●2.米国株:米地銀の経営破綻で米金融システムにヒビが入る、SVBは「炭鉱のカナリヤ」
米FRBは金融システムを保護も、インフレ退治のため利上げ継続
1)米FRBは判断を迫られる、インフレ退治か?金融安定化で様子見か?
・銀行破綻が相次ぐ
シリコンバレー銀行(SVB) ハイテクやヘルスケア関連の新興企業との取引。2年間で預金額を3倍超に伸ばし、債券投資してきた。
シルバーゲート・キャピタル 暗号資産(仮想通貨)などを扱うが会社清算発表。
シグネチャー銀行 暗号資産(仮想通貨)を扱う企業と取引。
・FRBはFOMC(次回開催3/23~24)で、利上げ+0.5%どころか+0.25%か?はたまた、利上げ休止か? 判断を求められる。
2)SVB破綻は米国債投資の失敗が原因
・SVBは債券投資による運営のため高金利で預金を集めた。しかし、FRBの金利引上げで、債券価格が下落し、含みの債券損失が発生。
・預金者はリスク回避で預金の取付けが集中。
・SVBは預金返還資金を捻出するため、債券を売却し、債券損失が実現損で表面化。
・自己責任である。
・FRBは昨年3月からインフレ退治のため利上げを行なっており、金利上昇から債券価格が下落し、債券投資の損失が出るのは明らかであった。その金利上昇下で債券価格下落するのが目に見えているのに、高金利で預金を集め運用リスクの高い債券投資にのめり込んだのがSVBである。
・SVBは「債券投資の含み損」処理の代表事例の「炭鉱のカナリヤ」になった感がある。
3)米国金利上昇で、米国債券の投資家は「膨大な債券含み損」を抱えている可能性が高い。
・日本政府はじめ日本の保険・銀行・年金基金などは巨額の米国債を保有・運用する。今後、この「債券の含み損」ショックが表面化するリスクがある。同様に、欧州でも金利引上げをしており、「債券の含み損」が膨らんでいるだろう。
・スウェーデン最大の年金運用機関アレクタは、破綻した3行に対して21億ドル(約2,820億円)の株式投資をしたが、「間違いだった」と表明している。
4)バイデン大統領やイエレン財務長官、FRBが破綻銀行から不透明感が波及して金融危機に陥らないように全預金の保護を発表した。
5)しかし、クレディ・スイスの財務悪化が追い打ちをかけた。
・FRBは新型コロナからの回復のため、5兆ドルもの資金を市場に供給をした。この過剰流動性のおかげで、景気回復はできたが、市場の意識は「過剰流動性が常態」となってしまった。
・FRBは、正常化に向かったが、▲1兆ドルしか市場から資金回収できていない。また、FRBはインフレ退治のため「金利引上げ」をした。これで、「金利上昇⇒債券価格下落」を引き起こした。
6)米FRBの金融政策に新しい局面が追加
・米国経済
・物価状況
・信用不安といった金融局面
7)米FRBは、金融セクターにこれ以上の動揺を与えず、依然として高いインフレを落着かせるために、難しい舵取りを迫られる。
8)FRBは3月FOMCで利上げ「どうする!」
・パウエルFRB議長は最近の発言で3月0.50%の利上げ可能性を示唆した。ところが、銀行の経営破綻が相次ぎ、金融システムに動揺が走り、市場では3月利上げ0%の停止もしくは利下げの声まで出てきた。
・バイデン大統領はじめ金融当局の「預金保護」宣言で、市場は落着きつつある。その結果、2月消費者物価指数、特にコアCPIの予想を上回る伸び率から3月の0.25%利上げ予想し、国債利回りもそれを織込むように上昇に転換している。
・市場の利上げの読みの変遷
3月FOMC 0.50%利上げ ⇒ 利上げ停止・利下げ ⇒ 0.25%利上げ
9)2銀行の経営破綻を背景に、リスク資金が比較的安全な債券市場に流れ込んだため、国債利回りは急低下した。
・だが、バイデン大統領の発言や金融当局の素早い「預金保護」宣言で、金融市場は落着をみせた。結果、3/14は、米株式市場は株価大幅上昇となり、金利は上げに転じた。
・ところが、3/15にクレディ・スイスの経営不安が浮上し、株式は売られ・債券に資金流入して「国債金利は低下」した。
3/1 3/10 3/13 3/14 3/15
2年債利回り 4.876% 4.586 3.976 4.250 3.892
10年債利回り 3.993% 3.699 3.573 3.689 3.420
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