我々ガジェット好きにはScanSnapやHHKBで知られるPFUは、ドキュメントスキャナー領域における世界のトップブランドである。同社はそのスキャナー領域で培った光学技術、画像処理技術を応用し、自社で開発の独自アルゴリズムを用いて廃棄物の分別を自動化する『廃棄物分別特化AIエンジン』シリーズを、2024年4月10日より提供するという。このニュースを深堀してみた。

あなたの捨てたビンゴミは、ほぼすべて手作業で分別されている

美味しかったワイン、日本酒、仕事が忙しい時に飲んだエナジードリンク。みなさんは、その後のビンゴミについて思いを馳せたことはあるだろうか?

私もそうだが、多くの方は、ビンゴミの回収に出したあとのことは考えていないのではないだろうか?

一般常識として、ビンゴミは比較的リサイクルされる。燃やすゴミのように二酸化炭素を出すワケでもないし、プラスチックゴミのように有毒な成分を出すワケでもない。『ビンゴミに出せばOK』と筆者も思っていた。

しかし、ほとんどのゴミ処理場で、ビンゴミは手作業で分別しているのだそうだ。

ペットボトルは風力で飛ばして、分別する。

スチール缶は、磁力で。

アルミ缶は、過電流選別機というので選別するのだそうだ。

しかし、ビンは、再生利用するために、透明のビン、茶色のビン、他の色のビンに分けなければならない。この作業は、ほとんどの場所で人が手作業でやっているのだそうだ。

当然、ゴミだから汚いし、割れたビンも紛れ込んでいるから危険。絵に描いたような3Kの職場だ。

さらに、感染症禍の時代においては、衛生面でのリスクも大きい。

現状、取り組んで下さってる方には頭が下がる。そして、全国的に新しくこの職に就こうという人は少ないから、圧倒的人手不足に陥っており、人手が足りないから、さらに過酷になるという悪循環。

ちなみに、ビールビンのゴミは基本的にビール会社に戻っていく。そんなワケで、流れるビンはワインのボトルが想像以上に多かった。日本酒もある。また、栄養ドリンクも非常に目についた。それらのゴミは、こうやって手作業で分別されているのである。

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困難だった、ビンゴミの判別をPFUが画像処理技術で解決

持てる技術力を使って、この課題に取り組もうと立ち上がったのが、ScanSnapや、HHKBで知られる我らがPFUだ。そこで、PFUで廃棄物分別特化AIエンジン『Raptor VISION BOTTLE』の開発に取り組んだ方々にオンラインでお話を聞いた。


右上から反時計回りに、RAPTOR事業開発部 部長 田畑 登さん、同・営業企画課 福永 貴之さん、同・営業企画課 課長 押木 博史さん、広報部 メディアリレーション課 小山 泰知さん。

もとより、PFUにはさまざまな新規事業に挑戦する文化がある。しかし、同時に得意分野へのフォーカスも強く、ドキュメントスキャナー分野世界トップのシェアを守り続けてもいる。

そんな中で、ドキュメントスキャナー分野で培ったAI画像処理技術を使って、ゴミ処理という社会課題を解決できるということが分かってきた。そこで、開発されたのが、この廃棄物分別特化AIエンジン『Raptor VISION BOTTLE』だ。

文字通り、『鵜の目鷹の目』で、廃棄物の分別を行うというワケだ。

ちなみに、選別だけを行い。回収は技術的に経験値の多い他社製品と組み合わせる。

機械学習(いわゆるAI。生成AIではなく、深層学習)で、ビンのデータを学習しており、認識精度は99.8%。