■I.米国株式市場

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●1.NYダウの推移

 1)4/1、NYダウ▲240ドル安、39,566ドル(日経新聞より抜粋
  ・NYダウは3営業日ぶりに反落して終えた。4/1発表の経済指標が製造業の改善を示した。インフレの沈静化が遅れ、米連邦準備理事会(FRB)の利下げが遠のくとの見方から売りが出された。

【前回は】相場展望4月1日号 米国株: FRBは「利下げに慎重」、高PERを意識するまでは株高続く 日本株: 「株高の期待値」だけでの株高は限界がある、円安は負の効果

  ・4/1発表の3月の米サプライマネジメント協会(ISM)製造業景況感指数は50.3と前月47.8から改善し、ダウジョーンズ通信がまとめた市場予想48.1を上回った。好不況の分かれ目である50を上回ったのは2022年9月以来である。項目別では「価格」の上昇が目立ち、これまで景況感が弱含んでいた製造業でインフレ圧力が高まっているとの懸念につながった。

  ・米株式市場が休みだった3/29には、FRBのパウエル議長が米経済の好調を背景に「利下げを急ぐ必要はない」と述べていた。ISM製造業指数の改善を受けて、利下げの時期が遠のくとの観測が意識された。米長期金利は4.3%台前半に上昇(前営業日の終値は4.20%)し、金利と比べた株式の相対的な割高感が高まったのもNYダウを下押しした。

  ・今週は3月の米雇用統計など重要指標の発表を控える。市場では「6月会合での利下げの可能性が消えたわけではなく、目先の統計も踏まえて金融政策の先行きを分析したい」との声があり、様子見の投資家も多かった。

  ・個別銘柄では、ホームデポやボーイング、ナイキなど消費関連を含む景気敏感株の下げが目立った。一方、マイクロソフトとシェブロンは上昇した。

  ・ハイテク株比率が高いナスダック総合株価指数は小幅に反発した。前営業日比で+17(+0.1%)高の16,396で終えた。アルファベットとメタプラットフォームズが上昇した。

 2)4/2、NYダウ▲396ドル安、39,170ドル(日経新聞より抜粋
  ・NYダウは続落して終えた。米景気の底堅さやインフレの高止まりで米連邦準備理事会(FRB)の利下げが先送りになる可能性が意識された。米長期金利が一時約4カ月ぶりの水準に上昇(債券価格は下落)し、株式の相対的な割高感につながった。

  ・「利下げ開始が7月以降になるとの見方が相場の重荷となった」との声があった。前日発表の3月の米サプライマネジメント協会(ISM)の製造業景況感指数が1年半ぶりに好不況の境目である50を上回った。価格指数の上昇も目立った。4/2発表の2月の米雇用動態調査(JOLTS)では求人件数が1月から小幅に増え、労働市場の底堅さを示した。

  ・米長期金利が4.40%(4/1終値は4.31%)と、昨年11月下旬以来の水準を付ける場面があった。米原油先物相場が一時1バレル=85ドル台半ばと期近物として昨年10月以来の水準に上昇したのもインフレ懸念につながった。

  ・NYダウは▲500ドルあまり下げる場面があった。最近まで主要株価指数の最高値更新が続いてきたため、利益確定や持ち高調整の売りも出た。一方、米長期金利が4.3%台半ばに水準を切り上げたこともあり、引けにかけてNYダウは下げ幅を縮小する場面があった。

  ・FRB高官発言では、クリーブランド連銀のメスター総裁が年内に0.25%の利下げを3回実施することについて「引き続き妥当とみているが、五分五分だ」との見解を示した。6月の利下げの可能性は排除しなかった。一方、サンフランシスコ連銀のデイリー総裁は、インフレ減速が緩やかななか利下げについては「緊急性がない」と述べた。これまでの高官発言と大きく離れた内容ではなかったと受け止められた。

  ・個別株では、ユナイテッドヘルスが大幅安となり、NYダウを▲200ドルあまり押し下げた。メディケア(高齢者向け公的医療保険)事業を請け負う保険会社への米連邦政府の2025年の支払い方針が明らかになり、業績の不透明感につながった。アムジェンやインテルが売られたほか、ウォルマートやナイキなど消費関連株の下げも目立った。一方、化学のダウやディズニーは上昇した。

  ・ハイテク株比率が高いナスダック総合株価指数は反落し、前日比▲156ポイント安(▲0.95%安)の16,240で終えた。4/2に発表した2024年1~3月期の世界の電気自動車(EV)販売台数が前年同期を下回ったテスラが売られた。エヌビディアやアドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)など半導体株も安かった。

 3)4/3、NYダウ▲43ドル安、39,127ドル(日経新聞より抜粋
  ・NYダウは小幅に3日続落して終えた。インテルやディズニーといった個別の材料が出た銘柄に売りが出た。半面、米長期金利の上昇一服でハイテク株が買い直され、相場を下支えした。

  ・NYダウの構成銘柄では、インテルが大きく下げ、一時は▲8%安で終えた。半導体受託生産(ファウンドリー)事業の収益改善に時間がかかるとの観測が強まり、売りが膨らんだ。ディズニーは4/3に開いた株主総会で、会社提案の取締役候補全員を選任したと発表した。アクティビスト(物言う株主)による業績改善圧力が後退するとの見方から、売りが優勢となり、▲3%安となった。

  ・4/3朝発表の3月のADP全米雇用リポートでは、非農業部門の雇用者数が前月比+18.4万人増だった。ダウ・ジョーンズ通信がまとめた市場予想15.5万人増を上回り、賃金インフレが物価を押し上げるとの見方が改めて意識された。

  ・アトランタ連銀のボスティック総裁は米NBCの番組で、米連邦準備理事会(FRB)の金融政策について、年内の利下げが1回にとどまるとの見方を改めて示した。市場の想定より利下げが遅れるとの警戒感から、米債券市場で長期金利が上昇。一時は4.42%と2023年11月下旬以来の高水準を付け、株式の相対的な割高感が意識された。

  ・パウエルFRB議長は昼の講演で、最近の経済指標を受けてFRBのインフレ沈静化への見方を本質的に変えていないと語った。「我々は今後のデータが金融政策の方向性を決めるまでの時間がある」と、従来の姿勢を強調した。市場では「年内に3回の利下げを6月から始めるとの基本シナリオは変わらない」と受け止められた。

  ・米長期金利の上昇が一服すると、ハイテク株を中心に買い直す動きが広がった。米サプライマネジメント協会(ISM)非製造業(サービス業)景況感指数は51.4と、市場予想52.7を下回ったが、好不況の境目とされる50を超えた。市場では「4/1発表の製造業景況指数も50を上回り、良好なデータが米景気への楽観を強めた」との声が聞かれた。

  ・個別銘柄では、プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)やジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)、ボーイングが下げた。一方、キャタピラーやアマゾン、アップルには買いが入った。

  ・ハイテク株比率が高いナスダック総合株価指数は反発し、前日比+37高の16,277で終えた。メタプラットフォームズとテスラが上げた。