ドラマ『ノーサイド・ゲーム』出演者インタビュー「がんばれ!アストロズ」(3)笹本玲奈さん

俳優の大泉洋さんが主演を務める日曜よる9時からのTBSドラマ『ノーサイド・ゲーム』で、キリリとしたメガネ姿が印象的な笹本玲奈さん。

ミュージカルを中心に活躍してきた笹本さんが演じるのは、社会人ラグビーチームトキワ自動車「アストロズ」の敏腕アナリスト佐倉多英。華やかなミュージカルとは一転し、ラグビー選手に囲まれたにぎやかな撮影現場で“アナリスト”という難しい役柄に挑んでいる。

今夏いちばんの話題作といわれているドラマ『ノーサイド・ゲーム』に出演する笹本さんに作品にかける思いを語ってもらった。

――日曜劇場へのご出演は2009年に放送された同枠の「ぼくの妹」以来ですね。

 連続ドラマのレギュラー出演は久しぶりなんですが、今回は池井戸(潤)先生の作品だということで、私自身が喜んだのはもちろんのこと、家族や親せきが大騒ぎになりました(笑)。

 プロデューサーの伊與田(英徳)さんが、私が出ている舞台をよく観に来てくださっていて、「いつかご一緒したいです」と言っていたので、お話をいただいたときはすごくうれしかったです。

――笹本さんが演じるのはアストロズのアナリスト(選手や対戦相手のリサーチや分析をする役割)佐倉多英ですが、どのように役作りをされたのですか?

 福澤(克雄)監督から「多英は頭が良くてハキハキしているイメージだから、メガネをかけて、髪は少し短いほうがいいね」と言われたので、役作りのために髪を切りました。普段はメガネもかけていないし、髪も長かったので、初回の放送を見て私だと気づかなかった人もいたみたい。

 原作を読ませていただいたとき、「ラグビーの知識がある程度ないとこの役はやっちゃダメだ」と思ったので、クランクイン前に徹底的に勉強をしましたね。専門用語を調べて、初心者でもわかるルール説明みたいなものを動画で見て、ある程度わかってから実際の試合の映像を見て研究したり……。

――演じてみていかがですか?

 多英はラガーマンたちの中にいる紅一点、意識しなくても目立ってしまう存在だと思うんです。変に女性っぽく演じないよう気を付けています。

 福澤監督からも、「多英は男性の中にいてもしっかり“立っている”感じがするからいいよ」と褒めていただきました。

――原作小説『ノーサイド・ゲーム』はどの段階で読まれたのですか?

 発売されてすぐに読ませていただいたのですが、期待通りのすばらしい作品でした。期待どおりの逆転劇があり、期待通りの裏切りがあり、期待通りの下剋上あり。こういうのを待ってました! という感じで、すごく面白かったです。

――福澤組に初めて参加してみた感想は?

 熱いです!みなさん本当に(笑)。特に、福澤監督自身も実際にラグビーをやられていた方なので、ラグビーに対する熱量がハンパないんです。

 撮影に入る前、福澤監督とお仕事をした役者さんたちに聞いてみたら、「厳しくて、一見恐いけど、すごく愛情のある方だからしっかり監督の言っていることを受け止めて吸収したほうがいいよ」って言われて。現場に入ったら、その通りでした。 

――多英は大泉洋さん演じる君嶋とのシーンが多いと思うのですが、大泉さんとも初共演ですよね?

 もともと、大泉さんのことは役者さんとして大好きなので、今回ご一緒できてすごく光栄です。表現の引き出しがとてもたくさんある方で、撮影中、監督の要求がリハーサルごとに変わっていってもちゃんとそれに応えていく。その対応力を間近で見ていると、本当に天才だなって。いつも近くで見ていてゾワって鳥肌がたっています。

――撮影現場はどんな雰囲気ですか?

 ラガーマンたちが、まるで中学生みたいです(笑)。すっごくくだらないことで盛り上がっていたり、みなさん鍛えあげられた肉体をしているので、やたらと服を脱いで見せつけたがる(笑)。中学時代を思い出しちゃうくらい楽しい現場です。

――試合のシーンは迫力がありそうですね。

 実際に近くで見ていると、みなさん本当にかっこよくて。体と体がぶつかる音が聞こえてくるんですよ。最初にそれを聞いたときには、その生の感覚に圧倒されて。感動しましたね。

――まったくラグビーのことを知らなかった笹本さんをそこまで感動させた、ラグビーの魅力って何でしょうか。

 ラグビーって命かげのスポーツですよね。ラガーマンたちは命をかけて戦うために体を鍛える。でも決してぶつかって喧嘩をしているわけではなく、そこには「ノーサイド」(試合が終わった瞬間に敵味方の区別がなくなり、互いの健闘をたたえ合うというもの)の精神がある。

 実は紳士的なスポーツだってことを知ってから改めて近くでラグビーを見ていると、自然に涙が出てきてしまうぐらい。すごくいいスポーツだなって思います。

――物語も中盤に向かいますが、今後どんな風にドラマを見てほしいですか?

 まずは、スポーツものだから、企業ものだから、ということをあまり考えずに、見てもらいたいです。このドラマは企業ドラマという主流があって、そこにラグビーチームが出てくる。単なるスポーツドラマではないので、ラグビーを見る、というのではなく、そこに出てくるラグビーに人生をかけている人たちの生き方を見てほしい。頭をからっぽにして見たら絶対にドハマりする作品だと思います。

 日曜の夜にこのドラマを見て、明日から頑張って会社に行こう、学校に行こうって思ってもらえたら嬉しいですね。

※本連載は雑誌『TV station』との連動企画です。

写真提供:TBS

未来につながる、パスがある。

大手自動車メーカー・トキワ自動車のエリート社員だった君嶋隼人は、とある大型買収案件に異を唱えた結果、横浜工場の総務部長に左遷させられ、同社ラグビー部アストロズのゼネラルマネージャーを兼務することに。

かつて強豪として鳴らしたアストロズも、いまは成績不振に喘ぎ、鳴かず飛ばず。巨額の赤字を垂れ流していた。

アストロズを再生せよ――。

ラグビーに関して何の知識も経験もない、ズブの素人である君嶋が、お荷物社会人ラグビーチームの再建に挑む。

『ノーサイド・ゲーム』

池井戸潤

ダイヤモンド社 刊

定 価:本体1600円+税 

発売日:2019年6月13日