1975年の発売以来、基幹コーヒーブランドとして展開してきた「ジョージア」を今春、刷新。一方で、ヨーロッパNo.1※1ブランドの「コスタコーヒー」を日本市場に定着させるなど、コーヒー市場の活性化に取り組むコカ・コーラシステム(東京都)。両ブランドを担当する日本コカ・コーラ副社長 トータルコーヒーエンタープライズの金澤博史氏に直近の取り組みと今後の展望について聞いた。

※1:店舗数ベース(アレグラ社2021年ワールドコーヒーポータル調査)

アフターコロナも好調のPETボトルコーヒー

──コロナ禍を経て、消費者の購買行動にどんな変化がありましたか。


金澤博史(かなざわ・ひろし)

2005年、日本コカ・コーラ株式会社に入社。

企画部門責任者、ゼネラルマネージャーを歴任。

17年、ベトナム、カンボジアのコカ・コーラオペレーション責任者として赴任。

20 年、日本コカ・コーラ副社長兼コカ・コーラ ボトラーズジャパン株式会社マーケティング企画部門責任者に。

23年7月より日本コカ・コーラで副社長兼トータルコーヒーエンタープライズを統括

金澤  コロナ禍では、外出を控えざるを得ない状況が続くなか、身近な食に対してちょっとした贅沢をする「プチ贅沢」志向が見られました。しかし、アフターコロナの今は積極的に外出し、そこで消費するようになっています。今後は、コロナ禍前に戻りつつあるものと、コロナ禍で新たに定着した家庭内需要などが共存していくとみています。

 昨今の円安や物価高を背景に節約志向が高まっていますが、消費者は自分にとって本当に価値のあるものやこだわりには出費を惜しみません。結果として、節約とプチ贅沢の二極化にいっそう拍車がかかっています。

──そうしたなか、コーヒー市場の動向はどうですか。

金澤  全日本コーヒー協会によれば、2022年の日本のコーヒー消費量は前年比2.2%増の43万2875トン※2でした。コロナ禍でカフェや喫茶店での飲用機会が減り、消費量は減少しましたが、家庭用コーヒー市場は活性化しました。現在、人流が回復し、外食でのコーヒー需要が増えたことで、コーヒー市場は拡大傾向にあります。なかでも、コーヒー飲料カテゴリーにおいてはPETボトルコーヒーが好調です。止渇ニーズと値ごろ感を満たし、ますます高まりを見せています。

※2:全日本コーヒー協会 https://coffee.ajca.or.jp/pdf/data-jukyu202309.pdf

──PETボトルコーヒーといえば、日本コカ・コーラは「ジョージア」と「コスタコーヒー」の2つのブランドがあります。

金澤  これら2つのブランドは、ターゲットとブランドスタンスの異なるデュアルブランド戦略によってすみ分けています。1975年に日本で誕生した「ジョージア」はマスターブランドとして幅広い性年代層へ展開し、ヨーロッパにルーツをもつ「コスタコーヒー」はマスプレミアムコーヒーブランドとして育成していく考えです。

(広告の後にも続きます)

「ジョージア」刷新で若年層と女性層を獲得

──今春、「ジョージア」は史上最大規模のブランド刷新を行いました。そのねらいは?

金澤  これまで「ジョージア」は、働くすべての人の相棒をコンセプトに、日本のコーヒーカルチャー形成の一端を担ってきました。しかし、そのコンセプトは今の時代にふさわしいものなのか。もしそうでないなら、どう変わるべきなのかという問題提起からすべては始まりました。

 消費者や社会のインサイトにあらためて向き合い、調査とディスカッションを丁寧に重ねるなかで見えてきたのは、“自分らしさ”への渇望です。社会のレールに沿った生き方をすべきと思いながらも、実はもっと自分自身がやりたいことをやってみたい。けれど、実際にはそれがやりづらい世の中になっているのではないか。

 そうした生きづらさを抱えている人に寄り添うブランドでありたい。そんな思いから、“自分らしさ目覚める、ジョージア”をコンセプトにブランドロゴから、製品戦略、コミュニケーション戦略すべてを刷新しました。

 「ジョージア」を飲むすべての人に、自分らしく生きることの素晴らしさを伝えていこうと、ブランドの再出発を図ったのです。

 新たな「ジョージア」の顔となるセレブリティにアーティストの米津玄師さんを起用し、テレビCMをはじめ大々的なプロモーションを実施するほか、AIイラストメーカーで「毎日って、けっこうドラマだ。」のキーメッセージを実感してもらい、新「ジョージア」の定着に向けた施策を展開しました。

──ブランド刷新の成果はいかがですか。

金澤  ブランドコンセプトはもちろんのこと、ブランドロゴからパッケージのデザイン、製品ラインアップ、コミュニケーションに至るまですべてを刷新して展開したことで、あらゆる世代のお客さまが「ジョージア」に再び目を向けてくださり、購入につながっています。なかでも、若年層と女性層の構成比がとくに伸びたのは、私たちのねらいどおりの結果であり、手応えを感じています。


23年10月、日本初のイートインスタイルの店舗として「コスタコーヒーCURA銀座店」がオープンした(写真はオープン時の金澤氏によるブランド戦略説明の一コマ)

次のページ 多角的なブランド展開で「コスタコーヒー」が定着
  • 1
  • 2

提供元:DCSオンライン