●ロータリーエンジン(RE)との親和性

 マツダが「水素RE車」で実証実験をしていたのはご存知だろう。

 RX-8ハイドロジェンREは、2004年に国土交通大臣の認定を受けて、10月から公道試験を開始し、2006年にはエネルギー関連企業や広島県など、地方公共団体へのリース販売を始めた。

 REはレシプロエンジンとは異なり、「吸入 -> 圧縮 -> 爆発 -> 排気」の行程を、繭型のロータリーハウジングの中を、三角おにぎりの形をした遊星運動するローターが回ることで行う。

 REの行程は、「吸気」ポートから吸入された燃料は、「圧縮」されながらプラグのある燃焼室に相当する部分に送られ、点火されて「爆発」する。着火(爆発)した燃料は、「排気」ポートに向かい、排出される。

 この様な行程をたどる為、吸入された燃料は、火種の無いチャンバーに入り、着火して燃えている燃料は、新たに吸入された新しい燃料と触れることが無い。従って、「早期着火(バックファイア)」が起こり難い。

 また、吸気ポートは燃焼する部分と離れている関係で、シール類等も熱の影響を受け難い。

 その後、噂ではBMWは水素エンジン車の開発を断念したと仄聞する。BMWの撤退で、「水素エンジン車」は「マイナーな内燃機関」であるロータリーエンジンのみとなり、相当の苦戦が予想された。

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●レシプロの水素エンジン車

 しかしトヨタが水素エンジン車で耐久レースに参戦し、2021年5月22日~23日の富士24時間レースで「ORC ROOKIE Racing Corolla H2 concept」が完走した。(参考: 『水素エンジン車耐久レース完走の意義』(2021年6月18日付)

 この事実は、「早期着火(バックファイア)」と「ディバイスの熱対策」の問題を解決した上で、「過酷な耐久レース」に水素エンジン車を投入し、完走を果たものだ。水素エンジンとは親和性の高いRE車以外で「レシプロの水素エンジン」も現実のものとなったことを、広く知らしめた。