いよいよ15日に最終回を迎える日曜よる9時からのTBSドラマ『ノーサイド・ゲーム』。ラグビーという難しい題材に真正面から挑んだ制作陣、そして出演者たちには心から「感動をありがとう」と伝えたい。
特に一切の妥協を許さない圧巻のラグビーシーンは、ラグビーファンはもとより、これまでラグビーに関心のなかった層にも十分にその魅力が伝わるものだった。
本連載「がんばれ!アストロズ」も今回が最終回となる。そこでアストロズ勝利のカギを握るスタンドオフの七尾圭太演じる眞栄田郷敦さんにドラマにかける思いを語ってもらった。
――郷敦さん演じる七尾は、大学時代に挫折し、ラグビーを諦めたものの、大泉(洋)さん演じる君嶋や、アストロズのメンバーに触発されて再びラグビーに挑戦する役です。演じてみた感想は?
帰国子女であることや、挫折を経験しているところは七尾と僕の共通点だと思います。僕自身、中学からずっとクラシックサックスのプロをめざしていたんですが、挫折して夢を諦めた過去があるので、七尾のくやしさや葛藤、すごくよくわかりました。
奇跡的な出会いがいろいろあって僕はいま、役者の仕事をやらせていただいていますが、七尾が再び大好きだったラグビーの道に進むっていう気持ちもすごくわかります。逆に、オフィスにいるときのちょっとヌケているというか(笑)、そんな部分は自分にない部分なので、新鮮です。演技する上で新しい引き出しが増えました。
――実際の郷敦さんはどんな性格なんですか?
僕はどちらかというと慎重派。1個1個確認しながら、大丈夫、大丈夫、って自分で納得しながら積み重ねていくタイプです。
――七尾役を射止めるために、かなり体重を増やしてオーディションに挑んだとか?
1回目のオーディションのときにはめちゃくちゃまだ細くて、周りの人の大きさにびっくりしました(笑)。これは体を作らないとやばいぞと思い、そこから2回目のオーディションまでに10キロくらい体重を増やしたんです。
そこからまた徐々に増やしていっていまは、トータルでプラス18キロほどです。映画の撮影(12月公開「午前0時、キスしに来てよ」)の後半からちょっとずつ増やしていたんですけど、衣装さんに洋服のサイズが合わなくなるって怒られました(笑)。
――どうやって体重を増やしていったんですか?
とにかく食べて、筋トレ。鶏肉とかプロテインとかタンパク質を多めにしつつ、炭水化物もプラスして、1日だいたい5000キロカロリーくらい摂ってました。筋トレもほぼ毎日。いま、人生で一番大きいです(笑)。
――大変な努力をされたんですね。七尾役に決まったときはどんな気持ちでしたか?
日曜劇場に出演できることはすごくうれしかったです。でも、ラグビーの技術的な部分はまだまだ準備ができていなかったので、決まってからはものすごく練習しました。
――それまでラグビーの経験は?
やったことなかったですし、見たこともほとんどなかったんです。でも練習を重ね、アストロズのみなさんやパナソニックのみなさんに指導してもらうにつれて、ラグビー楽しいな!、と思えるようになりました。今では昔からラグビーをやりたかったなと、思う程です。
――これまでのシーンで思い出に残っているのは?
ラグビーシーンはもちろんですが、7話で、七尾がレナ(阿部純子)に、「俺、ずっと逃げていたんです。でもアストロズの選手たちを見て思ったんです。逃げ回っているよりぶつかっていくほうがずっといいって」と言うシーンがあったんですけど、あの場面が僕、すごく好きです。メジャーなシーンじゃないけど、いまでもその台詞がずっと残っています。
――七尾が初めてアストロズの一員として登場した紅白戦がすごく印象に残っています。
僕自身も放送を見て、練習しておいてよかった!って思いました。終盤にかけてもっともっといいプレーを魅せられるようになりたいです。(福澤)監督から、七尾は普段はすごく余裕がある感じなんだけど、ボールを持った瞬間に変わる。会社にいるちょっとヌケている七尾とのギャップを出したいと言われていたので、そこは意識しました。
僕はラグビー未経験者ですが、まわりは本当にすごい人たちばかりで、アドバイスもいただけるのですごく助かっています。
――大泉さんや大谷(亮平)さんたち、大先輩の演技を間近で見ていかがですか?
ナチュラルに役を演じながら、確立された個性を感じさせるところは、純粋にすごいなって思います。僕も自分の個性を大事にしながら、ふり幅の広い役を演じられるようになりたいです。
――これから演じてみたい役はありますか?
映画で演じたのも、今回の七尾もきっちりした役だったので、そうじゃない真逆なタイプの役にも今後は挑戦してみたいです。
――海外の作品も視野に入れて?
もちろんです。ただ、日本の作品から、海外の作品へ、というのではなく、海外の作品に出られたら、そこで培ったものを日本の作品に活かしていきたい。…先の話にはなると思いますが、叶えます。
※本連載は雑誌『TV station』との連動企画です。
写真提供:TBS
未来につながる、パスがある。
大手自動車メーカー・トキワ自動車のエリート社員だった君嶋隼人は、とある大型買収案件に異を唱えた結果、横浜工場の総務部長に左遷させられ、同社ラグビー部アストロズのゼネラルマネージャーを兼務することに。
かつて強豪として鳴らしたアストロズも、いまは成績不振に喘ぎ、鳴かず飛ばず。巨額の赤字を垂れ流していた。
アストロズを再生せよ――。
ラグビーに関して何の知識も経験もない、ズブの素人である君嶋が、お荷物社会人ラグビーチームの再建に挑む。
『ノーサイド・ゲーム』
池井戸潤
ダイヤモンド社 刊
定 価:本体1600円+税
発売日:2019年6月13日