新十津川町と株式会社エアロネクスト、KDDIスマートドローン株式会社、株式会社電通北海道は、3月5日、6日に新十津川町内において、災害時を想定した「ドローンを活用した救援物資配送」実証実験を実施した。

能登半島地震の被災地における医薬品の配送等、道路が寸断され孤立した集落へのドローン配送が注目される中で、同実証では平時から町内の新スマート物流網を構築し、災害等の有事の際には「備えない防災」フェーズフリー(日常で使うものを災害時にも役立てる)という観点で、買い物配送で利用しているドローンを、救援物資や医薬品配送へ転用することを想定したレベル3.5飛行による配送を行った。

【レベル3.5飛行とは】
「レベル3.5」飛行とは、デジタル技術の活用(機上のカメラによる歩行者等の有無の確認)により、飛行時にこれまでレベル3飛行時に必要だった補助者や看板の配置といった立入管理措置を撤廃するとともに、無人航空機の操縦ライセンスの保有および保険への加入により道路や鉄道等の横断を伴う飛行を容易とするもので、ドローンの運用コスト削減と業務の効率化につながり、ドローン配送の事業化に向けた大きな動きである。

新十津川町上空を飛行するドローン

同実証実験の背景と目的

同町は札幌市と旭川市のほぼ中心に位置し、高齢化率は39.27%と、少子高齢化は町の大きな課題となっており、毎年実施しているまちづくりに関する町民アンケートの「住み続けたくない理由」の問において「買い物が不便」「老後の生活が不安」「交通が不便」「働く場がない」という項目がワースト上位を占めている。そうした課題を解決しうる町の新たな魅力として、全農家のうち40%以上の農家がドローンによる農薬散布を行なうなど、農業分野におけるドローン利用が全国トップクラスである点に着目。「ドローンのまち新十津川」を目指して各社は2024年1月12日に「ドローンのまちづくりに関する連携協定」を締結し、今回の実証実験に至った。

実証実験のドローン配送を終えて記念撮影

なお、同実証は、エアロネクストが開発推進するドローン配送と陸上輸送を融合した新スマート物流“SkyHub”のしくみを活用し実施するもので、ドローン配送サービス事業を主体とするエアロネクストの子会社、株式会社NEXT DELIVERYが行った。

同実証実験の内容

今回は、今夏ドローン配送のサービス実装化を目指している中で、災害時に普段使用しているドローン配送網を災害利用へ転用することを想定したドローン配送の他、先日開校した「KDDIスマートドローンアカデミー新十津川校」にて来年度、ドローン配送に使用する物流専用ドローン「AirTruck」の操縦について学び、目視外飛行を前提とした実地訓練を積むことが可能な国内初の「物流コース」の設置を計画しており、そちらで使用する予定ルートでのデモンストレーション飛行も併せて実施した。

ルート①:新十津川町農村環境改善センター みらいえ→吉野地区活性化センター
地震などの災害時、土砂崩れなどで道路が寸断された場合、中心部から少し離れた町の西側に位置する吉野地区は陸路ではアクセスできず、孤立してしまう可能性があるため、そうした際に、ドローンを活用して空から物資を届けることを想定し、実証実験行った。(片道飛行 距離約13.4km、約35分)

市街地から吉野地区へドローンによる救援物資配送を実施 ※上図は新十津川町内の飛行ルートをGoogleが提供するGoogle Mapを使用し表示したものです。

ドローン配送された救援物資

東京・虎ノ門からの遠隔操作



ルート②:吉野地区活性化センター⇄吉野駐車公園
次年度に設定を検討している「物流コース」で、使用を想定している飛行ルートとして“初級ルート”、“上級ルート”を実証飛行した。

初級ルート 河川上の飛行を基本とするルート:別途許可承諾などが必要な吉野公園を避け、451号線を横断するルートで横断時は通行の確認が必要となる。
上級ルート 丘上の飛行を基本とするルート:別途許可承諾などが必要な吉野公園を避けて451号線を横断するルートだが、高度変化があるため対地高度の確認を行いながらの飛行となり、ルート上に実際はない高架線があることを想定した高高度での飛行を行って架空の高架線を通行前には一時停止を実施する。(片道飛行 “初級ルート”距離約1.8km、約5分, “上級ルート” 距離約2.1km、約5分)

「物流コース」で使用するルートでのデモンストレーション飛行を実施※上図は新十津川町内の飛行ルートをGoogleが提供するGoogle Mapを使用し表示したものです。



物流専用ドローン AirTruck
AirTruckは、エアロネクストがACSLと共同開発した日本発の量産型物流専用ドローンだ。エアロネクスト独自の機体構造設計技術4D GRAVITYにより安定飛行を実現。荷物を機体の理想重心付近に最適配置し、荷物水平と上入れ下置きの機構で、物流に最適なユーザビリティ、一方向前進特化・長距離飛行に必要な空力特性を備えた物流用途に特化し開発した「より速く より遠く より安定した」物流専用機だ。日本では各地の実装地域や実証実験で飛行しトップクラスの飛行実績をもち、海外ではモンゴルで標高1,300m、外気温-15℃という環境下の飛行実績をもつ(2023年11月)。最大飛行距離20km、ペイロード(最大可搬重量)5kg。

■【動画】4D Gravity 機体構造


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