投資上級者こそ「新しいNISA」は“雌鶏投資”で活用せよ!

「NISA」は、2024年1月から非課税保有期間が無期限となり、非課税保有限度額も1800万円に拡大。さらに、主に投資信託への積立投資が用途となる「つみたて投資枠」と、個別株やETF(上場投資信託)への投資が可能な「成長投資枠」を併用できる制度になった。

「これらの特徴を踏まえると、2024年からの『新しいNISA』には“雌鶏(めんどり)投資”がマッチしやすい」と話すのは、ファイナンシャルプランナーの深野康彦さん。“雌鶏投資”と銘打っている投資手法について、教えてもらった。

“雌鶏投資”=高配当株投資で定期的に配当金を得る手法

「“雌鶏投資”とは、高配当株での投資のことです。雌鶏を飼っている人は雌鶏が産む卵を食べ、雌鶏自体は食べないのと同じように、高配当株に投資することで定期的に配当金をもらいながら、株式そのものの成長を待つのが“雌鶏投資”です。ちなみに、2023年に東証がPBR(株価純資産倍率)1倍割れの企業に対して、改善策の開示・実行を要請したことで、株主への利益還元の増加が加速していることもあり、高配当株投資がしやすい環境になりつつあります」(深野さん・以下同)

株式投資はリスクが高く、元本割れする可能性もあるというイメージが強いため、躊躇する人もいるかもしれないが、高配当株を長く保有することで元が取れるという。

「配当金が減配しない銘柄であることが条件にはなりますが、例えば配当利回り4%の株式を25年間保有し続けることで、配当金だけで元が取れる計算になります。株式は元本が保証されないので、不安を感じると思いますが、長く保有することで元本割れのリスクを軽減できるのです」

永久的に非課税で運用し続けられる「新しいNISA」は、“雌鶏投資”との相性もいいといえる。なぜなら、配当金を非課税で受け取れるからだ。

「20~30代であれば、『つみたて投資枠』での積立投資に専念する方法がいいといえますが、年齢や役職が上がり、ある程度の資産を形成できている状態であれば、『成長投資枠』で“雌鶏投資”をして、得られた配当金を生活費や日々の楽しみのためのお金として使うのもいいでしょう。また、『新しいNISA』は、資産を売却した枠が翌年に復活するという仕組みになっているので、株価が配当金20年分くらい上昇するようなことがあれば、売却して利益確定するのもありだと思います。翌年以降、株価が下がったときに買い戻したり、別の銘柄を買ったりするという活用も考えられます」

(広告の後にも続きます)

投資を行う前に「日経累進高配当株指数」をチェック

資産に余裕があり、投資経験がそれなりにある人にとっては、高配当株投資は魅力的だといえそうだ。では、銘柄はどのように選ぶといいだろうか。

「2023年6月に『日経累進高配当株指数』が公表されました。この指数は、過去10年間、一度も減配していない企業のうち、上位30銘柄を対象に算出しているものです。今後も絶対に配当金が減ることはないとは言えませんが、減配のリスクが低い銘柄が厳選されているので、この指数に組み入れられている銘柄から選ぶことで、ある程度の安心感を得られるでしょう。毎年、組み入れられる30銘柄が見直されるところも特徴です」

「日経累進高配当株指数」から銘柄を選ぶ際には、深野さんが冒頭で触れていた「PBR1倍割れ」がキーワードになるという。

「PBRが1倍を割っている銘柄があったら、その銘柄を選ぶといいでしょう。PBR1倍割れの状態で高配当ということは、今後PBRが改善していけば、さらに状態が良くなるという可能性を秘めているからです。これから社会全体でPBRの改善が進んでいくでしょうから、いまのうちに1倍割れの銘柄を購入しておくと、将来の資産が大きくなる可能性が高いと考えられます」

ここまで個別株での“雌鶏投資”の手法を聞いてきたが、投資経験が少ない人にとってはハードルが高いだろう。「そう感じる場合には、ETF(上場投資信託)という選択肢もある」と、深野さんは話す。

「高配当株で構成されたETFに投資することでも、“雌鶏投資”は可能です。『東証マネ部!』の『ETF・ETN銘柄検索』のページで国内株ETFに絞って検索し、『高配当』というキーワードがついた銘柄や分配金利回りの高い銘柄を探してみましょう。『新しいNISA』の成長投資枠でもETFでの投資は行えますし、定期的に分配金が支払われます」

投資経験が少なくても、ETFの特徴を押さえると購入しやすいという。

「ETFは、銘柄によって異なりますが、1口から売買できる銘柄も多いので、個別株とは異なり少ない金額で投資できます。仮に10口買うとしても、一括で10口買うのではなく、まずは5口買って様子を見るということができます。売却する際も、半分は手元に残して半分だけ売るということもしやすいでしょう。柔軟な投資ができるところが、ETFの魅力といえます」