アートに関連する各種ビジネス、課題解決のためのソリューションを提供する「株式会社SDアート」は、2023年3月に音楽や芸術など『文化』に関する書籍の企画編集・出版を行う「株式会社アルク出版企画」を譲り受けされました。M&Aのご成約から1年が経過した現在、アルク出版企画の売上は約7倍にまで増加し、右肩上がりの事業成長を遂げています。

M&A後の経営戦略や業務改善など、どのような取り組みによって事業を伸ばしてきたのか。また、事業買収にあたりどのようなM&A戦略を描いていたのか。SDアート代表取締役の堀越啓様、アルク出版企画の代表取締役社長に就任された加納亜美子様のお二人に、SDアートの描く未来についてお話を伺いました。

 

譲渡企業
社名 株式会社アルク出版企画

業種 出版企画、編集

および販売

拠点 東京都
譲渡理由 後継者不在

 



 

譲受企業
社名 株式会社SDアート

業種 アートビジネス、セミナーコンサルティング事業など
拠点 東京都
譲受理由 新規事業への参入、

既存商品・サービスの強化

 

好奇心と事業シナジーが交わった領域に、M&Aの価値を見出す

1970年代の彫刻黎明期から、彫刻の普及・啓蒙を行うパイオニアとして事業を行ってきたSDアート。全国各地の美術館での展覧会企画から、作品購入に関するアートコンサルティング、アートを取り入れた街づくり、アーティストのマネジメント・ディレクションなど、アートに関する事業全般を行っています。

堀越様:「弊社の事業軸は大きく3つあり、1つ目が創業当初から行っているアート事業です。クライアントは美術館や自治会、企業などさまざまで、事業内容は展覧会の企画、彫刻作品の選定から設置、作品の売買など、『アートの相談役』としてBtoB、BtoC双方で事業を展開しています。

2つ目が、国際輸送のサービスです。ポルシェやフェラーリといった高級車のクラシックカーやヴィンテージカーを、全世界に向けて輸送しています。こちらはもともと事業承継で譲り受けた事業で、この経験を活かして美術品やアート作品の輸出入も手がけています。

そして3つ目が、2023年にバトンズさんのプラットフォームを通じて譲り受けた、文化芸術・音楽に関する出版企画の事業になります。シナジーのある分野や事業がないかどうか、バトンズさんから定期的に送られてくるメルマガをいつも流し見しているのですが、その中で『文化に特化した企画出版』を謳っているアルク出版企画を見つけて、『うちが承継するしかない!』と運命を感じました。」

好奇心に従ってさまざまな案件を今もチェックしていると話す堀越様は、自社とシナジーのある業界を軸に、幅広く買収検討を行っていました。出版事業はSDアートにとって新規参入となる事業領域だったものの、ご自身が本好きであったことや、展覧会を行う中で出版物としてカタログ作成をした経験があったことに加えて、出版事業の中でも『文化』に特化した企画出版を行う点に事業シナジーを見出し、迷いなく交渉に臨むことができたといいます。

 

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『この会社を途絶えさせてはならない』使命感を持ってM&Aに臨んだ、その背景とは

堀越様:「自分はどちらかというと、事業を幅広く展開することが得意でして。これまでも、好奇心の延長線上でSDアートの事業を横展開してきました。今回のM&Aに関しても新規参入となる事業領域ではありましたが、アルク出版企画がこれまでに出版されてきた本のラインナップを拝見し、まさにうちの会社にぴったりじゃないかと感じました。

また、幼少の頃からたくさんの本を読んできた中で『いつかは自分が出版する側になって、人の人生の支えになるような本を作りたい』という思いがあったことも、M&Aに踏み切る大きなきっかけになったと感じています。」

アルク出版企画は、1982年の創業以来40年以上にわたり音楽や芸術といった「文化」に関する企画・編集・出版を行ってきた、文化出版におけるパイオニアといえる出版社。音楽・美術等のファインアート、哲学・心理学などのリベラルアーツ(教養)の企画・編集を通じて、専門性の高い書籍を中心に出版してきました。

加納様:「出版物には、例えば山田五郎さんの西洋美術史についての本、ヴァイオリニストの高嶋ちさこさんや、大橋巨泉さんが手掛けた本など、音楽や芸術の分野で著名な方の本も多数出版されていました。これまでの出版数は数百冊ほどにのぼり、文化に特化した出版社においてまさにパイオニアといえる会社でした。」

加納様は、アルク出版企画を子会社化するにあたり、自ら代表になりたいと堀越様に掛け合ったとのこと。その背景や、事業に感じた魅力・可能性について以下のように話しています。

加納様:「アルク出版企画を買収するという話が出た時に、私が代表になりたいですと堀越に伝えました。アルク出版企画には、長い歴史の中で丁寧に培ってきた取引企業様との人脈・関係性やブランド価値がある。自社の持つ企画力や営業力と掛け合わせれば、アプローチ次第で大きく事業を拡大できるだろうという自信がありました。」

また、後継者不足により買い手先を探しているアルク企画出版に対し、『このまま会社を無くしてはならない』という強い思いがあったと話す加納様。そこには、もともとアルク出版企画の本を愛読しており、消費者として価値を感じていたという背景がありました。

加納様:「何より、アルク出版企画が『文化出版のパイオニア』であることへの存在価値を強く感じていました。実は私自身、もともとアルク出版企画が企画・編集した本を愛読していたんです。M&Aに際して、バトンズに掲載された過去の実績の中に、自分が読んできた本がいくつも載っていまして。こんなに素晴らしい実績のある会社を、後継者不足が理由で潰しては駄目だという気持ちがありました。」