直腸がん手術は「週の前半」が経過良好、手術曜日と転帰の関連を広島大が調査

 週末(土日)に手術を受けた患者は、緊急手術、予定手術(待機的手術)を問わず平日より経過が悪い傾向がある。

 土日はスタッフ不足になるためで、合併症の発生率や術後30日以内の死亡率に影響が表れるのだ。これは「weekend effect」と呼ばれる現象で、病院の多くは暗黙の了解として週末には待機的手術を入れないよう調整している。

 一方、「weekday effect」と呼ばれる現象も存在する。週の後半になると執刀医のパフォーマンスが低下し、手術成績が下がるというものだが、本当だろうか。

 広島大学の研究グループは、大腸がん(I~III期)の待機的手術について、手術曜日と転帰の関連を検討している。

 対象は同大関連病院15施設で2017年1月~19年12月に大腸がんの原発巣切除術を受けた症例。月~木曜日に手術を受けた2206例と、金曜日に手術を受けた368例に関し、術後30日以内の死亡率と術後の状態を比較した。

 その結果、盲腸~S字結腸が原発巣の「結腸がん」では、月~木曜日群より金曜日群のほうが、手術時間がわずかに長く、出血量もわずかに多かった。ただし医学的に問題になるほどではない。

 逆に、S字結腸から肛門に続く直腸が原発巣の「直腸がん」では、金曜日群のほうが術後イレウス(腸閉塞)など、外科的な処置を必要とする合併症の発生率が高かった。そのため、入院期間が長引く傾向が認められた。

 死亡率に関しては結腸がん、直腸がんともに手術曜日の影響は認められなかった。

 研究者は週が進むにつれて医療者の疲労が蓄積し、手術パフォーマンスが低下した可能性があるとし、複雑な手技を必要とする消化器がんの手術では、週後半の手術が予後不良の一因となる可能性を指摘している。

 さて、4月1日から「医師の働き方改革」が始まった。医師も従来の滅私奉公的な働き方から、人間らしい「休息」が取れるようになる、はずだ。現場はまだ混乱しているが、寝不足でフラフラの執刀医に当たるリスクが減るよう、祈る思いである。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)