「奇抜」なデザインは悪なのか?
では、奇抜なデザインは普通のデザインに劣るのでしょうか。答えは否です。
同じ自動車メーカーでも、奇抜で大胆なデザインを採用する企業もあります。たとえば、テスラのサイバートラックはとても個性的です。
▲出典:Tesla
テスラのサイバートラックがメディアに登場すると、大きな話題になりました。以下はサイバートラックを題材にしたミームです。
▲落書きを模したミーム。イーロン・マスク氏が4歳のときに考えたようなデザインだと揶揄している(出典:Redit)
おそらくこのデザインの最大の目的は、「車を販売して利益をあげること」ではなく、「話題性」だったのでしょう。話題性を重視したからこそ、ユニークなデザインにしたのかもしれません。
なおテスラの創設者であるイーロン・マスク氏は、このサイバートラックを当初2021年後半に発売するとしていましたが、いまだに発売されていません。実際に販売される際には、一般に受け入れられるよう、より普遍的なデザインに変更される可能性もあります。
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優れたデザインの条件
20世紀を代表するデザイナーであるディーター・ラムス氏は、「良いデザインの10原則」を提唱しています。そのなかの一つに、以下のような項目があります。
“Good design is unobtrusive”
(良いデザインは目立たない)
プロダクトは装飾品でも芸術品でもありません。目的を達成するためのツールです。だからこそ、デザインはニュートラルで控えめであるべきと考えられているのです。
製品の究極的な目的は、問題を効果的に解決することです。他の製品との差別化要素は、かならずしも必要ではありません。
▲出典:ブラウンのレコードプレーヤー、PC3 SV(出典:Designwanted)
では、すべてのデザインが普通であるべきなのかというと、そうでもありません。大切なのは、デザインする製品のターゲットのニーズを理解することです。
たとえばオロチのような車をデザインする際、デザイナーは大衆向けの製品ではないことを理解しているはずです。車が好きな人や、車によって個性をアピールしたい人に向けてユニークな車を提案し、一定の顧客を獲得しています。こうしたニッチな顧客層に向けて強い感情を呼び起こすようなデザインを提案するのも、ひとつの戦略です。