突然死警報を冬場に発令!?大学と警察が「入浴時警戒情報」システムの試み

 冬季は浴室での突然死(入浴死)が発生しやすい季節だ。

 入浴死とは、入浴中やその前後に生じる予期せぬ死亡を指す。独特の入浴習慣の影響か、住宅事情の故か、日本の入浴死件数は世界でも突出しており、社会問題化している。

 それなら、夏の「熱中症警戒アラート」と同様に、冬の「入浴死警戒警報」を出せないだろうか。

 鹿児島大学法医学分野の研究グループは、入浴時警戒警報の開発を目指して鹿児島県警察本部の協力のもと、2006~19年の間に鹿児島県内で発生した入浴死検視全例の背景を調査した。

 同期間内の入浴死件数は、2689件(男性1375件)で、同じ期間の交通事故死件数の約2.5倍に達する。9割が65歳以上の高齢者で、自宅の浴槽内での死亡がほとんどだった。また、入浴前に酒を飲んでいたケースは、115件、4.3%にすぎなかった。

 季節との関連では、発生件数の半数が12~2月の3カ月間に集中しており、最高気温、最低気温、および平均気温が低いほど、1日のなかでの寒暖差が大きいほど、入浴死が増加すると判明している。

 さらに、冬季に絞って県北端の伊佐市から南部の沖永良部島まで、南北に長い鹿児島県内を各警察署が管轄する19カ所にわけ、入浴死発生率が有意に高くなる気温条件を調査した結果、入浴死が起きやすい危険な気温として、(1)最高気温9.0~19.0度(中央値13.5度)、(2)最低気温0.0~13.0度(同3.0度)、(3)日内気温差5.5~10.5度(同8.8度)が特定された。

 研究グループは、この結果をもとに「入浴時警戒情報」システムを開発。(1)~(3)の全てが危険域の場合は「危険」、2つなら「警戒」、1つ以下は「注意」として、この11月1日から同分野のHP内で毎日更新、公開している。

 このアラートで実際に入浴死の発生件数を抑制できると証明されれば、各地独自の危険気温調査と警報開発につながりそうだ。

 数年後には、各地の気象情報に「入浴死アラート」コーナーが登場するかもしれない。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)