NVIDIA は2024年3月19日、研究者や開発者が化学、生物学、マテリアルサイエンスなどの主要な科学分野で量子コンピューティング探究を支援するクラウド サービス「NVIDIA Quantum Cloud」を開始したことを発表した。

「NVIDIA Quantum Cloud」は、オープンソースの CUDA-Q量子コンピューティング プラットフォーム(https://developer.nvidia.com/cuda-quantum)をベースにしている。量子プロセッシング・ユニット(QPU)を導入している企業の4分の3で使用されているという。 マイクロサービスとして、ユーザーは量子と古典アーキテクチュアのハイブリッド・プログラミングのためのシミュレータやツールを含む、新しい量子アルゴリズムとアプリケーションをクラウドで構築してテストすることが初めて可能になった、としている。

NVIDIA の HPC および量子コンピューティング担当ディレクターのティム コスタ(Tim Costa)氏は、次のように述べている。

NVIDIA Tim Costa氏

「量子コンピューティングは、コンピューティングの次の革命的なフロンティアを提示します。そして、この未来に一歩近づけるには、世界で最も優秀な頭脳が必要になります。NVIDIA Quantum Cloud は、この革新的なテクノロジを探求するための障壁を打ち破り、世界中のすべての科学者が量子コンピューティングの力を活用して、アイデアを現実に近づけることを可能にするでしょう」



Quantum Cloud の機能
・トロント大学と共同で開発された生成量子固有値ソルバーは、大規模言語モデル (LLM) を活用して、量子コンピューターが分子の基底状態エネルギーをより迅速に見つけられるようにします。

・Classiq と CUDA-Q の統合により、量子研究者は、大規模で高度な量子プログラムを生成できるだけでなく、量子回路を深く分析して実行することができる。

・QC Ware Promethium は、分子シミュレーションなどの複雑な量子化学の問題に取り組む。

量子エコシステムによる採用
NVIDIA の量子コンピューティング・エコシステムには既に160を超えるパートナーがいる。
IQM Quantum Computers、OQC、ORCA Computing、qBraid、Quantinuum などの多くの大手量子企業と同様に、Google Cloud、Microsoft Azure、Oracle Cloud などの大手クラウド・サービス・プロバイダーが自社の製品に Quantum Cloud を統合している。

NVIDIA cuPQCも開始

NVIDIAは、クラウド量子コンピュータ・シミュレーション・マイクロサービスを開始したことも発表している。「NVIDIA cuPQC」は、量子コンピューティングの時代の暗号化と通信技術を変革を加速するという。

NVIDIA cuPQCは、量子コンピューティング時代の暗号化に取り組む開発者にアクセラレーテッド・コンピューティングをもたらすとしている。cuPQCライブラリは、最も要求の厳しいセキュリティ・アルゴリズムにGPUの並列処理を利用する。

量子時代に向けたセキュリティのリファクタリング

量子コンピュータの登場によって、現在通信を保護するために使用されている公開鍵を活用した暗号化技術が解読できてしまい、無力化することが懸念されている。
たとえば、米国国立標準技術研究所は、早ければ今年にもポスト量子暗号の最初の標準アルゴリズムを導入する予定だという。現在の公開鍵に代わる高度なアルゴリズムを設計したり、テストするために強力なシステムが必要だ。

cuPQCはHopperの最大500倍高速

NVIDIAはベンチマークでは、cuPQC は 耐量子キーを保護するための標準として提案されているアルゴリズム「Kyber」を、CPUとNVIDIA H100 Tensor Core GPU上で実行すると従来の最大500倍高速化したことを公表している。
暗号化やその他のハイパフォーマンス・コンピューティング・ワークロードで使用される整数演算では、今回のGTCで発表された「Blackwell」の機能の高速化を考慮すると、NVIDIA BlackwellアーキテクチャのGPUを使用すれば、高速化はさらに明確になると予想される。