徳島の秘境クライミングスポット「潮騒エクスタシー」で絶景ランチ

 【拝啓、徳島より・24】冬が終わり、日差しの暖かさを感じたら田舎暮らしの醍醐味であるアウトドアライフの再開です。向かったのは徳島県のロッククライミングの名スポット、「潮騒エクスタシー」。インパクトの強い名前の通り、ポイントへ向かう道はとってもエキサイティング。ロープをつたい、細い獣道を横歩きで進んだ先に広がる断崖絶壁と大海原の絶景をご紹介します。

●断崖絶壁が続く海沿いの絶景道



 徳島県南部の海沿いは「海崖(かいがい)」と呼ばれる断崖絶壁が続く独特の地形をしています。崖の高さは高いところで200mほど。数キロにわたって海に突き出た断崖絶壁が続く景観は迫力満点です。

 今回の目的地である潮騒エクスタシーへと向かう道は、初めは歩きやすく整備されていますが、後半はほぼ獣道。元々は地元の釣り人が崖下の釣りスポットに向かうために整備した通路だそうで、ところどころ“手作り感”が味わえるのも魅力です。

(広告の後にも続きます)

●いざ、潮騒エクスタシーへ!



 潮騒エクスタシーに向かう道は、歩きやすい階段状のトレッキングルートから始まります。途中で道が分かれるのですが、阿瀬比ノ鼻灯台(あせびのはなとうだい)という、こちらもインパクトの強い名前の灯台に向かってまずは登っていきます。

 シダ植物が茂る森の中をしばらく進むと、太平洋を一望できる休憩スポットに到着。ここからが潮騒エクスタシーのトレッキングルート始まりです。道なき道を進んでいきます。

 気をつけないと足を踏み外しそうな断崖絶壁をゆっくり進みます。木々の隙間から漏れる太陽の光を受けて、緑が鮮やかに輝いていました。人里からまだ15分も歩いていないのに既に人間世界から隔絶された雰囲気です。

 道はところどころ崩れていたり、大きく穴が空いていたり。少しでも油断すると木の根や石に足を取られてしまいます。歩きやすいように板やロープがかけてあるのですが、文字通り「人が一人通れるかどうか」の強度しかありません。だんだんとアスレチック要素が濃くなっていきました。

 「これは道と呼べるのか?」と豪快に崩れた部分もありました。右は海に向かってストンと落ちています。足を滑らせたらアウト。二重、三重にかかったロープを握って慎重に渡っていきます。

 この道を作ったという釣り人の方々は、釣竿や網を持った状態で、果たしてこの道を無事に通過することができるものなんでしょうか。謎です。

 崖下を覗きながら恐る恐る歩く私の気持ちを察してか、渡り切った先には「ご安全に!」の立て札が。整備してくれている人の気持ちを感じてほっこりしました。

 ほぼ崖崩れの状態の道を抜けると、次はゴツゴツとした大きな岩が突き出たエリアに入ります。岩に大きな鉄の杭が打ってあり、階段状になっている箇所も多くありました。

 人間の力ではびくともしないほどしっかり固定されているのですが、直径2cmほどの細長い棒に自分の体重を預けるのはやっぱり不安。しかも踏み外せば崖下まで真っ逆さまです。ある意味、ジェットコースターよりもヒヤリ気分が味わえるアクティビティかもしれません。

 岩に登ったり、ロープをつたったりしながら道なき道を進むこと約30分。やっと木々の間からポイントが見えてきました。崖に打ち付けるザザーンという音が、より大きく聞こえるようになったのこともゴールの近さを感じさせてくれます。

 ふと足元を見ると、青々とした苔やシダ植物がたくさん。多彩な植生を楽しめるのも、潮騒エクスタシー・トレッキングの醍醐味です。この頃になるとゆっくり慎重に進みながら、景色を楽しむ余裕が出てきました。

 最後の難関は、大きな岩場を降りるハシゴ。あきらかに手作業で固定されてたハシゴは、なんとも心もとないですが、気合いと勢いで乗り切ります。

 ハシゴをくだり、左右が崖になった細い道を歩いて行くともうゴールは目の前です。目の前が開けて、太平洋がこんにちは。

 鬱蒼とした森の景色が一点、見渡す限り岩と海の荒々しい風景に変わります。岩場の隙間から生えているのは松の木。深い緑と、海と空の青のコントラストが眩しいほどでした。

 遠くには、私が住んでいる町と家の近所の浜が小さく見えました。歩いていた時間は50分ほどですが、ずいぶん遠くまできた気分。「海亀が産卵にくる浜」としても知られる浜を遠くに眺めながら、しばらくぼーっと景色を眺めていました。時間がゆっくりゆっくり流れていくのを感じられます。