【前編】MAXISシリーズを展開する三菱UFJアセットマネジメントが考える「アクティブETF」の可能性

2023年9月7日、東京証券取引所でアクティブETF(上場投資信託)の上場が解禁された。

これまで日本で上場されていたETFは、指数に連動して値動きするものだった。一方、解禁されたアクティブETFは指数に連動せず、運用会社やファンドマネージャーが運用方針に沿うように組み入れ銘柄や資産配分を決め、市場平均を上回るリターンを追求していく。

2023年9月には6本のアクティブETFが上場されたが、そのひとつ「MAXIS 高配当日本株アクティブ上場投信(2085)」を運用しているのが三菱UFJアセットマネジメント。上場に至るまでの経緯や商品の特徴について、三菱UFJアセットマネジメントETF事業グループ シニアマネジャーの豊留健良さんに聞いた。

2008年にスタートしたETFブランド「MAXIS」

――豊留さんは、いつ頃からETF事業を担当されているのですか?

「現在のETF事業グループに配属されて2年ほどが経ちますが、それ以前の2018年頃からETFの開発に携わっていました。いまは商品開発から機関投資家や個人投資家への営業まで、ETFに関することのすべてを担当しています」

――ETFに携わって長いのですね。もともとETFは三菱UFJ国際投信が運用していましたが、2023年10月に三菱UFJアセットマネジメントに変わったんですよね。

「そうなんです。当社の前身は、日本初の運用会社として創立した山一證券投資信託委託で、複数の会社との合併を経て、現在の形に至っています。2023年10月には、投資信託を運用してきた三菱UFJ国際投信と、年金運用を行ってきたMU投資顧問が統合し、三菱UFJアセットマネジメントとなりました。

ただ、会社の名前よりも、公募投資信託のブランド名『eMAXIS』のほうが知られているかもしれませんね(笑)。ありがたいことに、『eMAXIS』はたくさんの投資家の方々に知っていただいているのですが、『MAXIS』というブランドのETFも展開しています。実は、2008年に『MAXIS』が生まれ、その1年後に『eMAXIS』ができたんですよ」

――「MAXIS」シリーズのほうが先輩なんですね。そんな「MAXIS」シリーズの特徴を教えてください。

「『MAXIS』は『MAX(最大)』と『AXIS(軸)』を掛け合わせた造語で、“投資の軸になる商品を提供する”というコンセプトのもと、長期的な資産形成に資するラインナップを揃えることを心掛けています。日本株はもちろん、S&P500やNASDAQ、NYダウなどのアメリカ株、全世界株(オール・カントリー)に投資する商品も用意しています。比較的低コストなところも特徴です」

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株主還元の流れを受けて生まれた「高配当日本株ETF」

――「MAXIS」シリーズのアクティブETF第一弾が「MAXIS 高配当日本株アクティブ上場投信」となりましたが、なぜ高配当日本株にフォーカスを当てたのでしょう?

「その理由は、日本の株式市場全体で株主還元の流れが高まってきているからです。TOPIXのひと株あたりの配当総額を見ると、過去20年間で5倍に増えています。また、東証の制度改革の影響で、日本企業が株主に還元するムードが高まっていることも受け、配当として還元している企業を集めた商品は、時流に沿っているのではないかと考えました」

――アクティブETF上場解禁の話が出る前から、構想があったのですか?

「なんとなくでしたが、ありました。公募投資信託のなかにも高配当日本株を集めた商品があるのですが、2023年初め頃から徐々に残高が伸び、熱を帯びていたんです。そのタイミングでアクティブETFの解禁が発表されたので、高配当日本株をまとめたETFを提供することで、投資家のニーズをつかめるのではないかと考え、開発を進めました」

――これまでのインデックス型のETFだと、高配当株に絞ることは難しかったのでしょうか?

「従来のETFにも高配当日本株の指数に連動するものはあったのですが、指数に連動しないアクティブETFであれば、組み入れ銘柄を選定できるので、高い配当利回りの維持を目指しやすいのです。

配当利回りの高い株式のなかには、信用リスクや無配の懸念があるものもあります。指数に連動すると、これらの危険な銘柄も組み入れなければいけないケースが出てくるのですが、アクティブETFであればファンドマネージャーの裁量で除外できるので、リスクを回避しやすくなります」

――確実に配当が出そうな銘柄だけに絞れる、ということですね。実際には、どのような形で組み入れ銘柄を決めているのですか?

「東証に上場している大型・中型株を対象に、予想配当利回りの高い銘柄を約30銘柄選定して、組み入れています。選んだ30銘柄の投資比率は、予想配当利回りではなく流動性をもとに決定しています。流動性とは、市場に出回っている数の多さのことです」

――なぜ、流動性によって銘柄の割合を変えるのでしょう?

「理由は2つあります。1つ目は、アクティブETFには日々組み入れ銘柄を開示するというルールがあるからです。流動性の低い銘柄を入れ、その売買に1~2日かかってしまうと、開示している情報から『あの銘柄を売ろうとしている』と見抜かれて先回りされてしまい、想定通りの運用ができません。流動性の高い銘柄であれば、すぐに売買できるので、当社の動きを予測されづらく、運用しやすくなります。

もう1つの理由は、組み入れ銘柄の流動性が高いほうがマーケットメイクしやすいからです。流動性の高い銘柄を組み入れているETFは、証券会社などのマーケットメーカーに注文を提示してもらいやすくなるため、ETF自体の流動性も高くなります」

――組み入れ銘柄の流動性は、ETFそのものの流動性にも影響するんですね。考え抜かれた商品だと感じますが、開発で苦労したところはありましたか?

「いかに配当利回りの高さを出すかが、苦労したところです。結果的に、約30銘柄に絞り込むことで、高い配当利回りを実現しました。組み入れ銘柄を絞ったことで、運用上限は1000億円と小規模になっていますが、逆に運用上限を上げると組み入れ銘柄が増え、配当利回りが薄くなるので、いまのバランスがいいのではないかと考えています」