災害高血圧と合併症の予防法「140/90mmHg」を1つの目安に

 令和6年能登半島地震から、およそ2カ月が過ぎた。避難所生活の長期化で、災害関連死がじわじわと増えてくる時期だ。

 災害関連死の多くは呼吸器疾患や循環器疾患だ。特に「闘争・逃走」モードを司る交感神経のスイッチが入りっ放しになって血圧が上昇し、心不全や脳卒中などの心血管疾患死が増える。日本高血圧学会では、「災害高血圧と合併症予防の10項目」で、注意を呼びかけている。

 まずは「生活環境の整備」だ。

(1)寒さ対策:保温性の高い衣服を着用し、身体を冷やさない。

 理想の室内温度は18度以上だが、難しいときは重ね着で、首と手足を守る。

(2)睡眠:横になるだけでもいいので、できるだけ6時間以上の睡眠を心がける。

 次は「生活習慣の維持」だ。

(3)生活リズム:起床と就寝時刻を決め、生活のリズムをつくる。

(4)運動:身体を動かす。1日に20分以上の歩行でも大丈夫。

(5)食事:なるべく塩分の摂り過ぎに注意し、野菜、果物、乳製品などカリウムの多い食事を心がける。ただし、腎臓病などで医師からカリウム制限を受けている人は、指示通りにしよう。

(6)体重の維持:体重計があれば測り、増減を確認しよう。極端な増減はむくみや栄養不足の可能性があるので、医療者に相談を。

(7)感染症予防:できる限りマスクを着用し、手を洗おう。

(8)血栓の予防:トイレの問題が気になるが、こまめに水分を摂り、1時間に1回は足を動かそう。爪先や足首を回すだけでもいい。

 最後は「治療の継続」だ。

(9)薬の継続:普段飲んでいる薬は、いつも通り飲み続ける。

(10)血圧管理:震災後から2~4週間は、一時的に平均5~10mmHgほど血圧が上昇する。それ以降は140mmHg以下を目指し、160mmHgを超えた場合は、医師につないでもらうこと。

 日本に住んでいる限り、地震や津波のみならず、水害や火山の噴火など、大規模な自然災害に遭う可能性は常にある。自分と家族のために、災害高血圧と合併症の予防法を覚えておこう。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)