新しい技術を使った新世代のポラロイド『Polaroid I-2』

今回復活した、『Polaroid I-2』は、単純に昔のSX-70を焼き直したものではない。

旧来のポラロイドのフィルムパックを使いながら、光学系、操作系などは新設計。

LiDARを使ったオートフォーカスに加え、『オート』『絞り優先』『シャッタースピード優先』『マニュアル』『セルフタイマー』『多重露光』の6つのモードを装備。より作り込んだ撮影が可能になっている。


ポラロイドI-2を販売するVISTAL VISION株式会社の大石哲也代表。

光学系は、元オリンパスの技術者がデザイン。ガラスではなくプラスチックレンズが使われている。

ボディや電子回路は台湾で開発。

構造的には、撮影に使うレンズと違うところから対象を見るレンジファインダー式だが、ファインダーの下に、撮影モードや、シャッタースピード、絞り値、EV、残りフィルム枚数、バッテリー残量などが表示されるようになっている。

ほぼ同様のデータは外部に用意される液晶にも表示される。

また、iPhoneと連係させることで、より細かい設定を行うこともできるし、リモートシャッターとしても使えるとのこと。

発表会のために、来日したPolaroid社のSenior Product ManagerのGraham Merrifieldさんは、細かい機能を解説しながら、『本作を日本でローンチできることを嬉しく思う』と語った。

同氏と一緒に、発表会のあった原宿の街中で数カット撮影する機会に恵まれたが、操作性は良好。

写りは当然のことながら、エモーショナルなポラロイドならではの質感だが、絞りを変えたり、シャッタースピードを変えたりできることで、クリエイティブの幅はとても大きくなっている。iPhoneやデジタルカメラと違って、1カットにかかるコストも大きいから(現在のフィルム価格からすると、1カット300円前後)、気持ちを込めて、よりすぐりの1カットを撮ろうとしてしまう。

そういった気持ちになるのもアナログカメラならではだ。

撮影した写真は、『Polaroid Originals』のアプリでスキャンし、さらに加工を施したり、SNSに投稿したりもできる。

フィルムは、現在発売されているi-Type、600、SX-70のいずれも使用可能。

ちなみにi-TypeはバッテリーなしのISO 640、600がバッテリー付きのISO 640、SX-70がバッテリー付きのISO 160となっている。古いタイプのポラロイドカメラは本体にバッテリーを内蔵しておらず、フィルムパックの中の電源で動作する仕組みだったので、バッテリー付きのフィルムが存在するワケだが、今回の『Polaroid I-2』は当然のことながら、バッテリーを内蔵しているので、フィルムパックのバッテリーは利用しない。

ただ、互換性はあるし、ISO 160で撮りたいのであれば、SX-70用のフィルムを使うことはできるというワケだ。

また、フィルムパックにはモノクロや、特殊な色設定のものが用意されたり、黒やメタリック、特殊な色のフチや、バスキアなどのコラボモデルもあり、これらを選ぶことでフレームのように活用することもできる。また、コレクション的な楽しみもある。

詳しい価格は、クラウドファンディングサイトをご覧いただきたいが、昨今の厳しい為替相場の中、10万円を切る価格設定には大変な苦労があり、おそらく世界でいちばん安く『Polaroid I-2』を買える国であろうとのこと。

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新しい『より作り込んだポラロイド写真』を撮影可能

今の若者にしてみると、『シャッターを押すたびにお金がかかる』というのも、『1パックでたった8枚しか撮れない』というのも新鮮だろうし、この独特のエモーショナルな写りも魅力的だろう。それをアプリでスキャンして、インスタに投稿するとなってくると、なんだか、いろんな因果が何周も回ってしまっていて、古い時代の人間としては何が何やら分からない。

しかし、『撮ったらすぐ物理的な写真を楽しめる』というのはポラロイドの変わらぬ魅力だし、マニュアル操作によって『より作り込んだポラロイド写真』というユニークな写真が楽しめるのは『Polaroid I-2』ならではの楽しみだ。

かなりハイコンテクストだが、2024年の最新のポラロイド写真として、面白いカメラが登場したといえるだろう。

(村上タクタ)