IT担当者の「燃え尽き」や「アラート疲れ」、AIによってどう防ぐか

 Mercerが300社を対象として先ごろ実施した調査によると、調査した米国企業のうち94%が、過去3年間に、メンタルヘルスケアを適用する範囲の拡大、サポートの強化、あるいは従業員の健康を向上させるための新たなプログラムやシステムの導入を実施したと報告している。こうしたカウンセリングが従業員に必要な理由は多岐にわたるが、悩みとストレスの多いIT運用の作業環境が、そこで働く人にとって問題解決の役に立っていないのは確かだ。

 IT運用を担うことによるストレスを緩和し、もしかすると燃え尽きる人を減らして仕事の満足度を向上させられる方法があるとしたらどうだろうか。今やインフラの一部になっている複数のプラットフォームによって、問題の対処や修正の取り組みに費やされる日々と時間のような、仕事の中のストレスの多い部分を軽減して自動化するアプローチを、人工知能(AI)が提供してくれる。

 「AIOps」、すなわちIT運用のためのAIは、情報技術の退屈な側面、つまりはバグの修正、セキュリティ問題の監視、根本原因の発見、こうした問題の改善などを、インテリジェントに自動化するいうものだ。調査会社Constellation ResearchのプリンシパルアナリストであるAndy Thurai氏は「AIOpsとはAIの改善ではなく、IT運用におけるAIの活用のことだ」と語る。

 今ではAIOpsが生成AIによって強化されており、かつては把握と修正に数時間、数日とかかっていた問題について、問い合わせてすぐに回答を得ることが可能になるかもしれない。その中で、IT担当者の燃え尽きやストレスも削減されるかもしれない。

 ITチームにとって最も気が滅入るものである「アラート疲れ」を考えてみよう。ITインフラは規模と複雑さが拡大し続けており、それに伴ってアラートも増えている。クラウドで複雑さがなくなると考えてはいけない。実際には、システムとアプリケーションがさまざまなプラットフォームにまたがり、ひずみをもたらすプロトコルで実行されることで、複雑さは増す。

 Thurai氏によると、あらゆるIT担当者がそのような認知の過負荷に直面し、いずれ「アラート疲れで燃え尽きる」という。同氏は「管理者は1件のインシデントで、数千とはいかなくとも数百のアラートを受け取ることが珍しくない」と述べ、「それでいて、情報がまったくないため何を追っているのかもわからない。こうしたツールは、提供する情報を増やすのではなく、対処できない数のアラートを渡す」と語った。

 ITのアラートで大きな問題は、アラートの大半が誤検出であることだ。Thurai氏は、「アラートに関しては、CNNと異なり、あらゆるニュースがニュース速報であるわけではない」として、こうしたアラートの殺到で、「対応チームがアラート疲れを起こすと、迅速な対応ができない。認知能力が低下する」と説明した。

 もともと従来のAIを中心に設計されていたAIOpsが、今や生成AIで大きく強化されようとしていると、Broadcomのバイスプレジデントでジェネラルマネージャーも務めるClayton Donley氏がブログ記事で述べている。「従来のAIは、定義済みのルールとパターンに基づき、特定のタスクについて、データの分析や予測を支援するものだ。生成AIは、パターン認識からパターン生成へと、すべてを新しい段階に引き上げる。コンテキストに沿って質問し、理解できる回答が得られるようになる。コンピューターがコンピューターの修正に関わることになるのはこれが初めてだろう」と同氏。

 加えて、生成AIが「ITチームが着目するべき場所を迅速に把握するのを手助けすることで、チケットの解決にかかる時間が短くなる」とDonley氏は続ける。「アラートの海をあてどもなくこぎ進むのに時間を浪費するのではなく、生成AIは効果的な方策を分析してまとめ、処理を迅速化できる」

この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。