ついに1億件を突破、本格的な利活用時代に移行するマイナンバーカード

 2024年3月末、マイナンバーカードの申請がついに1億件を突破し、保有枚数も全人口の約73.5%にあたる9200万枚を超えた。4人に3人が持つカードになったことで、マイナンバーカードはこれから本格的な利活用の時代に移っていくだろう。

●マイナンバーカードとの一体化



 利活用で真っ先に思い浮かぶのは、マイナンバーカードと各種カードの一体化だ。今年度予定・検討されているイベントも目白押しである。

・マイナンバーカードと健康保険証の一体化(24年12月2日以降は紙の保険証は発行されなくなる)

・マイナンバーカードと運転免許証の一体化(24年度末までに開始予定)

・出生届とマイナンバーカード申請書の一体化(24年12月までに実施予定)

・マイナンバーカードと在留カードの一体化(24年3月に国会に法案提出済み)

 マイナ保険証については、なぜ健康保険証をマイナンバーカードと一体化しなくてはいけないのか、なぜ今の紙の健康保険証のままではいけないのか、十分な説明がないまま医療DXによる「医療情報の共有化」という掛け声の下、一体化の話だけが先行してしまったがために、国民から大きな反発を招く結果となった。

 財布の中の複数カードがマイナンバーカード一枚で済むなら、財布もスリムになって助かると思うのは筆者だけではないと思うが、なぜ政府は批判を受けながらもマイナンバーカードとの一体化を進めているのだろうか。

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●マイナ保険証



 マイナンバーカードと健康保険証の一体化、すなわち保険証のデジタル化には、実は健康保険の不正使用やミスをなくし、国民皆保険制度を守るという大きな目的がある。

 健康保険の被保険者は、医療機関受診時に窓口で自身の健康保険証を提示し、自己負担分を支払えば治療が受けられる。国民皆保険制度が行き届いている日本では、ごく当たり前の風景だが、先進国の中で国民皆保険制度のないアメリカ人からすると、全ての国民が少ない医療費負担で質の高い医療を受けられることはとても羨ましいことに映るようだ。

 国民が負担する医療費が少なく済むのは、医療費が他国に比べて安いからではなく、自治体や健康保険組合などの保険者が自己負担分以外の医療費を負担してくれているからだ。

 医療機関では、提示された健康保険証の券面情報で保険受給資格の有無を確認し、保険者に対し、審査支払機関を通じて診療報酬明細書(レセプト)を送り、診療に掛かった医療費を請求する(保険者が支払う医療費の原資は、国民の税金と保険料から成り立っている)。

 レセプトは診療の翌月10日までに医療機関から支払機関に送られ、支払機関で審査されたのちに保険者に送られるため、診療から保険者までの期間が2カ月以上かかることもある。その間は医療機関や薬局で情報共有ができず、転売目的での薬の大量購入に関連し、重複投薬、重複診療という問題を防ぐことができない。

 また、紙やプラスチックの保険証には顔写真がなく、なりすましや使い回しが容易にできてしまう。医療機関側の券面情報の入力ミスも、今まで一定程度発生してしまうのはやむを得ないヒューマンエラーだとされてきた。

 だが、身元確認がきちんと取れたマイナ保険証により、オンラインでの資格確認を行えば、資格喪失後の保険証の不正使用、なりすましや使い回しによる不正使用、事務処理時の人為的ミスによる過誤請求を防ぐことができる。

 これにより、本来保険者が支払う必要のない医療費や事務負担費を大きく削減できる。いい換えれば、紙の保険証のままでは、これら不正に支払われた医療費や余計な事務負担費を、全員がワリカンで負担し続けなければならないということだ。

 25年には5人に1人が75歳以上の後期高齢者となる超高齢化社会の日本において、現行の仕組みのままでは国民皆保険制度を維持できなくなるので、マイナンバーカードとの一体化を急ぐというのが政府の理屈だ。