投資信託の「複利効果」を示す“不透明な計算式”を真に受けてはいけないワケ

新NISAがスタートしました。1月10日付日本経済新聞によると、三菱UFJアセットマネジメントが設定・運用する「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」の9日の資金流入額が、1000億円を超えたとのことです。この金額は、昨年12月における月間流入額の推計値である1088億円とほぼ同額であり、新NISAに対する関心度の高さを裏付けるニュースとなりました。

投資を学ぶ時に目にする「複利のマジック」

新NISAを通じて、初めて資産形成に取り組もうと考えている人も多いでしょう。実際に資産形成を始めるにあたり、金融機関の窓口で説明を受けた人もいるでしょうし、お金関連の雑誌、新聞、ネット記事などで、新NISAを利用した資産形成に関して勉強した人もいると思います。

こうした資産形成について学ぶ時、恐らく多くの方が“あるグラフ”を目にされているのではないでしょうか。曲線を描いて右肩上がりに上昇している曲線と、右肩上がりの直線が描かれているグラフです。

これは、両方とも同じ元本、同じ利率、同じ運用期間だけれども、単利で運用した場合と、複利で運用した場合とでは、これだけの差が生じるということを表しています。

具体的に数字を比較すると、利率が年5%で、元本100万円を30年間運用した場合の元利合計金額は、単利運用が250万円で、複利運用が432万1942円になります。両方とも税引前の数字です。

なぜ同じ元本、同じ利率、同じ運用期間でこれだけの差が生じるのか。そこが複利のマジックとも言えます。

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実際、単利と複利はこれだけ違う

どう違うのでしょうか。これはもう単純に計算式を比較すると一目瞭然です。

単利の場合

まず単利の計算について見てみましょう。利率は年5%、元本100万円、運用期間を30年として考えてみたいと思います。

1年目・・・・・・100万円×5%=5万円
2年目・・・・・・100万円×5%=5万円
3年目・・・・・・100万円×5%=5万円
(中略)
30年目・・・・・・100万円×5%=5万円

このように毎年、元本である100万円に5%の利率を掛けたものが利息として得られるのが単利計算です。その結果、30年間で得られる利息は5万円×30年=150万円になり、30年後の元利合計金額は、元本と合わせて250万円になります。

複利の場合

一方、複利はどうなるでしょうか。複利とは、1年間の運用で得られた5万円の利息を元加(元本に加える)することによって、2年目の運用は105万円を元本として、それに5%の利率で計算されます。したがって、

1年目・・・・・・100万円×5%=5万円

ここまでは単利運用と全く同じ計算になるのですが、2年目以降が大きく違ってきます。

2年目・・・・・・(100万円+5万円)×5%=5万2500円
3年目・・・・・・(100万円+5万円+5万2500円)×5%=5万5125円

複利の計算を30年目まで書き連ねると、数字があまりにも多くなるので、ここから先は書きませんが、元加されている分だけ2年目、3年目の利息が、単利計算のそれよりも多くなっていることが分かると思います。これを30年間続けていくと、前述したように元利合計額が、432万1942円になるのです。

そして、この数字を提示して、金融機関で投資信託を販売している人たちは、資産形成の初心者に対して、「ほら、複利効果を利用して長期資産形成をすると、こんなにお金が増えるんですよ」などと、投資信託を長期保有した際の効果を説明するのですが、世間で言われているほどの効果は期待できないと考えた方が良いでしょう。

参考:複利の計算結果

筆者作成