センスやスキルだけでなく、思考力や分析力、リサーチ力、課題解決力などさまざまな能力が求められるデザイナー。では、第一線で活躍するデザイナーたちは、新たなスキルや知識を身につけるために、どんなことを大切にしているのでしょうか。今回は、各社で活躍する4名のデザイナーにお話を伺います。

今回教えてくれるのは……

  • 株式会社コネル アディトさん
  • 株式会社TABIPPO 小井詰さちよさん
  • 株式会社Wrusty 原 一仁さん
  • 株式会社Greenspoon ちゃんあかさん

株式会社コネル アディトさん
「現場の温度を感じられるフィールドワークを大切にしています」

アディトさん

2013年大学卒業後、日本で仕事をするために京都造形大学にある日本語学校で日本語を学ぶ。2015年にNOSIGNERに入社し、ブランディング、プリント、プロダクトデザインの仕事を担当。メインの作品に「東京防災」「Midori XS」「PLOTTER」。2019年にアプリ開発とフリーランスの仕事に挑戦。2018年からは東京都立大学に非常勤講師として勤務する。2021年より株式会社コネルのDesign Specialistに。幅広くデジタルとフィジカルのデザインに対応している。座右の銘は、「Work Hard,Play Hard」(=良く働き、良く遊ぶ)。

――デザイナーとして大切にしているポリシーやモットーを教えてください。

アディトさん

「自分ができないことを無理にやらないこと」と、「自分のスキルを最大限に生かしてものを作る」ことです。クライアントの期待を超えるのはもちろん良いことですが、最初からその目標を高く設定しすぎると、楽しいはずのプロジェクト自体が辛くなってパフォーマンスも落ちて良いアウトプットが出せなくなるだから、最初から無理に150点のクオリティーを目指して70点の結果になるより、最初に85点のクオリティーを目指して最後に余ってる時間や余力で100点や120点に攻めるやり方の方が、自分としては楽しいです。

――デザインを新たに学んだり習得したりするために、どんなことを行っていますか?

アディトさん

良いデザインを作るためには、ある程度のリファレンスが大事かと思います。デザインの展示会や作品集はたまに見ていますが、良い空間とサービスのカフェやホテルに行ったり、デパートやセレクトショップを見に行ったりと、個人的にはフィールドワークの方が好きです。基本的にデザインは誰かのために作るものなので、そういった「現場」に行ったら多くのトレンドやヒントなど、これから作るデザインに参考にできることが肌で感じられ、より早いスピードで学ぶことができると思っています。

――その方法は具体的にどんなことに役立ちましたか?

アディトさん

去年から掛川にある板金会社のブランディングの仕事をしています。ロゴをはじめ、空間やWEBサイト、印刷ベースのツールなどさまざまなものをデザインしています。「板金」「ものづくり」というイメージをわかりやすくカッコよく見せるために日々考えて悩んでいますが、結局ほとんどの答えのヒントはその工場の中にありました。何回か工場の中でフィールドワークし、写真を撮ったり、資料を見たり、参考にできるものをデザインに落とし込んで、クライアントと作る側の自分がお互いに納得できるアウトプットを提案することができました。

――他社のデザインで、「これはやられた!」と思うものはありますか?

アディトさん

自分の領域と少し離れますが、Teenage Engineering というスウェーデンの電気楽器メーカーのプロダクトによく刺激を受けています。

――どの辺に感銘を受けたのでしょうか?

アディトさん

プロダクトだけではなく、UIのデザイン、UX(体験)、発信の方法、全てが徹底的に考えられている点です。

さらに、各プロダクトにもちゃんと遊び心もあり、音楽をやってない自分が楽器を欲しくなるぐらい面白そうで、良い商品をいつも出しています。普段他のところで作れない、出せないものをちゃんと世の中に売り出せるその会社の姿勢は、やっぱりカッコいいです。

株式会社コネル

「妄想と具現」をテーマに、30職種を超えるクリエイター・アーティストが集まる越境型クリエイティブ集団。スキルの越境をカルチャーとし、ブランドデザイン・研究開発・アート制作を越境してプロジェクトを推進。日本橋・金沢・下北沢の拠点を中心に、多様な人種が混ざり合いながら、未来体験の実装を続けている。主な作品に、脳波買取センター《BWTC》(2022)、パナソニックの共同研究開発組織「Aug Lab」にて共作した《ゆらぎかべ – TOU》(KYOTO STEAM 2020 国際アートコンペティション スタートアップ展)や、フードテック・プロジェクト OPEN MEALS(オープンミールズ)と共作した《サイバー和菓子》(Media Ambition Tokyo 2020)など。

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株式会社TABIPPO 小井詰さちよさん
「新しくリリースされたサービスやツールは試してみます」

小井詰さちよさん

旅が好きなチリ育ちの日本人。株式会社TABIPPOのデザイナー8年目。社内のクリエイティブ全般を担当し、WEBデザインからロゴなどのグラフィックも制作。ブランドの立ち上げ、書籍や雑貨の企画制作、SNSのディレクションも担当したことがあり、今は会社のブランドづくりに注力中。座右の銘は、「Life’s too short to live someone else’s.」

――デザイナーとして大切にしているポリシーやモットーを教えてください。

小井詰さん

依頼側の重視していること、会社やブランドの想いなどは意識するようにしています。その時に制作するクリエイティブだけでなく、作ったものが今まで制作した他のデザインと並んだ時に違和感がないか、ブランドイメージと違うものになってしまわないかを気をつけています。

そして同時に「自分の好き」も持つようにしています。自分が好きなテイストがあることで、デザインへの想いや意欲もわき、日常でもアンテナが高くなり好奇心へと繋がることも大切にしています。

――デザインを新たに学んだり習得したりするために、どんなことを行っていますか?

小井詰さん

新しくリリースされたサービスやツールは一度触って試します。そこから良さそうだなと思うものは、実際にアウトプットするまでを大事にしています。なんとなく使ってみるだけでなく、実際に形にすることで見えてくるものも多くあります。

例えば、WEB制作をノーコードでできる「STUDIO」を使い始めた時は、一度自分でお試しサイトを作ってみたり、プライベートで友達のブランドのサイトを制作しました。実践して完成まで行うので、そのサービスの特徴がより理解でき、デザイン面でも制作の幅も広がります。新たに学ぶことで自分が制作したり提案できる幅が広がり、選択肢を増やしていけるので、デザインをする上で伝えたいものはどの表現がベストなのかを考えることができるのは、強みになっていきます。

――その方法は具体的にどんなことに役立ちましたか?

小井詰さん

「STUDIO」のスキルが身についたことで、社内の仕事にも役立ちました。会社のメンバーで熊本取材へ行った際に、記事にまとめるだけでなく「STUDIO」でWEBサイトも制作。記事だけであれば、デザイン面としてはサムネイル用にバナー制作だけになるところを、サイトに落とし込むことでよりリッチに見せたり、ちょうどメンバー募集をしていたタイミングでもあったので、採用にも繋げられる取り組みにできました。

小井詰さん

一度やったことがあるものだと、実例があるのでスムーズに提案もできたり、自分としてもレベルアップします。手を動かしてデザインするだけではなく、全体像を考えてディレクションをすることも増えてきました。

――他社のデザイナーで尊敬している人はいますか?

小井詰さん

デザイナーのタカヤ・オオタさんのお仕事は、会社の想いに常に寄り添っていていつも素敵だなと思います。

――どの辺に心惹かれているのでしょうか?

小井詰さん

数年前ですが、Mr.CHEESECAKEで全体のアートディレクションを担当されていた時のブランドづくりに関してはとくに記憶に残っています。扱っている商品はチーズケーキなのですが、ケーキは主役ではなく、「チーズケーキがもたらす時間」がブランドの魅力であり、デザイン単体ではなくブランドイメージをビジュアルから創り上げていることから生まれる世界観に惹かれました。
またブランド側で制作するものだけでなく、購入した人たちがSNSでどのような写真をアップするかまで、行動に着目しているのも面白かったです。価値を最大化していく力の凄さを感じますね!

株式会社TABIPPO

「旅で世界を、もっと素敵に。」というビジョンを掲げ、「あたらしい旅をつくる」会社。旅を軸に事業を多角展開する。旅の総合WEBメディアの運営やSNSでの発信、20〜30代のミレニアルズ向けにスクールやイベントを企画・運営、地域・観光地におけるマーケティングをプロデュースなど行う。