中性子星が合体してブラック ホールを形成している状況の数値解析シミュレーション。(c) L. Rezolla (AEI) & M. Koppitz (AEI & Zuse-Institut Berlin)(画像: プリンストンプラズマ物理研究所の発表資料より)

 重力波は、アインシュタインが1916年にその存在を予言し、およそ100年後の2015年に、初めて捉えられた。その本質についての研究は実はまだ未解明の部分が多い。プリンストンプラズマ物理研究所は、重力波の本質に迫ることが可能になるかもしれない方程式を考案したと発表した。

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 これによれば、宇宙の始まりの際に発せられた重力波が物質や放射線に及ぼした影響を調べれば、宇宙の始まりの状況を間接的に知ることができるという。同研究所では、プラズマの中を移動していく電波の状況が、物質の中を伝わっていく重力波の状況とよく似ていることを解明し、このことを利用して重力波を理論的に記述可能な方程式を立案した。

 この方程式を用いれば、重力波が物質を通じて伝わると、物質の密度に応じて発せられる光の特性が明らかになる。この特性を調べることによって、宇宙のあらゆる場所にある星の特性を知ることが可能になるという。

 例えば、中性子星とブラックホールの衝突が起こっている連星系の発見や、中性子星の残骸の発見などにつながる可能性があるのだ。

 重力波は時空のゆがみによって生じると説明されているが、一般人にはなかなか理解できない概念だ。また非常に弱い波であるため、例えばブラックホール同士が衝突している状況など、とてつもなく大きな時空のゆがみが生じていないと現在の人類のテクノロジーではキャッチできない。

 時空のゆがみを分かりやすく説明すれば、空間における位置の違いによって時間の進み方が異なり、その度合いが大きい場合に時空のゆがみが大きいことになるのだ。重力はこの位置による時間の進み方の違いによって生じている。

 私たちが地球上で体感している重力も、時空のゆがみ、つまり重力波の影響で生じている。これを記述する方程式があれば、たとえ現在のテクノロジーでキャッチできない微弱の重力波であっても、その性質を理解することは可能なのだ。