世界一の園芸会社を目指し、植物を活かした空間プロデュース関連事業、ブランド事業、生産・卸売業等を運営する「株式会社ユニバーサル園芸社」は、造園会社として50年以上の歴史がある「泰成緑栄株式会社」を譲り受けされました。過去にも国内外でM&Aを継続的に実施し、買収経験が豊富なユニバーサル園芸社は、2023年9月にバトンズを通じて今回のM&Aを実現。同社で代表取締役社長を務める安部豪様に、今回の承継に至った背景やM&Aの戦略、今後の事業展望についてお話を伺いました。

 

譲渡企業
社名 泰成緑栄株式会社
業種 造園・土木工事の設計・施工・管理など
拠点 千葉県
譲渡理由 選択と集中

 

 

譲受企業
社名 株式会社ユニバーサル園芸社
業種 レンタルグリーン事業、空間プロデュース関連業など
拠点 大阪府、東京都
譲受理由 人材の確保

 

【企業概要】

会社名:株式会社ユニバーサル園芸社

上場:スタンダード市場

設立:1974年2月(創業:1968年4月)

売上高:138億1600万円(2023年6月期時点※連結)

従業員数:1,043名(2023年6月末時点)

代表取締役社長:安部豪

HP:https://uni-green.co.jp/

 

企業が成長・拡大していく中で、重要な役割を果たしてきたM&A戦略

今年で56年目を迎えるユニバーサル園芸社は、現会長の森坂様のもと大阪府茨木市で創業されました。オフィスや商業施設、ホテルなどに、観賞用の植物を活用して空間プロデュースを行うレンタルグリーン事業を主軸に成長をしてきた同社。現在は、周辺事業である植栽工事や屋上の緑化事業、フラワーアレンジメントや緑に囲まれたカフェの運営など、総合園芸会社として幅広く事業展開を行っています。

また、事業戦略の一つに「M&Aによる事業拡大」を掲げ、企業成長に向けて積極的なM&Aを実施している同社は、泰成緑栄を引継ぎされるまでの直近1年半で、日本国内で4社、アメリカで1社を完全子会社化するなど、すでにM&Aに精通された企業であることが分かります。

グリーンレンタル事業を主軸とする上場企業は日本でも殆ど見られない中で、ユニバーサル園芸社はM&Aを活用して独自路線で事業成長・拡大を遂げてきました。

「当社がはじめてM&Aを手掛けたのは、2009年に引き継いだビバ工芸株式会社です。そのころは株式上場を目指すタイミングで、当時の上場には申請期前後で増収増益という業績基準がありました。リーマンショックによる不況も重なっていた時期で、どうにかM&Aによる増収増益基調を保てないかと、買収できる企業を探していたのです。

そのタイミングで、造花の卸売業を営むビバ工芸とご縁があり、M&Aの決断をしました。当社がその後もM&Aを事業戦略として活用し始めるきっかけとなった事例でしたね。」

現在、事業と親和性のある企業がないか日々チェックされているという安部様は、M&A仲介会社からの紹介だけでなく、バトンズを含めたM&Aプラットフォームも複数活用されていると言います。

「バトンズさんは案件数が豊富で、お昼に配信されるメルマガには、毎日30~40件の譲渡案件がリストアップされています。当社の主軸であるレンタルグリーン事業は特殊な業態であり、ピンポイントで該当する案件は多くないので、キャンプ場の施工といった少しでも隣接する事業に条件を広げてチェックしています。そのぶん目を通すのに苦労しますが、継続的な情報収集は大事ですから。」

事業者の規模が小さく、個人商店も多いレンタルグリーン事業は、情報がオープンになりにくい業界であると話す安部様は、わずかな情報も漏らさないよう、常に情報網を張り巡らせているといいます。

 

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魅力を感じる会社には、汗をかいて働く職人がいる

バトンズの譲渡案件をチェックする中で、泰成緑栄に興味を持たれた安部様。庭園樹木の生産や卸売、造園工事の設計・施工などを行う同社の事業内容にシナジーを感じ、交渉を開始されました。

「われわれの業界は手を動かし、体を使う仕事です。そのため、近年は若い人があまり入ってこず、人材の確保には常に苦労しています。仕事が取れたとしても実際に稼働できる職人が足りないという現状がある中で、泰成緑栄さんは思いっきり汗をかいて働く職人の方が多くいるところが何より魅力的だと感じました

会社によっては、社員は管理者の役割だけを担い、実際に手を動かすのは外部のひとり親方というケースもあるのがこの業界です。規模の小さい造園会社などは、そういう形で事業を回しているんですね。

ただ、私は最終的に手を動かして、汗をかいて仕事をしてくれる職人の存在がこの業界を支えていると思っています。今後、職人の存在はますます貴重になってくるため、そのニーズも増えていくのではないでしょうか。

泰成緑栄さんとM&Aの交渉を行うにあたり、社長の北田様と会ってお話をしました。社長としてだけでなく、職人としても先頭に立って動いておられる方で好印象を持ちましたので、交渉を進めることにしました。」

国内外でM&Aを多数成約されている安部様。M&Aを検討する上で重要視しているのは「事業内容」「経営を任せられる人材」そして「価格」の3つだと話します。とくに、M&A成約後のPMIを考えたとき、経営人材となりうるキーパーソンがいるかどうかは重視しているとのことでした。

「M&Aとは、答えがあるようでない難しい経営手法だと思っています。ある日突然、買い手企業の知らない誰かがやって来て、あれをしろ、これをしろと指示を出したところで、譲渡企業の社員たちが気持ちよく働いてくれるはずがありません。

やはり、譲渡企業のキーパーソンの方や、若くてやる気のある方たちが自分事として経営に携わっていくことが理想的だと考えています。その上で、当社グループの経営方針や考え方とマッチするように支援しながら、グループ会社として一体化していくことが良い形ではないでしょうか。

M&Aは、成約後に社長が引退されるケースと、そのまま継続されるケースがあります。社長が信頼できる方であれば、M&A後も継続していただきますし、もしも引退を希望される場合には、その会社に残るキーパーソンの方と、事前に面談できるように交渉しています。ただ、海外の場合は事前に会わせてくれないケースもあり、そのギャップはグローバル案件の難しい部分と感じますね。」