カジュアルな服の自由な着こなしと比べて、トラディショナルな服は、正しい知識をもって正しく着ることが大前提となる。だからこそ、ウンチクを身につけることで日頃の装いや服選びはもっと楽しくなるはずだ。今回取り上げるのはボタン。留め具としてのボタンの歴史は古く、古代ギリシャ時代にまで遡る。動物の骨や角、植物のトゲから始まり、木の実や貝などへと移行。現在では化学繊維も含めた様々な素材・形状のボタンが作られている。

ボタンの種類

スナップ


凸形と凹形が 1組となり、上ボタン(凹)に取り付けられたバネの緊張作用によって噛み合う。

尿素

ユリア系樹脂を原料にしたプラスチックボタン。ワークやミリタリーウエアに多用される。

ウッド

文字通り木製の原始的なボタンの素材。形状の加工、着色の容易さから幅広く使用される。

コンチョ

もとは貝を使ったネイティブアメリカンの加工品。のちに金属の飾りボタンを指すように。

竹を削って作られ、バンブーボタンとも呼ばれる。主にアロハシャツに使用される。

水牛


東南アジアやインドなどの水牛の角が原料。変色しにくく、耐久性にも優れた高級素材のひとつ。

白蝶貝

高級シャツのシェルボタンに使用される貝で、透明感に加えて表情豊かなのも特徴。

黒蝶貝

黒真珠の母貝が原料で、緑や赤を含んだ黒色層と銀白色層があり、深みのある色合いに。

高瀬貝

巻貝を原料とし、白蝶貝に比べてやや黄色がかっている。一般的なシャツに多用される。

キャッツアイ

通し穴の部分に猫の目のような切り込みを入れた形状。1960年代以前のシャツに多い。

トグル(水牛)

鉤爪のような形状をしており、ダッフルコートに多く見られることからダッフルボタンとも呼ばれる。

バスケット

くるみボタンの1種で、革などを芯となるボタンに対して編み込んでいる。名前の由来は網み目の様子から。

ナット


エクアドルが原産のヤシの実を原料とし、年輪のような渦巻きの木目が特徴。水牛に次ぐ高級素材とされる。

パラシュート

パラシュートで飛び降りる際にボタンが切れないよう、太い紐を通すために穴が大きく設計されたボタン。

メタル


金属製のボタンで、無地やエンブレムが刻印されたものなど様々なデザインのものが存在する。

力(ちから)


基本的に10mm以下の小さなボタンで、生地の厚い衣類のボタン裏につけて補強する役割。

くるみ


アルミや樹脂でできた芯となるボタンを布や編み地で包んだもので、刺繍などの加工が入ることも。

ココナッツ


ヤシの実を削り出して作られる。硬度が高くて割れづらいのが特徴。主にアロハシャツに使用される。

月桂樹

第二次大戦中のアメリカの物資統制下で各ブランドが使用していた安価なボタンで月桂樹の模様が入る。

ドーナツ

中央がくぼんだ形状から名付けられた金属製のボタン。ジーンズのフロントボタンに多く見られる。

トグル(木)

水牛のトグルボタンとは異なり、中央に穴の空いた形状。こちらもダッフルコートに多く見られる。

※情報は取材当時のものです。現在取り扱っていない場合があります。

(出典/「2nd 2024年5月号 Vol.204」)