こんにちは、ライターの宿木です。

「フリーランスとして働きたいけれど、生活ができないかもしれない」と不安でなかなか一歩を踏み出せない人も多いと聞きます。お金で苦労したリアルな話は、みんなあまり話したがらないものです。でも、フリーランスになるかどうか悩んでいる方なら、このお金の不安は解消したいですよね。

本記事では、フリーランスが経済的な理由で生活できない状態に焦点をあて、どうしたらフリーランスとして働きながら生活を維持できるのかを解説します。本当に生活できなくなってしまったフリーランスのリアルな体験談も書きました。お金の不安が拭えない方は、フリーランスになる前にぜひチェックしてみてください。

宿木雪樹

企業の採用コンテンツなどを主に書くビジネス系ライター。これまで単価交渉はほぼしたことがないが、自分の市場価値や市場ニーズに意識を向けることで、納得いく価格帯の仕事に恵まれてきた。逆に取引先から「安すぎない?」と心配いただくことが多い。(Twitter:@yuki_yadorigi

フリーランスだと生活できないと言われるのはなぜ?

まず、一般的に「フリーランスだと生活できない」と言われる理由から考えてみましょう。フリーランスとは、特定の会社や団体に属さず、仕事に応じて柔軟な契約をしながら働く人を指します。それが生活の困窮に直結してしまうのは、なぜでしょうか。

フリーランスの最大の欠点は、収入が安定しないことです。会社員だと毎月定められた給与が支払われることが当たり前すぎて意識しないかもしれませんが、毎月の給与は生活基盤そのものとも言えます。フリーランスは保証された収入がないので、極論を言えば来月から収入0円、つまり無職状態になることもありえます。

一方で、生きている以上、毎月の支出を0円にすることはできません。これについては実家暮らしの方だとピンと来ないかもしれませんが、家賃、光熱費、食費といった最低限の生活費は、どう節約しても0円になることはありませんし、意外と大きな金額が毎月財布から出ていきます。

今回テーマにしている「生活できない」状態とは、収支のマイナス状態が続き、最低限の生活費を支払う貯蓄すら尽きてしまうことを指します。

「フリーランスだから生活できない」とは言い切れないにしろ、正社員と違って収入が安定しないため、生活できない状態に陥るリスクが高い働き方とは言えるでしょう。

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生活できなくなったフリーランスのケーススタディ

では、フリーランスで生活できなくなってしまうケースとしては、具体的にどんな事態が想定されるのでしょうか。私が実際に知人のフリーランスからヒアリングした、生活できなくなった要因を紹介します。

事例1.「お休み多め&収入最低限」計画が予想外の支出で崩れた

Aさんはフリーランスのライターとして月20万程度の売上を維持していました。内訳としては、取引先3件から各5~10万円程度の継続案件を受注していた状態です。取引先との関係は良好で、いずれも持続性の高い案件だったそうです。

Aさんは休みの多い生活を好むタイプで、お金のかかる趣味も少なかったことから、これ以上仕事を増やすのは避けていました。月々かかる生活費は、家賃などの固定費7万円と、食費や交際費などの流動費が平均10万円程度。アプリでおよその家計簿もつけており、「月3万くらい貯金してればOK」と安心していたそうです。

しかし、住んでいるアパートの契約更新月の引き落としがかかったことで銀行の残高が0円に。契約更新についてはすっかり忘れていたそうですが、それでも貯金が0円になるとは想像していなかったそうです。

そこで普段見ない残高記録を確認したところ、年に数回分納する納税や、年に一度自動で引き落とされるサービス課金などが、じわじわと貯蓄を減らしていたことに気付きました。また、どんぶり勘定で収支を計算していたものの、収入が20万に満たない月もあれば、交際費がかさんで支出が20万を超えている月もあったと後から気づいたと言います。実際は「月3万円の貯金」などできていなかったのです。

たくさん休めるからフリーランスになったと振り返るAさんですが、この貯金残高割れの経験がきっかけで考え方を改め、派遣の仕事を掛け持ちするようになったと教えてくれました。

事例2.「いっぱい稼いでいれば問題なし」のはずが……

一方、フリーランスのWebエンジニアとして働いていたBさんは、月50~70万円程度の売上を出していました。月20万円の業務委託案件2件から固定収入を得て、そこに単発案件をプラスする形で10~30万円稼いでいたそうです。

Bさんは突発的に旅行に行ったり、逆に数週間引きこもったりと流動的な生活を送っていました。気分によって変化する支出を想定して仕事を入れ、「毎月1円でもプラスにする」というシンプルなルールのみ守っていたと言います。家計簿は面倒でつけていなかったそうですが、収支がマイナスになると生活できないという前提から考えれば、このルールさえ守れば一見大丈夫そうに見えますね。

しかし、業務委託2件の案件が立て続けに切られたことで、Bさんの状況は一転します。急いで読み返した契約書には突然契約を切ることを違約とする文言はなく、それぞれの案件が同じタイミングで切られたのは完全なる偶然だったそうです。Bさんが生活できなくなることは取引先の責任ではありませんから、いくらそれを訴えたところで意味がありません。

なんとか生活を維持するため、Bさんは生活費の支払いを集約していたクレジットカードのリボ払いを利用しました。なんとか窮地はしのいだものの、流動的な案件からしか収入を得られない状態で、完済の見通しはまったく立たなくなってしまったそうです。

一時は同条件の業務委託案件を探していたものの、見つけるのに時間がかかると判断し、Bさんは再就職を選びました。急いで決めた転職先の満足度はそこまで高くないものの、生活ができない状態に比べればよっぽどいいと振り返ります。とりあえずリボ払いの完済が当面の目標ではあるものの、フリーランスに戻ることは今のところ考えていないと教えてくれました。