「小学校入学によって保育園時の生活スタイルを見直さなければならない」
「子育て支援制度が使えず、育児と仕事の両立が不安」

小学校入学にあたって直面する「小1の壁」。保護者のなかには、子どものライフスタイルの変化によって雇用形態を見直したり、仕事を辞めざるをえない選択を迫られたりします。特に共働き世帯ではこの問題が顕著です。今回は小1の壁について、多くの人が抱える不安や悩み、おすすめの対策をご紹介します。

小1の壁とは?

小1の壁とは子どもが小学校1年生になることで、保育園時に比べて仕事と家事・育児との両立が難しくなることを指します。保育園と比較してさまざまな変化を迎える小学校への入学。加えて適用期限が小学校就学始期までとなっている子育て支援政策もあり、会社からのサポートを受けられなくなる家庭も少なくありません。国は小1の壁問題打破のためにさまざまな対策を練っています。

保育園と小学校の違いから生じる不安

保育園と小学校では生活スタイルが大きく異なります。これは保育園が保護者の仕事と子育てを支援する施設であったのに対し、小学校が子どもの成長を支援する施設であるためです。夏と冬に長期休暇が設けられ、PTA活動や授業参観、個人面談など平日の日中に行われる行事が増えます。これによって保護者は仕事を続けるのが難しくなる現状です。

さらにそれまで適用されていた短時間勤務や所定外・時間外労働・深夜労働の制限、看護休暇などの育児支援制度が受けられなくなるのも小学校就学初期の時期です。子どもの生活スタイルが変化するにともなって、親のライフスタイルやキャリアライフの見直しを迫られ、不安を抱える家庭も少なくありません。

学童保育の現状

学童保育も働く保護者を100%サポートするとはいえない現状です。放課後や長期休暇の日中時間帯、保護者が留守にする小学生に適切な遊びや生活の場を与えて、児童の健全な育成を図る学童保育。しかし厚生労働省が発表した「令和3年(2021 年) 放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)の実施状況」によると2021年の学童保育待機児童数は13,416人です。前年と比べると減少傾向にありますが、依然として多くの子どもたちが放課後や長期休暇を過ごす場所を求めています。

さらに学童保育施設の半数近くが終了時刻を18時30分から19時に設定しました。このため保護者の終業時刻と子どもの送迎時刻が合わない家庭もあり、放課後の過ごし方に不安が生じています。

国の「小1の壁」対応策

国も小1の壁を打破するために対策を練っています。2018年に策定された新・放課後子ども総合プランでは、放課後児童クラブの整備目標を数値化。学童保育の待機児童問題解消を目指します。さらに学校施設を徹底的に活用し、新たに放課後児童クラブを開設する場合は8割が小学校内になるよう進めるといった目標もつくられました。

すべての小学校区で、放課後児童クラブと放課後子供教室を連携。安全・安心を確保した施設の拡充を目指しています。子どもの主体性を尊重し、健全な育成を図る放課後児童クラブ。より利用しやすい施設へと整備し、子どもの自主性・社会性などの向上を図るねらいです。

小1の壁を乗り越えるおすすめ対策5選

放課後は学童保育の利用が一般的ですが、依然として待機児童問題があったり保護者の終業時刻と学童保育の終了時刻があわなかったりする問題があります。そこで小1の壁を乗り越えるべくおすすめの対策をご紹介しましょう。

1.民間学童保育の活用

多くの学童保育は公立で運営されていますが、民間の学童保育もあります。株式会社やNPO法人などの事業者が、子どもを預ける際の利用料金によって運営。終了時刻が20時や21時と遅く設定されていたり、習い事や塾の機能をあわせもったりする学童保育もあります。

ただし民間の学童保育は公立と比較して利用料金が高額で、地域によっては民間で運営される学童保育がない場合もあるでしょう。また運営される学童保育によって提供するサービスが異なります。アクセスや利用料金、各家庭に適したサービスがあるかなど、民間の学童保育利用時にはしっかりと検討することが大切です。

2. ファミリーサポートセンターの活用

ファミリーサポートセンターとは行政が地域で行う子育て支援サービスです。サポートを求める人とサポートしたい人をマッチングする機関で、民間の代行サービスより比較的安価に利用できます。たとえば子どもの送迎や放課後の預かり保育などの依頼が可能です。

一方、運営は地域人材によってまかなわれるため、事前予約制だったり需要と供給のバランスがとれず人材が不足したりする現状があります。地域によってもサービスの提供状況が異なるので、まずは行政機関に相談してみるとよいでしょう。

3. 習い事の導入

放課後の預かり先ととらえて、習い事に通わせるのも一手です。子どもが1人で通える範囲にあったり送迎サービスを実施していたりするところを選べば、放課後も保護者が終業時刻を気にする必要がありません。

ただし習い事先が遠方の場合は送迎の必要があります。友だちと一緒に通えたり親戚や友だちの保護者などに送迎をお願いしたりできると安心です。

4. 子ども用GPSの導入

子どもの居場所を確認するために、子ども用GPSを持たせるのもよいでしょう。小学校入学とともに子どもの行動範囲は大きく広がります。離れて過ごす時間も増えるので、すぐに居場所がわかるものを持たせておくと安心です。キッズ携帯にもGPS機能を備えたものがありますが、小学校によっては携帯の持ち込みを禁止するところがあります。子ども用GPSなら現在地の確認機能に特化し、さらに通知エリア設定や相互の連絡機能を備えたGPSもあるので家庭によって必要な機能を備えた機種を選ぶとよいでしょう。

子ども用GPSを導入する際に不安なのが紛失や故障です。子どもが活発に動けば動くほどそのリスクは高まります。紛失・故障に対応したサービスを提供するGPSもあるので、チェックしてみてください。

5. 働き方を見直す

小1の壁に対応するために、保護者の働き方を見直すのも一手です。出産・育児にともなってさまざまな育児支援政策がありますが、その多くは適用期限が小学校就学始期までと定められています。看護休暇や短時間勤務などの子育て支援制度を活用してきた場合は、小学校に入学する際に改めて適用期限を確認しておくとよいでしょう。

これまで活用してきた育児支援制度を見直すとともに、フレックス勤務やリモートワークといった働き方もおすすめです。フレックス勤務やリモートワークは法律で義務付けられているものではなく、企業の裁量によって決定します。適用の可否は事業内容や社内風土によって異なりますが、育児と仕事を両立するために相談してみるのもよいでしょう。またパートやアルバイトならフルタイムより時間の融通がききます。仕事を変えることも視野に入れながら、各家庭にあわせた働き方を検討してください。

育児と仕事の両立を支える制度

子育てと仕事を両立させるための制度はさまざまです。ただし保育園まで利用できた育児支援制度は、小学校の入学や小学2年生への進学を機に使えない場合があります。育児支援制度や企業のサポート例をご紹介します。

小学校就学始期に利用できる制度

小学校就学始期とは、子どもが小学校1年生になった1年間をさします。この期間までの適用が法律で義務付けられているのが看護休暇、時間外労働の制限、深夜労働の制限などです。さらに育児休業や所定外労働の制限、短時間勤務、始業時刻変更等の措置は企業の努力義務として設けられています。小学校入学以降も使える制度を、あらかじめ確認しておくとよいでしょう。

これらの制度は小学校就学始期を境に、法律によって定められた適用の義務がなくなります。企業によっては継続して配慮されるところもありますが、判断は企業ごとに異なるので注意が必要です。また長期休暇や早い時間の帰宅などには対応できないので、改めて対策を練る必要があります。独自の子育て支援制度を打ち出している企業もあるので、相談したり子育てを支援する企業に転職したりするのも一手です。

健康経営優良法人

従業員が健康に生き生きと働くことを目指して、身体的・精神的な健康をサポートする健康経営。健康経営優良法人の取り組みのなかには、育児支援制度の拡充もあります。未就学児をもつ家庭には育児休業をはじめさまざまな育児支援制度が法律で義務付けられていますが、小学校就学後は法律による義務がなくなり、結果として小1の壁に直面する家庭も少なくありません。子どもをもつ人ももたない人も生き生きと働くためには、企業の支援が重要です。

ワーク・ライフ・バランスの見直しを図ったり、リモートワークの導入や残業時間の削減などをはじめとする働き方改革は、家庭と仕事の両立にもつながります。また家事や育児の負担がかかりがちな女性の活躍推進、女性ならではのライフイベントに対応した職場支援などは育児支援としても有効です。

健康経営は長期的な人材の確保や生産性の向上といったメリットをもたらすとともに、人材の定着も期待できます。仕事に対するモチベーションが高まれば、キャリアアップや管理職登用にもつながるでしょう。少子高齢化により人材不足への不安が高まるなか、健康経営の取り組みは注目を集めています。

小1の壁を乗り越えるには準備が大切!子育てと仕事の両立を目指そう

小1の壁について、多くの人が抱える不安や悩み、おすすめの対策についてご紹介しました。小学校入学を機に国や企業の子育て支援制度が適用期限を迎えることで直面する小1の壁。子どもの生活スタイルが変わり、保護者の働き方も見直しを迫られるかもしれません。しかしこれまでの子育て支援制度にかわる子育てサービスもあります。

また学年が上がるにつれ、1人で留守番ができるようになったり送迎なしで習い事に通えるようになったりするでしょう。初めての小学校で、親はもちろん子どもも不安や緊張を抱えています。子どもをしっかりとサポートするためにも、親がしっかりと小1の壁への対策を練ることが大切です。頼れるサービスや制度にはしっかりと頼りながら、子育てとともに充実したキャリアライフを築いてください。