福井県小浜市に本社を構える「株式会社ワカサハイテック」は、まもなく創業20年を迎える電子部品の製造会社。創業から役員として携わり、代表取締役社長を務めてきた廣田誠一様はこの度、精密部品加工を主軸とする「増錬工業株式会社」へ事業承継を実現されました。幾多の苦難を乗り越えながら、同社を安定企業へと成長させてきた廣田様は、どのような経緯で会社譲渡を決断したのか。創業の背景や会社への想いと共に、詳しくお伺いさせていただきました。

 

譲渡企業
社名 株式会社ワカサハイテック
業種 製造業
拠点 福井県
譲渡理由 後継者不在

 

 

譲受企業
社名 増錬工業株式会社
業種 製造業
拠点 東京都
譲受理由 事業拡大

 

創業メンバーとして携わり、多くの苦難を乗り越えて安定企業へと成長

廣田様が同志とともに株式会社ワカサハイテックを創業したのは、2004年のこと。当時、抵抗器を製造する小さな会社で、OEM契約を主軸に事業を展開していた廣田様は、OEMの発注がなくなってしまうことへの危機感を感じていたことから、自分たちが作り手に回ることを目指し、一念発起して創業したのがワカサハイテックでした。

その後、株式譲渡という形で経営権を獲得して代表取締役になられてからは、精力的に事業を拡大。2017年ごろには、新しい工場を抱えて盤石な基盤を作り上げ、安定企業へと成長させていかれました。そんな廣田様は、創業当時のご苦労について、以下のように話しています。

「立ち上げ当初は、なかなか受注が取れなくて本当に大変でした。それでも、愚直に営業を続けて、いろんな方々との繋がりを作り、何年か経ってようやく安定的に仕事が入ってくるようになりました。その後は、ひとつひとつの受注に誠心誠意で応えていくことで、再び発注していただけるような先も増えていきまして。こうした関係性が次の仕事を生んでいくわけなのですが、それを築くのは時間がかかりますし、大変なことでした。」

これまで長年に渡り事業を続けてこられた要因について、「お客様の要望に寄り添い、設計から全てに対応するスタンスが良かったのかもしれない」と話す廣田様。社員数は6名と決して多くはないものの、経験年数の高いスタッフにも支えられながら、ここまでやってこられたと話します。

また、コロナ禍は一時受注がない時期もあったものの、現在はコロナ前の状態に戻りつつあり、黒字経営が続いているというワカサハイテック。お客様に向き合う真摯な姿勢と意欲的な投資、そして何より確かな技術力によって、現在も順調な経営を続けています。

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高齢を理由に後継者探しをスタート。重視したのはシナジーのある会社かどうか

手塩にかけて会社を育て上げてきた廣田様。事業承継の検討をし始めたのは、ご自身の年齢による後継者探しでした。

事業承継を検討したのは、なにより自分の年齢という壁がありました。私はすでに70歳を超えているので、そろそろ自分の後を継いでくれる人を探さなければいけないと思い始めたんです。

そして、事業承継という形で他の会社と一緒になることで、自力では解決できないようなことを実現したいとも考えていました。そこで、福井県の事業承継・引継ぎ支援センターというところに相談してみたところ、バトンズさんを紹介いただいたんです。」

福井県事業承継・引継ぎ支援センターからの紹介で、バトンズにご登録いただいた廣田様。登録後、すぐに十数件のお問い合わせが入り、その中から3件の買い手候補に絞り込んで面談を実施されました。

最終的に譲り先として選んだのは、京都で精密部品加工・設計・搬送系ユニットを手掛ける増錬工業。廣田様は譲渡先を選定する上で、どのようなポイントを重視していたのでしょうか。

「譲渡後も、従業員の雇用は守ってあげたいと思っていましたし、取引先との関係性も継続したいと考えていました。そのため、まずはその条件を受け入れてくれるかどうかを重視していました。

また、先にお話しした通り、既存の延長線上では成し得ない、事業拡大が見込めるような会社、シナジーが生まれるような先を希望していました。

増錬工業さんは、我々よりも更に精度の高い部品加工を行っているため、技術力という点でまず取引先様と良い関係を築くことができると思いました。加えて、私たちが外注している業務を生業とされていらっしゃったので、事業拡大が見込める企業であるとも感じました。」

交渉依頼があった他2社については、シナジー効果や譲渡価額の面で、両者の条件が合致せず見送られたとのこと。また、面談時には社長の人柄についても見ており、その点でも増錬工業の増田様には好印象だったと言います。

「面談時には、もちろん社長の人柄も見ていました。増錬工業の代表である増田さんは、若くてバイタリティがあり、行動重視というか、何でもやってみようという意気込みを感じました。そして何より、夢をお持ちのところが非常に頼もしいと思いました。

今は事業が安定していますが、事業運営に山谷はつきものです。よって、長い経営人生の中でいつか必ず谷間がやってきます。その時にきっと苦労されることもあるかと思いますが、夢を叶えるために全力を尽くして乗り越えていってくださるだろうと感じています。」

条件の一致に加えて、社長の人柄にも好印象を持たれた廣田様は、増錬工業に会社を譲るべくM&Aを進めていかれました。