5年連続赤字確定の名門パンストトップ企業アツギに何が起こっているのか?

パンストの日本ナンバーワン企業のアツギ(東証プライム上場)は、1月26日に第3四半期累計(2022年4月1日〜2022年12月31日)の連結決算を発表した。主要数字は以下の通り。
・売上高:148億3700万円(前年比−4.8%)
・営業利益:−16億1200万円(前年は−12億9400万円)
・経常利益:−10億1400万円(前年は−8億4800万円)
・親会社株主に帰属する四半期純利益:−8億1200万円(前年は−9億500万円)

全く回復する兆しがない。当然のことながら通期の業績も同日に下方修正した。修正前の数字は第2四半期決算発表時のものだ。
・売上高:238億円→204億円(前年比−4.9%)
・営業利益:1億円→−21億円(前年は−22億9300万円)
・経常利益:3億円→−15億円(前年は−18億400万円)
・親会社株主に帰属する当期純利益:→2億円−14億円(−18億2700万円)

ちなみに2022年3月期、2021年3月期、2020年3月期、2019年3月期も利益部門はすべて赤字だったから、今期で5年連続赤字になる。巷間言われるように「コロナ禍による外出自粛でパンスト需要が減った」だけではないのだ!要するに、アツギは、今回のコロナ禍以前にすでに構造的な問題を抱えていたということになる。

同社は2022年1月20日、青森県むつ市にある500人規模の国内最大のパンスト工場及び岩手県盛岡市の80人規模の工場の閉鎖を発表した。中国の山東省煙台市にある2つの工場の生産に集中するためだ。すでに2021年3月にも青森県野辺地町の工場を閉鎖して約40人の従業員を解雇していた。どうも、海外生産シフトが遅れていたようだ。こうした一連の経営不振の責任をとる形で工藤洋志前社長が退任し、昨年6月の定時株主総会後の取締役会で、帝人フロンティア元社長だった日光信二アツギ顧問の社長就任を発表している。ちなみに工藤社長は青森県出身ということで、そうした「地元」への思い入れが生産の海外シフトを招いたといううがった見方も一部にはある。

アツギは1947年12月24日に創業者堀縁助によって現在の神奈川県海老名市に厚木編機株式会社として設立された。当初の主な製品は捕鯨用ロープだったという。「海老名」ではなく「厚木」だったのは、近隣の米軍厚木基地に降り立った連合軍総司令官ダグラス・マッカーサーによって世界中に広まった「アツギ」を社名にすることを堀が思い付いたためだという。堀はアイデアマンで、1955年のシームレスストッキング発売、1968年の日本初パンティストッキングの発売、1979年に世界初フルサポーティパンスト発売など常に業界を牽引して来た。

現在でも「アツギ」のブランドは女性たちの間では圧倒的な知名度を誇っているのは間違いない。しかし年商は200億円まで減少を続けている。2003年3月末決算では、売上高300億1000万円を記録しているからこの20年で売り上げは3分の2になっている計算だ。パンストトップ企業としてアグラをかいて、新規分野や新商品開発への挑戦が少なかったと言われている。遅ればせながらメンズ下着とメンズソックス強化で民事再生法申請後再建中(後に自己破産)だったレナウンから子会社レナウンインクスを2020年10月に買収したりしている。昨年の生産の完全中国シフト、日光新社長の成果が出るのは2024年3月決算ということになるが、黒字化への道は険しそうだ。日光新社長の手腕に期待したい。