超高品質な木工製品を作る広島県府中市の『松葉製作所』。実はクルマのエンジンの木型を作るのが本業で、そのために硬い木材を超精密に削る技術に長けている。同社のiPhoneケースは1枚板からの削り出しで、0.01mmまで調整して削るので、最薄部は2mmという超精密な製品。その松葉製作所が販売する『亀甲名栗木製パームレスト80mm』も、工芸品と思えるような仕上がり。

ちなみに、松葉製作所の亀甲名栗パームレストは数年前から販売されているが、今回ご紹介するのは2月にPFUダイレクトから発売されたHHKB専用バージョン。コンパクトなスペースに設置できるように、標準モデルでは110mmある奥行きが80mmに設定されている。

亀甲名栗木製パームレスト80mm(パープルハート差込特別Ver.)(松葉製作所製)

https://www.pfu.ricoh.com/direct/hhkb/hhkb-option/detail_pz-mtb80knc.html

亀甲名栗のパームレスト

PFUから、「一度試してみて下さい」と送られてきたのは、『亀甲名栗木製パームレスト80mm』のパープルハート差込特別Ver.。木の素材はブラックチェリー。

いってみれば、1枚の木の板なのに3万8500円という価格はなかなかしびれるが、工芸品のような加工を目の前にすると納得はできる。長時間手に触れている道具にはお金を使ってもいいというのは、多くのガジェットマニアが理解していることだろう。

筆者などは、四六時中デスクに座ってパソコンのキーボードを叩いているのだから、手のひらを置いているパームレストにはお金をかけてもいいと思っている。

本製品の最大の特徴は、『亀甲名栗』という独特の加工だ。

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名栗って何?

実は、筆者の実父は彫刻家で、木彫を教えていた美術大学の教授でもあったので、こういう加工には馴染が深いのだが、名栗とはノミ(鑿)や、チョウナ(釿)で、木材を削った時にできる削り跡を活かした加工のこと。

ご覧のように削り跡が上手く模様にならなければならない上に、削り過ぎなどが許されないほぼ一発勝負の連続だから、非常に熟練した職人の腕が必要になる。

当然のことながら、この加工は松葉製作所の職人によって手作業で行われている。微妙に異なる削り跡は、手作業で作られているから、ひとつとして同じものはない。

昔の家の門扉や、柱、飾りルーバーなどに使われた加工で、筆者の実家の一部にも突き鑿名栗や、亀甲名栗が使われていたので、この模様を懐かしく思う。古い家に住んでいる方は、探してみれば、家のどこかにこういう加工を見つけれることができるのではないだろうか?

ちなみに、筆者の実家は戦後、’60年代に建てられたものだったが、近年リフォームしており、名栗の加工の部分はなくなってしまった気がする。今度、帰省したら、どこかに残ってないか、探してみようと思う。

実際に使ってみると、この名栗の微妙な凹凸が、手のひらのパームレストに当たる部分に実に心地いいのだ。

平板のように手のひらが張り付いてしまうことなく、適度に動かしやすく、密着しておらずしかし、グリップ感はあるという絶妙な状態なのだ。手前に向けて落ち込む微妙なカーブもフィット感がいい。

まだ、使い始めて数日だが、すでに手が非常に馴染んでしまっている。