NVIDIAが基調講演でヒューマノイド開発プラットフォーム「GR00T」(ジーアールゼロゼロティー)を発表したことは既にお伝えしたが、今回、ロボティクス開発の新技術に関する発表は3つあった(GR00Tについては前出の記事「NVIDIAがヒューマノイド開発プラットフォーム提供を発表 ディズニーの二足歩行ロボットが登壇 Jetson Orinから次世代Thorへ」を参照)。この3つの発表は関連していて、それぞれがトピックであると同時に、3つの技術を活用してこそヒューマノイド開発を加速できるトピック、という見方もできる。



ヒューマノイドロボット開発向けのプラットフォーム「GR00T」

一つ目は人型のヒューマノイドロボットを開発するためのプラットフォーム「GR00T」と、それを構成するソフトウェア、複雑で重たい負荷の作業をこなす新しいSoC「Jetson Thor」の発表だ。リリース時期や詳細はまだ不明だが、これがリリースされれば、ヒューマノイド開発の敷居が下がり、多くの開発者や研究者が開発する機会が得られる可能性が上がると期待できる。



「Isaac Lab」と「OSMO」

ふたつめは「Isaac Lab」。前回の記事でも「Isaac」プラットフォームのメジャーアップデートと伝えたが、そのひとつが「Isaac lab」で「Omniverse」ベースで、ロボットの動きのシミュレーションで強化学習を行うことができる。また、オーケストレーション サービスの「OSMO」も発表されている。
高精度なAIモデルの開発に、最近は強化学習が用いられることが多いが、トレーニングには膨大な実データや仮想(合成)データが必要となる。「Isaac Lab」は、この課題を解消するため、特にロボット学習のための数千の並列シミュレーションを実行するために「Isaac Sim」上に構築され、高速のGPUで迅速に処理できる軽量パフォーマンスを最適化したアプリケーションとなっている。

また、多くのコンピューティングで分散してロボット開発を行うために「分散した環境全体」でデータを生成したり、トレーニングしたり、ソフトウェアやハードウェアのワークフローを調整して最適化する機能が「OSMO」のようだ。

ロボット学習の「Isaac Lab」とハイブリッド・クラウド・ワークフローのオーケストレーションを可能にする「OSMO」は、「プロジェクトGR00T」とロボットの基礎モデルの開発に役立つ


「Isaac Manipulator」と「Isaac Perceptor」

3つ目は「Isaac Manipulator」と「Isaac Perceptor」だ。ロボット工学の事前トレーニング済みモデル、ライブラリ、リファレンス、ハードウェアのコレクションで構成されている。

NVIDIAの新技術に、基調講演では安川電機やUR(ユニバーサルロボット)などが賛同していることが紹介された



Isaac Manipulator
「Isaac Manipulator」は、マニュピレータ向けの基礎モデルとGPUによって高速化されたライブラリで構成され、ロボット・アームに対して器用に動くAI機能を追加する。開発者は多くの新しいタスクを自動化できる、としている。

初期のエコシステム パートナーには、Franka Robotics、PickNik Robotics、READY Robotics、Solomon、Universal Robots、そして安川電機の名前が挙がっている。
安川電機はAIロボットに注力することを公言しており、数日前もプレスリリースを通じてNVIDIAと連携し、GTCにロボットを展示することを発表しており、実際にGTCの展示会場では同社の青いロボットが動作していた。

Isaacプラットフォームを活用した安川電機のデモ

■安川電機のデモ

安川電機の小川正博社長は「NVIDIAのAIツールと機能を、安川電機のオートメーション・ソリューションに導入することで、業界全体でロボットを導入できる限界を押し広げます。これはさまざまな業界に大きな影響を与えるでしょう」と述べている。

NVIDIA は、既存のロボット操作システムを強化するための「ファウンデーションモデル(基礎モデル)」を導入した。これは、製造業のスマート工場において、さまざまな環境を認識し、適応し、ピックアンドプレイスの作業処理や、再プログラムするロボット開発などに役立つとしている。
● FoundationPose
6D姿勢推定とこれまで見えなかったオブジェクトの追跡のための先駆的な基礎モデル。
● cuMotion
NVIDIA GPUの並列処理を利用して、多くの軌道の最適化を同時に実行し、最適なソリューションを提供。
● FoundationGrasp
未知の3Dオブジェクトの把持を予測するトランスフォーマー・ベースのモデル。
● SyntheticaDETR
新しいオブジェクトの迅速な検出、レンダリング、トレーニングを可能にする屋内環境用のオブジェクト検出モデル。



Isaac Perceptor
「Isaac Perceptor」は、マルチカメラの3Dサラウンドビジョン機能を提供するもの。主に工場や倉庫、敷地内での自動搬送ロボットなどに有効な機能だ。パートナーは、ArcBest、BYD、KION Group などの企業の名前が挙がっており、新しい高度なビジュアルAI機能のマテリアル ハンドリング業務で新世代の自律性を実現することを目指すとしている。新しい「Isaac プラットフォーム」機能は次の四半期に利用可能になる予定としている。