【書評】伊藤幸弘・著『マンション投資IQアップの法則』

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『マンション投資IQアップの法則 ~なんとなく投資用マンションを所有している君へ~』/伊藤幸弘・著/CHICORA BOOKS

年間何十冊・何百冊もの不動産投資本が出版されている。融資審査が厳格化し、冬の時代と呼ばれる現在でも、不動産投資への熱は依然として高まっているようだ。

多くの書籍が、成功メソッドや失敗しない方法、あるいは物件選びのポイントというような投資に期待を持たせる内容のなかで、『マンション投資IQアップの法則 』は、不動産投資に失敗している投資家を読者ターゲットとしている点で異彩を放っている。

本書は、赤字状態でワンルームマンション投資を行う主人公の”たかし”と、投資の仕組みや改善策を指南する先生役のフクロウが、赤字マンション投資の立て直しを目指すストーリー仕立てになっている。

漠然とした将来への不安や焦りから、短絡的にマンション投資を始めてしまう心理やその危うさ。いかにしてサラリーマンが投資マンションの販売会社にカモにされてしまうのかなど、ワンルームマンション投資の仕組みとともに業界の裏側にも触れられている。

「警戒するべき不動産会社の特徴」なども紹介されており、業界のプロが読めば痛い所を衝かれたと感じる人もいるかもしれない。

当然ながら、本書は不動産投資を全面的に否定しているわけではない。不動産投資は資産運用や投資商品として有用だ。しかし、ワンルーム投資で顕著に見られる、投資家自らが深く学ぼうとせず、不動産会社に任せきりの姿勢を問題視しているのだ。

それは、章題にもなっている「ワンルームマンション投資は勉強が9割」という言葉にも現れており、著者でTOCHU(東京都文京区)・代表の伊藤幸弘氏が本書を通じて最も伝えたいメッセージだろう。

投資家自身がリスクや危険性を十分に理解して物件を選んで購入し、事業としての自覚を持って成功に向かって運営する。改めてマンション投資とはどういったものなのか、原点に立ち返らせてくれる一冊だ。