「離婚をなかったことにしてほしい」テレビの情報を信じて大誤算…不幸のドン底へ落ちた女性の末路

<前編のあらすじ>

友美恵さん(39歳・女性)と巧さん(42歳・男性)夫婦は交際後数カ月で結婚。しかしライフスタイルのすれ違いから喧嘩が頻発し、ついに子供の進学のタイミングで離婚することとなった。

離婚に伴う諸々の条件は、2人が前向きに離婚を決断したこともありスムーズに決まった。しかし1つだけ意見が対立して全く決まらない。それが「財産分与」についてだ。

夫婦には離婚時4000万円近い額の貯金があり、この貯金は巧さんが数年前父親から相続したものであった。“夫婦の婚姻中に得た財産”だとして友美恵さんは「半分を受け取る権利がある!」と主張。一方の巧さんは「君は関係ないだろう。財産分与する理由がない」と譲らなかった。

「財産分与」のルール

両者の言い分と事の経緯が整理できたところで一般的な財産分与のルールについて確認していこう。

財産分与とは、離婚において夫婦の一方から他方に対して婚姻中に得た財産を分けるものである。その根拠には、財産離婚相手の生活保障や離婚の原因についての責任の清算の他にも、婚姻中に築いた財産の分与という側面も強くある。

今回の友美恵さんの主張については「婚姻中に築いた財産の分与」という点に主眼を置いて考えていこう。実務で考える場合においてもこの点は非常に重要となる。

一般的に財産分与の額は夫婦が婚姻生活中に築いた財産の半分の額とされる。そのため、財産分与においては「どの財産が婚姻中に得た財産とされるのか」という点が非常に重要になるわけだ。

これについてだが、財産分与の対象となる財産は婚姻中に夫婦が得た財産のすべてが対象になるわけではない。名義の如何(いかん)にかかわらず、夫婦の協力によって形成された財産が対象となるのだ。

例えば、名義上は夫のものとなっている財産であっても、それが婚姻期間中に夫婦の協力によって得られたものであれば財産分与の対象となる。

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巧さんと友美恵さんのケースではどうなるのか

先ほど確認した財産分与の概要を巧さんと友美恵さんのケースについて考えていこう。すると、ぱっと見、友美恵さんは財産分与によって巧さんの4000万円の貯金のうち半分に該当する2000万円を財産分与によって得られることになると考えられそうだ。

友美恵さんは婚姻期間中家事を引き受け、親せき付き合いも完璧にこなし、巧さんを対外的にも対内的にも支えてきたからだ。となれば、友美恵さんの言う「お義父さんの介護やお葬式、私はあなたの身内としていろいろな手伝いをしてきた」という主張にも正当性が生まれてくる。相続によって得られた4000万円の貯金には友美恵さんの功績が一定以上は含まれていると考えられそうだ。

だが、だからといって相続によって得た財産までもが財産分与の対象となるわけではない。財産分与の対象となるのは、あくまでも「共有財産」だ。共有財産とは、夫婦が共同で所有する財産、婚姻中に夫婦が協力して形成した財産である。

一方で、相続によって得た財産は「特有財産」となり財産分与の対象とならない。特有財産とはいわば夫婦関係とは無関係の個人的な属性から得た財産を指す。相続によって得た財産は夫婦関係とは関係がない。

たしかに現実としては友美恵さんの助力が一切影響していないとも言い切れない。しかし、仮に友美恵さんの存在がなくとも、相続については自身の家族関係・親族関係といういわば個人的な身分に基づいて生じる。つまり、相続によって得た財産は共有財産ではなく特有財産となる。

このように考えると、結論として友美恵さんは4000万円の相続財産については半分とは言わず、“財産分与を一切受けられない”ことになる。