NFTトレンディでは、NFTやブロックチェーンに関連する注目トピックを取り上げて解説する。今週は「移転できないNFT」として話題になっているSBT(ソウルバウンドトークン)について紹介する。

【目次】

  • SBT(ソウルバウンドトークン)とは?
  • SBTによって実現が期待できること
  • SBTの実装状況
  • プライバシー保護とアイデンティティ証明の両立が問題か
  • 1.SBT(ソウルバウンドトークン)とは?

    SBT(ソウルバウンドトークン)は、他のアカウントに移転・譲渡のできないNFTや仮想通貨(暗号資産)のことだ。トークンが一度入手したアカウントに永久に紐づけられるため、学歴や資格の証明、契約、投票等に使えるのではないかと期待されている。

    SBTが話題になったのは、イーサリアムの創設者であるVitalik Buterin氏が2022年1月に自身のブログでSBTに関する考えを発表したり、さらに詳しく内容を掘り下げた論文を執筆したことがきっかけだ。

    ブログ・論文の中で、Buterin氏は現在のweb3システムについて「金銭・金融中心である」という問題点があるとし、政治、経済、社会、文化にweb3システムが広がっていくためには譲渡できないトークンであるSBTが重要な役割を果たす可能性があると述べている。

    ブロックチェーン上のアカウントは誰でも自由に匿名で生成ができ、従来は社会的なアイデンティティをブロックチェーン上で表現することが難しかった。論文ではこのことが分散型社会(DeSoc)を目指すための障壁となっており、たとえば下記のような課題が生まれているとしている。

    • NFTアーティストの多くがOpenSeaやTwitterなどの中央集権的なプラットフォームに依存して、希少性や出自を保証している
    •  単純なコイン投票より良いものを目指そうとするDAOは、シビル攻撃への対策として、しばしばソーシャルメディアのプロフィールのようなWeb2インフラに依存している
    • Web3参加者の多くは、CoinbaseやBinanceのような中央集権的な組織が管理するウォレットに依存している
    • DeFiエコシステムは、無担保の融資やアパート賃貸のような単純な契約など、実体経済でよく見られる活動をサポートすることができない

    SBTによってこうした課題を乗り越えることができ、web3が金融以外の領域にも広がり、社会的なインフラとなっていくのではないかとButerin氏は述べている。

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    2.SBTによって実現が期待できること

    譲渡不可にすることで現在よりもうまく機能する例としては

    • 免許や資格、学歴の証明
    • アーティストがNFTを発行する際のアイデンティティの証明
    • 民主的な意思決定

    などがある。

    免許や資格、学歴の証明

    免許や資格、学歴の証明書をNFTで発行するというアイディアはブロックチェーンの可能性として長く議論されてきたが、社会実装に成功した例は少ない。現在のように売買ができてしまっては、それらの証明の信用性や効力が低くなってしまうためだ。SBTを利用することで売買を防ぎ、社会的な証明をNFTで行えるようになる。

    アーティストがNFTを発行する際のアイデンティティの証明

    現在、NFTアートでは贋作や偽物が多数発生している。SBTによって、買い手はNFTを作成したアカウントがアーティスト本人のものであると特定しやすくなり、それによってNFTの正当性を確認することもできるようになる。

    民主的な分散型の意思決定

    ブロックチェーンを利用したプロジェクトでは、議決権が付与されている「ガバナンストークン」を発行し、投票による民主的な運営を行いつつ、ゆくゆくは特定の企業や個人が管理せずとも提案と意思決定がステイクホルダーによって自律分散的に回っていく「DAO(自律分散型組織)」を志すものも多い。

    しかしガバナンストークンが資金のある人やbotなどに買い占められると、民主的な仕組みが維持できなくなってしまう恐れがある。SBTはこうした問題を解決するものとして期待されている。