新時代のポラロイドカメラ『Polaroid I-2』が、2024年4月24日12時からクラウドファンディング『GREEN FUNDING』でプロジェクトをスタートさせる。一度はブランドとして消え去ることになりそうだったポラロイドだが、見事復活。今回の『Polaroid I-2』はLiDARを使ったオートフォーカス、絞り優先など6つのモードを持つ。クラファン開始から48時間は、フィルムセットで34%オフの最安リターン価格9万6611円で提供される。

現在ティザーサイト公開中。販売サイトの公開は4月24日12時。まずは、ティザーサイトをフォローして待機したい。

Polaroid I-2

https://greenfunding.jp/portals/pages/PolaroidI-2_8193

『すぐ見られる』楽しみと、その衰退

みなさんは、『ポラロイド』というとどういう印象をお持ちだろうか?

筆者は、ちょっと異質で、’90年代初頭に雑誌の仕事を始めた頃、プロカメラマンがスタジオで、HASSELBLADやMamiyaといった、中判カメラで、4×5や、6×6のフイルムで撮影する際に、ライティングや露出を確認するためにポラロイドを使っていたのが原体験だ(当時のカメラマンに聞いてみると、富士フイルム製のインスタントフィルムもあった模様。当時は『フジのポラ』と、よくわからない通称になっていたそう)。カメラマンがそれらのカメラでポラを切り、我々編集がOKを出して、はじめてフィルムを入れて本番撮影に入る。もっとも、当時は駆け出しの編集部員である筆者より、巨匠であるカメラマンの方々の方がよっぽど偉かったから、OKを出しているより、出さされているという感の方が強かったが、まぁともあれ、懐かしい思い出ではある。

というワケで、筆者の印象は少々ズレているのだが、多くの人にとっては、シャッターを押したらすぐに『ジーッ』という音がして、撮影済みのフィルムが出てきて、しばらくしたら写真が浮かび上がってくるという魔法のようなカメラなのではないだろうか?

筆者の子ども時代(’70年代)にも、たしか父が、仕事(彫刻家だったので、作品の撮影に使っていたのだと思う)で使っているものを家に持って帰って来て、我々のことを撮ってくれたような気がするのだが、当時なかなかポラロイドのフィルムは高価だったようで、我々家族は最初の数回しか撮影された記憶がない。

ポラロイドのブランドヒストリーによると、1943年Edwin Landの娘の「どうして撮った写真はすぐに見られないの?」という問いがきっかけで開発されたらしい。インスタントフォトグラフィのスタイルを決定的にするSX-70の登場は’70年代だということだから、日本にもその後すぐに入ってきたのだろう。

’70〜90年代には、アンディ・ウォーホール、デビッド・ホックニー、キース・へリングというポップアートのアイコンによって、『撮影したらすぐに見られる』『高画質ではないが、印象的なコントラストの高い作品が得られる』という点が評価され、多用されたことは記憶に新しい(といっても、それが30〜40年前なわけだから、自分の年齢を痛感するが)。

そんなポラロイドだが、2000年代に入ってデジタルカメラの普及とともに急激に衰退する。

『撮影した映像がすぐに見られる』というポジションをデジタルカメラに奪われたからだ。

我々がメディアの仕事に使うカメラは、2001〜2005年頃にデジタルへと移り変わっていった。それと同じくして、ポラロイドは衰退していったというわけだ。

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『The Impossible Project』を経ての復活

しかし、『高画質ではなくても、エモーショナルな写真を撮りたい』……という気持ちは思わぬものに引き継がれる。

2007年にiPhoneが発売され、その上で動作するアプリとして開発された『Instagram』というアプリだ。

今や、『インスタ』『映え』などというワードとして我々の生活に馴染んでいるこのサービスは、当初、ポラロイドカメラを模したアイコンを採用していた。初期は正方形の写真しか投稿できなかったのも、階調性の乏しい少しセピア色のハイコントラストな画像に加工するフィルターが用意されたのもポラロイドを模してのことだった。

その後のInstagramの隆盛はご存知の通り。

ポラロイド社自体は、デジタルカメラの普及による急速な市場縮小に対応できず、2001年に経営破綻。

しかし、有志ファンの活動『The Impossible Project』により、オランダのポラロイド工場が救われ、ポラロイドカメラのためのフィルム製造は続けられた。これにより、従来製造されたポラロイドカメラはかろうじて使用し続けることができた。

そして、2017年、同社は『Polaroid Original』として再出発。2023年にはロゴもリニューアルされ、今回の『Polaroid I-2 Instant Camera』の開発へと繋がった。

もちろん、みなさんお分かりのとおり、今やアナログのエモーショナルな写真は大きな市場となっている。『ポラロイド復活』の機は熟したといえるだろう。