金融庁が千葉銀に業務改善命令、「仕組み債」を不適切に販売


2023年6月、金融庁は千葉銀行、ちばぎん証券、武蔵野銀行の3社に対して、業務改善命令を発出しました。理由は、「仕組み債」の勧誘・販売において、顧客の投資経験などについて十分な確認を怠っていたためです。

今回は、千葉銀などが行政処分を受けたその内容を深掘りし、「仕組み債」とは何かについて詳しく解説します。

金融庁が千葉銀行、ちばぎん証券、武蔵野銀行の3社に業務改善命令

証券取引等監視委員会は、千葉銀行とその傘下のちばぎん証券について、複雑な債権であり、顧客の投資経験を確認する必要がある「仕組み債」を不適切に販売していたとして金融庁に行政処分を勧告していました。これを受けて同庁は、「業務改善命令」を千葉銀行、ちばぎん証券、武蔵野銀行の3社に対して発出しました。

この行政処分を受け、千葉銀行、ちばぎん証券、武蔵野銀行は7月24日に業務改善報告書を関東財務局に提出。報告書の内容は公表されていて確認でき、「広範囲にわたって調査を行っている」といった文言と、顧客・社会に対する謝罪文が中心となっています。

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問題の発端となった「仕組み債」とは

千葉銀行、ちばぎん証券、武蔵野銀行が行政処分を受けた理由は、「仕組み債の勧誘販売における仲介業務において、投資家保護の観点から問題がある」というものでした。

問題の発端となった仕組み債とは、その名前の通り、通常の債権にはない「特殊な仕組みをもつ債権」のことです。仕組みとは、デリバティブ(金融派生商品)を組み込み、投資家・発行者のニーズに即したキャッシュフローを生み出す構造を意味する言葉です。

デリバティブとは、具体的にはスワップ(金利[固定金利と変動金利]や通貨[円と外貨]を交換する取り引き)、オプション(あらかじめ取り決めた価格で、一定期間後に売ったり買ったりする権利のこと)などを指します。つまり仕組み債とは、「債権+デリバティブ」という性質をもつもの、といえるわけです。

この仕組み債は、高い利回りを可能とする一方で、株価や為替などの変動に連鎖して償還条件が変わってくるなど、複雑な商品性をもちます。通常の債権とは違ったリスクを含む上に手数料の決定基準もわかりにくく、仕組み債は個人投資家に販売するのに適さない商品と以前から指摘されていました。

実際、金融庁は仕組み債の販売には問題があるということを、2022年6月に発表した報告書(リスク性金融商品の販売会社における顧客本位の業務運営のモニタリング結果)で示しています。とくに投資経験の少ない人にはまったく不向きな商品であり、もし販売するなら、少なくとも販売者側はその仕組みをしっかりと説明し、投資家となる顧客に納得してもらう必要があるのです。