に必要なUPXがかかる。紙飛行機は、浮いている飛行機に近づきクリックすると入手することができる。一度に持てる飛行機は最大9まで 。

・土地の購入方法

土地は色ごとに状態が違う。まずは初心者のみが購入可能な土地である、灰色にマークされた「FSA」を選ぶのがおすすめだ。

基本的にはその土地の近くに移動しなければならないが、プレーヤーから買える緑色の土地の購入と購入オファーは、どこからでも可能。

欲しい土地を選び、「buy」 で購入する。


販売されている土地

土地を売る場合は、所有合計UPXが1万を超えていることが必要。またFSAを販売できるのは週に2つまでの制限がある。

・土地の確認方法

土地にはそれぞれレアリティと大きさ、収入が設定されている。土地ごとにかなりの差があるので、確認を忘れないようにしよう。

特別なマーク付きの土地もあり、右側のボタンを押すと表示される。マーク付きの土地は高値で売買されることが多い。

・安い土地を探す

安い土地を探す場合は、公式ツールの利用がおすすめ。公式サイトからは、都市や値段をしぼった検索ができる。

公式サイトでは、1日にどれだけの取引がされたかが公開されている。日によっては約6万ドル(約800万円)相当のゲーム内暗号資産が動いているようだ。

・コレクション

土地にはランクがあり、ランクの高い土地をそろえてコレクションを達成すると、土地の収益が増加する。

・公式のセール

ある程度購入に慣れてきたら、セールでの購入にも挑戦したい。セールとは運営から直接、価値のある土地を購入できる機会のこと。他ユーザーより早く購入する必要があるが、購入できた場合、何倍も高い価格で転売できることもある。

・土地を販売して利益を上げる

UPX より値段は下がってしまうが、出金したい場合はドルで土地を販売してみよう。売れた場合は、海外の送金アプリや米ネット決済のPayPalなどから引き出せる。

・建設

建物は、Spark を使って建てる。建物は店を運営できるほか、街のランクに影響する。建物付きの土地は、土地の適正価格よりも高額で販売することもできる。

Sparkは、セールでの購入やランクアップのほか、トレジャーハントやイベントでも入手可能だ。トレジャーハントは他ユーザーとの競争モードと、1人で集めるモードがあるので、自分のペースで選んで遊ぶことができる。