個人事業主になるには?必要な手続きとメリットやデメリットを解説

個人事業主とは「個人で事業を営む人」のこと

事業とは、一定の目的を持って反復・継続して行われる、独立した仕事のことです。例えば、経常的にアクセサリーを作ってショップで販売するのは「事業」ですが、引越しなどで出た不用品をフリーマーケットで売るのは事業ではありません。個人事業主とは、この事業を、会社などを設立せずに個人で営んでいる人のことです。

個人事業主とフリーランスとの違い

どの程度の反復・継続性、独立性があれば「個人で継続して事業を営んでいる」個人事業主に当たるかについては、明確な定義はありません。その仕事で生計を立てる意思があるか、本業なのか会社員の副業なのかといったことなどを総合的に見て判断します。税務署に開業届を出したから事業になるというわけではなく、あくまで実態で判断しなければいけません。

個人で働く人を指して「フリーランス」といったりもしますが、フリーランスとは、特定の団体に所属せず、個人で仕事を請け負って働く働き方のことです。これに対し個人事業主は、「継続して事業を営んでいる人」を指す点で異なっています。

個人事業主と法人との違い

法人とは、法律により人と同じ人格が認められた組織や団体のことです。株式会社や合同会社、NPO法人、一般社団法人などさまざまなものがあり、設立の方法もそれぞれ異なります。事業内容は同じでも、法人を設立せずに個人で事業を営んでいる人は「個人事業主」、株式会社やNPO法人として事業を営んでいる場合は「法人」になります。

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個人事業主になるための手続き

個人事業主になるには、法人のように法務局で登記をする必要はありません。税務署に開業届を提出する必要はありますが、もし開業届を提出していなくても実態として事業であれば、その事業を行っている人は個人事業主です。

管轄の税務署に開業届を提出する

開業届は、正式名称を「個人事業の開業・廃業等届出書」といい、個人が開業した際に税務署に提出する書類です。事業を開始した日から、1か月以内に提出しなくてはいけません。用紙は、税務署の窓口で受け取れるほか、国税庁のWebサイトでもダウンロードできるので、入手して必要事項を記載したうえで、所轄の税務署に持ち込むか郵送して提出します。

■個人事業の開業・廃業等届出書

<開業届の書き方>

  • 納税地の税務署名と提出する日付を記載します。
  • 「納税地」欄には納税地としたい場所の住所を記入し、その住所がどこであるか、「住所地(自宅の住所)」「居住地(海外に住んでいるが活動場所は日本にある場合など)」「事業所等(店舗やオフィスの住所)」から1つ選んでチェックを入れます。
  • 自宅以外にオフィスや店舗、事務所などを構えている場合は、その下の「上記以外の住所地・事業所等」欄に、その住所を記載します。ただし、オフィスの住所を納税地とする場合は、「納税地」欄にオフィスの住所を記入し、「上記以外の住所地・事業所等」欄に自宅住所を記入します。
  • 「氏名」欄に氏名、「生年月日」欄に生年月日、「個人番号」欄にマイナンバーを記載します。
  • 「職業」欄に職業を記載します。職業によっては、業種に応じた個人事業税を支払わなければならない場合があります。
  • 「屋号」欄に屋号を記載します。決めていなければ空欄で構いません。
  • 「届出の区分」欄の「開業」にチェックを入れます。
  • 「所得の種類」欄の該当する所得にチェックを入れます。個人事業主の多くは「事業(農業)所得」です。
  • 「開業・廃業等日」欄に開業日を記載します。
  • 「青色申告承認申請書」や「課税事業者選択届出書」など、この開業届といっしょに出す書類がある場合は、「開業・廃業に伴う届出書の提出の有無」欄の「有」にチェックを入れます。
  • 「事業の概要」欄に、どのような事業を始めるのかを、できるだけ詳しく記載します。例えば、「弁当の調理・宅配」「Webサイトのデザイン作成」「Web広告の作成」といった具合です。
  • 専従者や使用人がいる場合は、「給与等の支払の状況」欄に、それぞれの人数と給与の支払い方(月給、日給など)を記入します。税額の有無欄は、専従者の源泉徴収を行うかどうかです。給与を支払うなら、通常は源泉徴収を行うので、「有」にチェックを入れます。
  • 源泉徴収税は原則として毎月納める必要がありますが、給与の支給対象者が10人未満の場合、申請すれば年2回にまとめられます。申請を希望する場合は「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書の提出の有無」欄の「有」にチェックを入れます。
  • 給与を支払う場合は、「給与支払を開始する年月日」欄に、支払った日または支払予定日を記載します。
  • 状況によって開業届といっしょに提出するべき届出

    状況によっては、開業届といっしょに下記の書類も提出が必要になります。当てはまる場合は、「開業・廃業に伴う届出書の提出の有無」欄の提出する書類にチェックを入れたうえで、提出しましょう。

    ■開業届といっしょに提出することがある書類とその目的

    必要なケース 提出すべき書類 目的
    青色申告を行いたい場合 所得税の青色申告承認申請書 青色申告事業者になる
    家族を従業員として雇う場合 青色事業専従者給与に関する届出・変更届出書 家族を青色事業専従者として、その給与を経費に算入する
    従業員を雇って給与を支払う場合(開業届で「給与等の支払の状況」を記入した場合は不要) 給与支払い事務所等の開設・移転・廃止届出書 従業員を雇用して給与を支払う場合、源泉徴収した所得税の納付書などが送付される
    従業員を雇って給与を支払う場合(給与の支給人員が常時10人未満の場合) 源泉所得税納期の特例の承認に関する申請書 源泉徴収税(事業者が従業員の給与から天引きして集めた所得税)を毎月納めるのではなく、年2回まとめて納付できる

    これに加え、業種によっては、都道府県に「個人事業開始申告書(事業開始等申告書)」の提出が必要です。提出先や提出期限は都道府県によって違うので、開業地の都道府県の規定に従ってください。