【更地にしても売れない“負動産”】相続税評価額は約800万円の土地なのに…不動産屋からいわれた「衝撃の売値」とは

実家の土地が売れない! どうしよう

筆者の父が亡くなって、かれこれ4年近くなります。コロナ禍の影響で面談もままならないまま、2020年7月に亡くなりました。

てっきり母が家計のすべてを仕切っていると思っていたので、金額は大したことないものの、相続財産関係は「ま、どこかにまとめてあるだろうから大丈夫だろう」などと、高をくくっていました。

が、母は家の資産に関して全く関知せず、すべては父が仕切っていたことが亡くなってから判明しました。「実印はどこ?」「土地の権利書は?」「そもそも預金はいくらあるの?」と質問してもなしのつぶて。

変なところに隠していた現金も含めて預金の類いはすべて回収できましたが、父の葬儀を終えた後、真っ先に行ったのは、家探しでした。

母親は葬儀の翌日、自宅で転んで大腿(だいたい)骨を骨折。そのまま入院したものの、歩行器なしには歩けないことが判明。自宅はバリアフリーではなかったので、自宅での生活を諦めざるをえず、退院後はサービス付高齢者住宅に入ってもらいました。

となると、「自宅をどうするか問題」が発生します。このままでは空き家になるのは必然。建物は築60年の木造ですし、地下鉄の駅から徒歩15分で、それ以外の公共交通機関がないという不便な土地ですから、そのまま買い手が付くことはないと判断し、更地にして売却しようともくろみました。

とはいえ、腐っても横浜の土地――相続税評価額よりも少し安いところで売れるかと思って売りに出しました。

が、売れないのです。

土地は35坪程度。不動産屋さんには、さまざまなところに話を持っていってもらったのですが、良い返事が全くなく、更地にしてから2年と7カ月が過ぎました。

ちなみに相続税評価額は800万円程度でしたが、果たしていくつか出てきた“売値”はいくらだと思いますか。

250万円です。

「250万円なら何とか引き取れるかも知れない」と言われ、実際に現地を見た途端、「これはダメだわー」と言われて、今も売れずに残っています。

何がダメなのかというと、やはり場所なのですね。急坂を登り切ってすぐ右折。その先は抜けられない道になっていて、しかも家が建っている土地は道路から一段下がったところにあります。水道管も古い規格なので、家を建てるとしたら、水道管も全て敷き直さなければならない。ということで250万円でも見合わない、ということのようです。

そんな状況もあり、母親が相続した土地は更地のまま放置されています。このまま売ることが出来ず、固定資産税を払い続けるのもばからしい。そこで最近、頭をよぎるのが「いっそのこと国に返納してしまおうか」ということです。

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2023年4月からスタートした「相続土地国庫帰属制度」とは

幸いなことに、というか何というべきか分かりませんが、昨年4月から「相続土地国庫帰属制度」が施行されました。

この制度が導入されるまで、相続した不動産を処分するに際しては、

1.不動産市場で売却する
2.相続放棄によって、土地を国に帰属させる

という2つの手段がありました。これに「相続土地国庫帰属制度」が施行されたことによって、土地処分に関しては3つの選択肢がそろったことになります。

親と離れ、大都市圏で生活している子供は、親から実家の相続を受けたからといって、そこに戻って生活することは、ほぼないと言っても良いでしょう。こうなると、実家は完全な空き家になり、下手をすると所有者不明土地になる恐れがあります。これを防ぐために新設したのが、相続土地国庫帰属制度です。