■光輪が発生するメカニズムは不明

地球では光輪の発生は珍しく、そのうえ短時間で終わってしまいます。CHEOPSによるWASP-76bの観測期間は短いため、高い頻度で光輪を観測するには、光輪が発生する大気条件が長期間維持されているか、あるいは高頻度で揃っている必要があります。しかし、WASP-76bで光輪が発生するメカニズムの詳細はほとんど判明していません。

地球の光輪は大気中の水滴によって発生します。鉄も蒸発するWASP-76bの大気中に水滴があるとは考えられませんが、前述のように金属鉄が雨として降っているとすれば、水滴ならぬ “鉄滴” が光輪の発生に関与している可能性があります。ただし、高温のWASP-76bではもっと複雑な大気化学現象が想定されるため、Demangeon氏らはそれほど単純ではないと考えています。高温で蒸発する物質(※4)がいくつか候補として挙げられてますが、今のところどれが正しいのかはわかりません。

また、CHEOPSの観測データの解釈について、光輪以外で説明できる可能性も残されています。WASP-76bで光輪が発生しているかどうかを確定するためには、より多くの観測結果が必要です。WASP-76bが真の意味で光輪の発生が確認された初の太陽系外惑星となるか、それとも否定されるのかがはっきりするまでには、もう少し時間がかかるでしょう。

※4…金属鉄の他に、二酸化チタン(TiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、チタン酸カルシウム(CaTiO3)、硫化鉄(FeS)が候補に挙げられています。

 

Source

Monika Lendl & David Ehrenreich. “CHEOPS détecte un «arc-en-ciel» sur une exoplanète”.(Université de Genève)
O. D. S. Demangeon, et al. “Asymmetry in the atmosphere of the ultra-hot Jupiter WASP-76 b”. (Astronomy & Astrophysics)
W. J. Markiewicz, et al. “Glory on Venus cloud tops and the unknown UV absorber”. (Icarus)

文/彩恵りり