投資家の72.9%が「株主優待」を重視って本当? 果たして“優待目当て”は正しい選択基準と言えるのか

世の中には、「意識調査」と称される調査結果が、さまざまな機関から発表されています。これは、人々の意識や心理を探ることによって、その調査結果を、各種政策決定や製品・サービスの開発などに活用するのが目的です。

基本的に、政府や日銀のような公的機関が行っている意識調査は、各種政策決定を目的にして行われるものであり、民間のコンサルティング会社、リサーチ会社、マーケティング会社、シンクタンクなどが行っている意識調査は、製品・サービス開発に主眼を置いたものが多く見受けられます。

各種メディアが、こうした意識調査の結果を記事にすることもありますが、注意しなければならないのは、民間の機関によって行われている意識調査です。なぜなら、何らかの意向を持って行われているケースがあるからです。

典型的なケースを紹介

今回は、その典型的なケースを取り上げましょう。「株式の銘柄選びに関する意識調査」と名付けられたもので、その2023年版のタイトルは、「新NISA制度はまもなく!投資家の関心は?」というものです。

明らかに、2024年1月からスタートする新NISAを意識した内容であることが窺えます。加えて、その調査結果を大きなタイトル見出しに使っており、そこには「個人投資家の7割以上が『株主優待』を重視!」とあります。

以上を見る限り、新NISAがスタートするにあたって株式投資を検討している個人投資家の7割以上が、株主優待を重視して銘柄を選んでいる、という印象を受けます。

果たして、そこまで多くの個人投資家が、株主優待を重視しているのでしょうか。あるいは、それは正しい銘柄選択基準になるのでしょうか。

(広告の後にも続きます)

注意して見るべきポイントは“サンプル数”

この意識調査のサンプルを見ると、「1銘柄200万円未満の株式投資を行う個人投資家111名」となっています。明らかにサンプル数が少ないので、結果に偏りがあるかもしれないという前提で、意識調査の数字を見ていく必要があります。

この意識調査の結果を並べると、以下のようになります。

1、回答者の72.9%が「株式投資を行う際に株主優待を重視することがある」と回答。
2、株主優待を重視する理由として、①生活に使える物が多く魅力的だから(58.0%)、②長期保有へのモチベーションに繋がるから(49.4%)、③株式を保有する楽しみが増えるから(39.5%)
3、55%が「株主優待の内容を見てためらいを感じたことがある」と回答。
4、ためらいを感じた理由として、①保有株数が増えても優待内容があまり変わらないから(42.6%)、②長期保有に対するインセンティブがないから(41.0%)、③BtoB企業銘柄は生活に使える優待がないと感じたから(29.5%)
5、約7割以上が「新NISAに向けて株式投資への人々の意欲は益々高まっていく」と予想している。

出所:「新NISA制度はまもなく!投資家の関心は?」

内容を要約すると、株式投資をするにあたって、多くの人が、生活に使えるものが多い株主優待に注目しているものの、保有株数が増えたとしても優待内容があまり変わらない点に、ためらいを感じている、ということです。

仮に、この意識調査のサンプルに偏りがなく、111名の個人投資家の意見が、日本全体の個人投資家の意見の縮図になっているとしたら、株式を上場している多くの企業は、株主還元策の1つである株主優待が持つ効果を真剣に考え、かつ株式の保有数に応じてインセンティブを付与するような施策も、必要になってきます。