ひずみを防ぐために溝を切り、パープルハートを差し込んである

このパームレストの工夫はそれだけではない。

一枚板の木は、湿度によってひずむ性質がある。これは木の自然な性質だ。水分を含む量によって、木目にそってあるていどの捩れが発生する。

松葉製作所の『亀甲名栗木製パームレスト80mm』には、その捩れを防ぐために、奥と左右にスリットが入れられ、違う木材が挟まれている。

松葉製作所で販売している製品には縞黒檀が差し込まれているが、PFUダイレクトで販売される80mm幅のものには、パープルハートという木材が挟まれ、美しいアクセントになっている。

ブラックチェリーは北米産で、昔から高級家具材として使われてきた素材。

パープルハートは中南米やブラジル南部から供給される木材で、非常に美しい紫色の木材で、こちらも高級家具などに使われる。

この加工はふたつの木材を組み合わせることで、美しいアクセントになっているとともに、ひずみを防ぐ工夫にもなっているのだ。手前側には挟まれていないので、このパームレストが1枚板を削り込んで作られていることが分かるが、スリットはピッタリ噛み込むように作られており、松葉製作所の加工技術の高さを表してもいる。

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さらにひずみを抑制する削り込みと、本物の焼き印

背面は少し削り込まれて肉抜きされている。これは肉厚になるより、湿度による捩れが起こりにくいからなのだそうだ。

反りというのは、板材の中の水分量が表と裏で異なるから発生する。松葉さんによると「段差を設け導管をあらわにすることで、水分の出入りがスムーズに行われるのではないか?」とのこと。繊細なiPhoneケースを作る中で得られたノウハウだ。

削り込んだ部分には、『松葉製作所』のロゴが刻印されている。この刻印も、レーザーカットや電気ゴテではなく、火で熱した焼きゴテによるもの。ちょっとした色ムラが、風合いとなっている。